『追放者達』、邂逅する
「…………で、言われるがままに取り敢えず出て来た訳だけど、アレって何がどうなってるか誰か分かるか?」
「…………さぁ?当方が見た限りでは、何かしらを叩き潰した直後、と言った所であろうか?」
「状況を鑑みるに…………やはり、あの方達が何かしたのでしょうか?」
「……アタシ的には、やっぱりあそこで叩き潰されて汚ならしいシミになってる、に一票かな?
まぁ、アンタ的には、外れていて欲しいかも知れないけど、ね?」
「………………まぁ、否定はしないよ?否定は、ねぇ。
でも、闘争を生業としている以上は常に付きまとっていた可能性の一つだし、何より彼らも納得の上でここに居たハズだからねぇ。仕方無い、と言えば仕方無いさぁ」
「端から見ていると、あんまり『仕方無い』とは思っていない様にも見えるのですよ?
とは言え、これから嫌でも戦う事になるみたいなのですから、恨み言や敵討ちを考えるのは、その時にしておくのです」
嫌々ながらも、押し付けられた依頼を片付ける為に通用門へと到着し、ソレを潜ってアルカンターラの外へと歩み出て来たアレス達『追放者達』のメンバー達は、その直後に何かが爆発でもしたか!?と錯覚する程の何かを砕く様な轟音と振動を感じ取った為にそちらへと向かって移動を開始した。
そしてその結果、彼らの会話からも察せられるとは思うが、巨大な人影が地面へとその拳を突き込んでいる姿と、その足元周辺に展開する数百にも及ぼうかと言う統一規格の装備を纏った無数の人影並びに、あからさまに人とは思えない姿をした一つの影であった為に、先の会話へと相成った、と言う訳だ。
どう見ても今回の騒動の原因にしか見えないが、だからと言って先制攻撃するのは蛮族の所業に過ぎるし、何より万が一の可能性で『違う』かも知れない。
もしかしたら、彼らはただ単にこのアルカンターラに観光にきただけなのだ、と言う可能性も一欠片程度には残されているのだ。
………………まぁ、そもそもジャイアント種は人類に敵対的だとして魔物指定されているし、もう片方の集団は抜き身の刃を血で濡らしているモノや、中央に居る一体だけ外見の違うソレはあからさまに魔物であるか、もしくはその上位種だと言う話である『魔族』だろうと思われる為に、基本的にそちらの可能性は有り得ないのだけれど。
とは言え、そんな事情は彼らは直接知り得る手段は無い(察する事は出来るし実際に半ば察してもいるが)為に、取り敢えずここに出向いている事と、周囲に広がる不自然な霧について問い質す為に彼らへと向けてアレスが言葉を投げ掛ける。
「…………貴君らに問う!こちらは、このカンタレラ王国の王都であるアルカンターラ所属の冒険者パーティー『追放者達』だ!
貴君らが、この地に訪れた理由を問いたい!
ここは先に述べた通りにカンタレラ王国の最重要地点である!その地を訪れ、無用の混乱を招いた理由を述べられたい!!
返答によっては、こちらも対応を変えねばならない!さぁ、返答は如何に!?」
近くにいた『追放者達』のメンバー達が、思わず耳を押さえる程の大音量にて、目の前の異形二体へと問い掛けるアレス。
何にしても、相手の目的を知らない事には話にならない。
ならば、先の『オルク=ボルグ』も言葉自体は通じている様子であったし、ジャイアント種も一部の上位種は人間の言葉を理解して用いる事がある、と伝え聞いていた為に、こうして問い掛けている、と言う訳だ。
食料か何かを求めて、と言うのであれば、最低限渡せる程度を渡して帰らせるのも良いだろう。
何か、欲するモノが在る、と言う事ならば、余程のモノで無い限りは渡してしまうのも良いだろう。
誰かを探している、と言うのなら、最悪その探し人を引き渡す事を条件として引き下がらせる様に交渉するのも一つの手だ。
そんな、出来る事ならこのまま帰ってくれないかなぁ?と言う、何ともやる気の無さそうな考えの元に放たれた問いにより、彼らの頭上から神鳴りの如く周囲へと響き渡る轟音が降り注いで来る。
アレスの大声により耳を押さえていたメンバー達は元より、問い掛けていたアレスを含めた全員がその場で耳を塞いで耐えて行く中、その轟音に一定のリズムと高低が在る事が感じられると同時に、強制的にソレが『笑い声』であった事を理解させられる事となる。
「……グハハハハハハハッ!!この期に及んで、我らに『何の用だ?』とは笑わせてくれる!
しかも、その問いを発した本人こそが、我らの狙いであった等と言うこの事態、笑わずにいられようか!?」
「………………まぁ、それも、仕方在るまい。
アレは、当機らに監視されていた事も、以前から危険視されていた事も、何も知らないのだから、当然の反応、だろう……?」
「…………うむ!言われてみれば、その通りよな!
さて、名乗りを挙げ、その上で放たれた問いであるのならば、応えぬ訳には行かぬよな!
では、応えよう!我こそは!我ら魔族の王たる魔王陛下に仕えし幹部、『六魔衆』に名を列ねしモノが一つ!
かつて地上に恐怖と共に名を轟かせた『巨人兵団』を束ねし頭領、『スルト=ムスペルヘイム』なり!!」
「………………当機は、そこの僚機スルトと同じく、魔王陛下に仕えし、幹部である『六魔衆』が一つ、『ゴライアス=マリオネッター』。
陛下より預りしは、当機と同じく、命宿らぬハズの冷たく硬い身体を持つ、不死身の『人形師団』なり……」
「我らの狙いは、ただ一つ!『観察対象』として危険視されている貴様を、この場で始末する為だ!よって、望みは貴様の首一つキリである!!」
「………………大方、当機らの望みを叶え、その後帰還を推奨する、つもりであったのだろうが、それらは全て、残念ながら無駄になってしまっている、ぞ……?何せ、当機らの狙いは、『特異点』として、危険視されている、個体名『アレス』並びに、その仲間である『追放者達』の抹殺なのだから、な……」
そうやって、アレスからの問い掛けに、律儀に応じて見せる二体、もとい『スルト=ムスペルヘイム』と『ゴライアス=マリオネッター』の二体。
その二体から告げられた衝撃の事実として、なんとこのアルカンターラを訪れた目的が自分達の抹殺である、と宣告されてしまう。
突然の抹殺宣言に驚愕するアレス達であったが、同時にその場で首を傾げて不思議がる。
……何せ、彼らにはそうやって抹殺対象に指定される理由に心当たりがあまり無かったからだ。
先の『オルク=ボルグ』との一件で邪魔してくれた為に、抹殺対象指定を受けた、と言う事ならばまぁ理解は出来る。理解だけなら。
……しかし、彼らの口振りによれば、アレス達が彼らから『観察対象』として指定され、行動を監視されていたらしい、と言う事も窺える。
そちらに関して言えば、本気で見当が付かない上に、一体何時から?どの程度の強度で?もしかして、パーティーハウスの中まで覗かれていたりしないよな!?と言う疑問が駆け巡り、結果的に揃って首を傾げる事と相成った、と言う訳だ。
とは言え、流石にそこら辺まではスルトとゴライアスの二体も教えてくれるつもりは無いらしく、スルトはスルトで上空にてその巨大な両の拳をぶつけ合って轟音を発生させ、ゴライアスはゴライアスで自らの周囲へと規則正しく彼の配下と思わしき騎士鎧姿の軍団を集結させ、彼らへと目掛けて行進を開始させて行く。
そんな彼らの様子を目の当たりにしたアレス達は、取り敢えず考えるのは後回しにする事にして、目の前の敵をどうにかする為に得物を抜いて戦闘体勢を整えると、彼我の距離を詰めるべく前へと飛び出して行くのであった……。
面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価等にて応援して頂けると励みになりますのでよろしくお願い致しますm(_ _)m




