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『追放者達』、魔王軍幹部と激突する・4

 



「…………くくくっ、がはははははっ!!

 よもや、よもやだ!まさか我の一撃を防御してなお生き残る者も、あまつさえ我に一撃入れんと欲するが為に命を捨てに掛かっている者も、これまでの生にて合い見えた事が無いでは無かったが、よもやこうして同時に遭遇する事となるとは思ってもいなかったぞ!

 此度の善き出会いに感謝し、存分に死合うとしようぞ!!」




 呵呵大笑して厳ついその相貌を緩めるスルトであったが、然りとてこの戦闘を終えるつもりは毛頭無いらしく、再び濃霧が寄ってくる中拳を引いて拳打の構えを取ってみせる。



 そんな彼へと、片や呆れが殆どを占めた声色にて、片や同じ様に戦闘の愉悦を滲ませた声色にてガリアンとヒギンズの二人が応える。




「…………当方にとっては、ただ単に痛くて辛くて苦しいだけでしか無いのであるが故に、今すぐにでも辞めてしまいたいのであるがな!」



「なははははははははっ!!

 良いね、良いね良いね良いね!!

 オジサン、こう言うの待ってたんだよ!

 血沸き肉踊る!そんな闘争は久方振りさ!心なしか若返った様な気もして来たよ!!」




 そんな対称的な二人へと、回復魔法による治療を終えてから、神聖魔法による防御面での強化を施していたセレンが、心配そうな感情を乗せた声色にて、若干遠巻きに呼び掛ける。




「ガリアン様、ヒギンズ様!

 取り敢えず、今回も治療は終わりました!ですが、お気をつけて!

 確かに、私ならば殆んどリスク無しに蘇生させる事は可能ですが、それでもその度に魂が磨耗して損傷を起こして行きます!最悪、蘇生に失敗してしまうか、もしくは魂が砕けて廃人となってしまう可能性も在ります!

 ですので、どうか!どうか私に『神の慈悲による蘇生(リザレクション)』を極力使わせ無い様に立ち回る事をお願い致します!」



「なはははっ!了解したよぉ!

 でも、そう言う事はガリアン君にこそ言うべきなんじゃないのかなぁ?

 何て言ったって、オジサン達『追放者達(アウトレイジ)』の中でもダントツの被弾率を誇ってるんだから、ねぇ~?」



「何を戯けた事を!?

 盾役たる当方が被弾するのは当然の事であろうよ!?

 と言うよりも、当方が被弾せずに居るのであれば、他のメンバーが被弾する事になるのであるが、それでも構わぬと言うつもりであるか!?

 それに、此度の戦闘に於いては、彼女もヒギンズ殿の方が心配であろうさ!何せ、わざわざ自分から攻撃を貰いに行っている様なモノであるが故にな!」



「にゃにおぅ!?

 オジサン、これでも結構頑張ってるつもりなんですけどぉ!?

 今は殆んど塞がっちゃってるみたいだけど、これでも結構傷着けたんだけどねぇ!?

 そう言うガリアン君の方はどうなってるのかなぁ!?」



「何を戯けた事を!?

 かく言うヒギンズ殿のアレコレは、全て当方在ってのモノであろうに!?

 一体、誰が攻撃を受け止めて、ヒギンズ殿が攻め入る隙を作っていると思っているのであるか!?

 むしろ、当方が身を挺して作り出した隙を突いていてなお、こうまで余裕綽々で居られると言う事は、やはりヒギンズ殿が手を抜いていると言う事なのではないか!?」



「にゃにおぅ!?」



「やるのであるか!?」




 そうして呼び掛けたセレンの声を呼び水として、言い合いにも見える何かを繰り広げるガリアンとヒギンズの二人。



 言葉だけを捉えれば、普通に険悪な仲に在る為に言い争いをしている、と言う風に見える二人のやり取りだが、その口許には微笑みが浮かべられており、実際の声色としても険悪な雰囲気は感じ取る事が出来ずにいた。



 ……恐らくは、互いに生命の危機に連続して直面する羽目になっている為に、多少下らなくとも冗談の様なモノを飛ばして互いに緊張を解して磨耗を防ごうとしている、のだろう。


 似た様な事を、パーティーを分ける直前にリーダーであるアレスも行っていた為に、ソレを真似ての行動だったのだろう。



 効果の程は解り辛いが、それでも二人の纏う雰囲気は、そこまで悪いモノでは無い様に見える為に、恐らくは一定の効果は在ったのだろうと思われる。



 そんな二人のやり取りを目の当たりにしていたからか、またしても呵呵大笑して見せてから拳を構えたままの状態にて、愉しそうな声色にてスルトが告げる。




「がはははははっ!やはり、やはり貴様らは違うな!

 つい先程の我の一撃で消し飛んでしまった雑魚とも、ここへ来るよりも先に我らへと襲い掛かって来た有象無象共とも違う、本当の闘争と言うモノが出来ている!

 あぁ、良い!実に善いぞ!!こんなに愉しいのは久方ぶりだ!!」




 その大気を震わせる大哄笑に耐える為に、思わず身体を強張らせる二人であったが、何かに気が付いたらしいヒギンズが先のアレスの問い掛けにも匹敵するだけの大音量にてスルトへと問う。




「…………一つ聞きたいんだけど、よいかなぁ!?

 さっきから、ちょっと気になってる事が在ったんだよねぇ!!」



「…………ほぅ?我に対して問い質すか?

 良かろう!我は今気分が良い!ならば、問われた事には応えてやろう!但し、我に応えられるモノ、我が応えて良いモノに限らせて貰うがな!!」



「そうかい!そう言う、懐がでかくて豪快な返答、オジサン大好きだよ!!

 …………で、一つ聞きたいんだけど、君らが途中で遭遇した有象無象って、多分ウチのギルドが『噂の調査』に駆り出していた高位冒険者達だと思うんだけど、そいつら一体どうしたんだい?」



「………………なに?途中で蹴散らして有象無象共について、だと……?

 そんなモノ、文字通りに『蹴散らした』に決まっておろう?

 まぁ、我らとの闘争が主な目的では無かったらしく、即座に逃走を選んだモノも多かったが故に、半数近くには逃げられてしまった様子だがな。

 我が蹴散らしたのは、残る半数の更に半分程度、と言った所よ。残りはゴライアスが手勢を使って追い立てていたが故に、どうなったのかは知らぬがな!」



「………………あちゃ~、マジかぁ…………」




 自ら問い質しておきながら、まるで『嫌な事聞いた』と言わんばかりの様子にて顔をしかめるヒギンズ。



 そんなヒギンズへと、隣で会話を聞いていたガリアンが、何故そんな顔をするのか、とスルトから視線を逸らす事なく問い掛ける。




「…………いや、自分で聞いておいてその顔は如何なモノなのだ、ヒギンズ殿?

 と言うよりも、当方には何故その様な事を問い質したのか、一体何の意図が在っての質問であったのかさっぱり分からぬのだが?」



「…………あ~、ほら、アレだよぉ……。

 こっちに来る前に、リーダーが説明してくれていたでしょう?オジサン達に今回の一件が回ってきた理由と、オジサン達だけで倒しきる必要は無い、って話覚えてないかい?」



「…………む?そう言えば、何やら最近流れている『不穏な噂の調査』として、高位冒険者達が軒並み回されている、と聞いた様な…………まさか!?」



「……そう言う事さぁ。

 オジサン達が援軍の当てにしていた連中、彼の言葉を聞く限りだと軒並み敗走しているみたいだから、やっぱり援軍は期待出来ないみたいなんだよねぇ~。

 非常に、非常に残念な事ながら、ねぇ~……」




 そう、戦闘の愉悦を浮かべたままの状態で、器用に苦々しい笑みを浮かべて見せたヒギンズに対し、言葉を失うガリアン。


 恐らく、出立した際のやり取りを鑑みるに、国は戦力を出さないだろうし、冒険者の方も最低でも自分達並みの戦闘力が要求される事になるので、ほぼ期待は出来ないと言う事になる。



 そんな、絶望以外の何物でもない情報を突き付けられたガリアンであったが、だからと言って状況が改善する訳でも無いのだから、と半ば悟りを開いた様であり、かつ諦めに近い心境に至りながらも、それでも死ぬのだけは御免被る!と言わんばかりに得物を構え直すのであった。




次回、アレス達に視点が戻ります



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