『追放者達』、巨大『粘性体』との決戦に挑む
気付いたらPVが100万を超えていました!
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「走れ!取り敢えず脱出は出来たが、まだソレだけだ!
この辺りじゃあ木々が邪魔に過ぎる!もっと拓けた場所まで引くぞ!このスタンドプレーに走ったバカチンを折檻するのは、ソコに辿り着いてからだ!」
「あいたっ!?ちょっと、オジサンが頑張ったからこうして皆生きてられるんだから、もう少し優しく労ってくれても良いんじゃないのかなぁ!?」
「うるせぇ!一切説明しなかった上に、自分の女泣かせやがる不良中年にこれ以上掛ける情けなんぞ在りはせんわ!」
「そうなのです!確かに助かりはしたのですが、今回の事についてボク達は全面的にリーダーとタチアナちゃんに着くと決めているのです!
あれだけ情熱的に誘った相手を、もう泣かすとか有り得ないのですよ!?」
「……済まんな。当方としては、ヒギンズ殿の遣り口に理解を示せない訳ではないのであるが、此度ばかりは庇ってはやれないのである。
それと、話は変わるのであるが、このまま拓けた場所へと向かうとなると、あのシュピーゲルの街に近付く事になるのであるが、そこら辺はちゃんと考えているのであるか?下手をすると、余波が及ぶ可能性が在るのであるぞ?」
「……あぁ、それなら心配は要らん!
一応だが、もう手は打ってある!」
アレスが飛ばした指示により、木々が乱立し魔物が押し寄せる未開領域にて更に橇を加速させるナタリア。
その激しく揺れる車上にて、自らの扱いを抗議するヒギンズに対して無慈悲な宣告を下した面々と、ソレを取り成す様で取り成していない発言をしたガリアンが、このまま行っても良いのか?と言った趣旨の言葉を口にする。
幾ら戦うためには仕方の無い事だとは言え、ある程度の条件は付くが数を増やせる強大な魔物を都市に近付けるのは如何なモノか、と言う意味合いにて発せられた言葉であったが、その寸前まで通信用の魔道具にて何処ぞに連絡を取っていたらしいガシャンダラ王が、その不安を吹き飛ばす様に自信ありげな様子にてこの後の行動を肯定する言葉を口にする。
一瞬訝しむ様な表情を浮かべて彼へと視線を送るガリアンであったが、この地の支配者がそう言うのならば間違いは無いのだろう、と納得が行ってはいないながらも半ば無理矢理飲み下して了承しすると、持ち前の優れたバランス感覚によって揺れる橇の上を難無く移動し、手摺やその他設備に必死にしがみついている面々を見て回り、必要の在るメンバーに対してはポーションの類いの使用を奨めていた。
魔力が切れかけていたアレスやカレンはマナポーションを、何だかんだいって人間離れした挙動を披露した代償として、全身に多大なダメージを負う羽目になったヒギンズはポーションを口にし、それぞれで比較的手が空いている時間の内に回復に勤めて行く。
そのついでに、巨大『粘性体』に対しても足留めも兼ねた攻撃でもしておこうか、との意見も出たが、今は兎に角速度重視で走っていた事も在って距離を保っていられているし、何より自身の進路上に在るモノは何でも取り込んで先程与えておいた損傷を回復している様子でもあった為に、恐らくは今仕掛けても無駄に終わるだろう、との事から見送る決定が下された。
そうして、兎に角素早く未開領域を脱出する事のみを主眼に置き、途中で飛び出して来た魔物は橇で轢き潰して戦闘を回避しつつ、木々の間を縫うようにして進む事暫し。
漸く、このガンダルヴァに於いては『未開領域』と規定されている森林から抜け出し、ソコに隣接する荒野へと到着する事に成功する『追放者達』一行。
取り敢えずの目的地まで無事に到着出来た事を喜びつつ、減速して停車するまでの勢いを利用して、これから出てくるであろう巨大『粘性体』から必要な距離を取っておき、先に陣形や体勢を整えて待ち構える。
「良いか!?取り敢えず、森から出てきたら今回も在りったけの魔法をぶつけて削れるだけ削りつつ、物理も通る様にするぞ!
その後は後衛を守りながらひたすら殴れ!捕まって喰われる様な真似はするなよ!少なくとも、俺は助けてやらないからな!」
「そこは、必ず助ける、と言うべき場面であろうよ?」
「やなこった。捕まったらほぼ確実に喰われるのだし、そんな後追い自殺しなきゃならない理由も無いだろう?
なら、元より捕まって喰われない様にすれば、それで綺麗に解決だ。それに、俺達が負けたらそれでこの国もお終い……とはならんかも知れんが、それでも大ダメージを負うのは間違いない盤面でそんな事が出来る阿呆は、死んでいてくれた方がまだやり易い。違うか?」
「がはははははっ!確かに確かに、そいつは『然り』だ!
有能な敵よりも、余程無能な味方の方が厄介と言う事は我も重々承知しておる!
特に、この様な重要な盤面に於いては、何をやらかすか分からぬ味方程、鬱陶しいモノは無いからな!」
「そう言う事。
……それより、お出でになったみたいだぞ!各員、しっかり狙え!外すんじゃないぞ!?
放て!!」
メキメキッ、バキバキッと鈍い音を立てながら森の奥からその姿を顕にする巨大『粘性体』。
途中で遭遇した魔物を餌食として喰らったからか、その身体は例の建築物にて全体を視認した時よりも大きくなっている様にも見て取れた。
……が、だからと言って尻尾を巻いて逃げ出す事は出来ないし、そんな事をする位ならば冒険者なんてとうの昔に辞めている!と言う面々ばかりであった為に、特に気にする事もせず、相手が巨体であるのを良いことに、当たるを幸いとして手当たり次第に魔法と闘気による攻撃を乱射して行くアレス達。
本日二度目ではあるが、色とりどりの魔法が雨霰と降り注ぐその場面は、普通の感性を持ち合わせていれば『綺麗』と表現しても差し支えは無いであろうその光景を目にしながらも、放っている側からすれば相手を殺す為の手段に過ぎない上に、外見不相応の威力が込められたそれらに見惚れるハズも無く、至極淡々とした瞳にてそれらの効果を確認するべく視線を送る。
とは言え、大きくともやはり『粘性体』、と呼ぶべきなのか、彼等が放った魔法の内、威力の高いモノや発動時間が長いモノ等の魔法が着弾するとその身を大きく震わせ、何処から発しているのかはイマイチ不明だったが苦鳴と思わしき空気の振動を周囲へと発して行く。
そして、既に分かっていた事ではあるが、高威力の魔法が着弾した場所の損傷はその殆んどが行われておらず、中々にグロテスクな傷口を顕にして行く。
更に言えば、既に魔力を浴びた状態の箇所を攻撃した場合、やはり魔力を帯びさせないでいた場所とは異なり普通に物理的な攻撃も通る様になる為に、アレスやカレンの様に直接的な破壊に特化した魔法を使えない二人は、取り敢えず全体的に満遍なく魔法が当たる様にして行く。
そうして雨霰と魔法を発動させる事暫し。
建築物の内部では咄嗟の事で使用できていなかったが、今回は余裕が在った為にタチアナも参戦出来ていたので、妨害術で魔法に対する耐性を大きく下げたり、支援術によって魔法の攻撃力を著しく上昇させたりした結果、文字の通りに下手な小山よりも余程大きく、いつぞや戦ったドラゴンよりも大きく見えたその赤い巨大も、今ではその体積を大体半分程にまで減少させ、ソレなりに透明度の在った身体を着弾の煤や高温・低温等の外的要因にて濁らせ、大分見た目がアレな事となっていた。
しかし、そうであっても未だに活動には支障が無いらしく、アレス達が魔力切れとなった隙を突き、マナポーションを飲んで回復するよりも先に彼らへと目掛けてその巨体を突き動かして、一心不乱に猛進してくる。
その様子を目の当たりにした彼らは、向こうもこんな強引な手に出て来たと言う事は、やはりこちらの攻撃はキチンと効いているからちゃんと消耗しているのだ、と判断し、各自で急いでポーションを飲み下すと、逆にこちらから距離を詰めて攻撃するべく、陣形を組んで駆け出して行くのであった。
取り敢えずあと数話程度でこの章も終わりの予定です
…………何話か前にもそう言っていた……?
さて、知らんなぁ……(メソラシ)
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