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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』岩人族の国を救う

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『追放者達』、巨大『粘性体』と戦闘を開始する

 



 パキィンッ!!!




 澄んだ高音を奏でながらガラスケースが砕け散り、それまで内部に留めてられていた巨大『粘性体(スライム)』が解放され、文字の通りに『津波』となってアレス達へと襲い掛かる!



 その流動体にして高い粘度を誇る赤い身体を解放への歓喜で震わせながら、目の前に在る獲物を喰らい尽くさんとしてその大質量の肉体にて覆い被さって来る巨大『粘性体(スライム)』。



 右を見ても左を見ても毒々しい赤色の波頭に取り囲まれ、その上で日が翳ったのかと思わんばかりの落差にて影を落とされて上空も塞がれてしまった彼らの内、何名かは絶望的な状況に膝を突きそうになるが、ソレを叱咤する様にしてアレスが檄を発する。




「……諦めるな!ここで諦めたら、俺達も、この国も全部終わるぞ!取り敢えず、この場を凌いでここから脱出するぞ!ここじゃあ戦うにしても狭すぎる!!

 セレン、カレン、合わせろ!!

『紅蓮よ!世の興りから続く永劫なる焔よ!我が呼び声に応えてその力の一片をこの場に顕現させよ!『紅蓮の滅光クリムゾンプロミネンス』』!」



「は、はい!

『天に座します父なる神よ!御身へと祈る真摯なる子羊へとその貴き御業を貸し与え、遍く世に御身の威光を知らしめる機会を与えたまえ!『神の御業による極光(ジャッシメント)』』!」



「……任せる!

『混沌よ!我に宿りし遍くマナよ!我が言の葉に従い混ざり合い、かつて全てを破壊したと謳われる姿へと立ち戻れ!『混沌の滅光(ケイオスフォール)』』!」




 アレスが下した号令により、三人が放てる中で最も範囲と威力に優れる魔法が放たれる。



 先ず、アレスの手から紅蓮の閃光と表現するのが妥当であり、ソレが触れた端から『焼ける』でもなく『焦げる』でもなく『蒸発する』と言った状態へと強制的に変化させられる程の威力を秘めた、直径にして数メルトも在る極太の極光が放たれ、迫りつつあった『粘性体(スライム)』の一角を押し留める。



 次に、セレンによって放たれた魔法は、アレスの様に収束されたモノでは無く、逆に上空から広範囲に渡って光の柱を降り注がせるモノであったが、基本的にはアンデッド等の一部の魔物にしかダメージを与えないハズのその攻撃が、あまりの高出力によって込められた魔力によって直撃した部分から『粘性体(スライム)』の身体を少しずつ削り取って行く。



 最後に、形態としてはアレスのソレと酷似してはいるものの、根本としてカレンが『賢者』として所持している全属性を無理矢理合成して作り出されたその禍々しく正に『混沌』としか表現のしようの無い色をした極光がカレンの手から放たれ、アレスのソレともセレンのソレとも異なり、当たった場所から膨大な質量を誇る『粘性体(スライム)』の身体を消滅させてソレ以上進んで来るのを防いで行く。



 そうして、三人がそれぞれ放った大魔法によりどうにか押し留められ、僅かながらではあったものの時間を稼ぐ事に成功する。


 その隙に、アイテムボックスに仕舞い込んでいた橇を取り出し、従魔達を装着してナタリアが直ぐにでも走り出す事が出来る状態へと準備を整える。



 そして、魔法を発動させながらも、ジリジリと後退りする事によって徐々に橇へと近付いて行き、発動時間が終わると同時に魔力を一気に使いすぎた事で足元をよろけさせながらも飛び込む様にして橇へと乗り込み、それと同時に弾ける様にして加速して行く。



 途中に在った扉は、アレスがやりたかった事を察したヒギンズとガリアンが壊しておいてくれたらしく、直ぐ様例の部屋を飛び出して長く延びている通路を可能な限りの速度で爆走する。



 しかし、当然の様に巨大『粘性体(スライム)』の方も、自らを削り取り押し留めていた攻撃が止めばその大本への報復を考えないハズが無く、解放されてからの初めての餌として見定めた彼等を逃がすまいとして、凄まじいまでの勢いにて開け放たれた扉から鉄砲水の如き速度で先行する『追放者達(アウトレイジ)』とその他のメンバー達を追い掛けて行く。




「急げ急げ急げ!

 さっさと外に出ないと不味い!このままだと、追い詰められて喰われるぞ!?」



「そんな事、分かってるのです!

 この子達も頑張ってるのですから、あんまり余計なプレッシャーを掛けるんじゃ無いのですよ!?

 それに、幾ら急いだ処でここに入ってきた時の入り口はどうするのですか!?あそこ、王様が閉めちゃった事もそうなのですけど、開いていたとしても多分ギリギリ橇通らないと思うのですけど!?」



「そこは、オジサン達がどうにでもするから、ナタリアちゃんは前見て兎に角走らせて!もう結構近付いて来てるから!」



「アタシも支援したげるから、もっと早く、兎に角早く!!」



「なのです!!」




 タチアナによって走力を強化する支援術を掛けられた従魔達が更に加速し爆走する中、背後へと迫りつつ在る巨大『粘性体(スライム)』へと遠距離攻撃の手段を持つ面子は、少しでも逃げる時間を稼ぐ為に押し留めようと攻撃を敢行する。



 様々な属性の魔法が降り注ぎ、闘気や投擲物が雨の様に巨大『粘性体(スライム)』へと目掛けて降り注いで行く。



 どうやら、その特性も大雑把な括りで言えばこれまで相手にしてきた普通の『粘性体(スライム)』と同じであるらしく、まだ何も当たって居なかった部分への物理的な投擲はその弾力で弾かれて取り込まれ、消化吸収されてしまっている様子だが、先にアレスやカレン等が放った魔法や、ヒギンズやアリサが放った闘気による攻撃が命中した場所には普通に突き刺さったり切り裂いたりした上に、即座に取り込まれて消化されてしまう様な事にもなってはいない様子であった。


 ……しかし、彼らの表情は一向に晴れやかなモノとはなってはくれなかった。



 何故なら、そうして魔法や闘気を浴びせかけ、投擲等によって破壊する事に成功した部分は、その次の瞬間には内側から盛り上がってきた肉(?)によって跡形も無く修復されてしまい、後には徒労感のみが残されてしまう。


 更に言えば、偶然爆発や闘気の投射等によって切り飛ばして橇へと跳ね返ってくる形になった肉片が、切り離された時はただの肉片でしか無かったのだが、それから少し経つと外に居た普通の『粘性体(スライム)』と同じ状態へと変化して彼らへと襲い掛かって来た事もあり、半端に攻撃するのは逆に危険性が高い、と言う事を嫌でも認識させられる事となってしまったのだ。



 とは言え、そうだったとしても、逆に言えば傷口を焼き固める、または凍てつかせる様な類いの攻撃であれば確実にダメージを与えられる事も分かって来たし、何度か試して見た結果として切り離した部分も消滅させるか、もしくは一定以下の大きさ(具体的には普通の『粘性体(スライム)』の大きさ以下)まで破壊してしまえば増える事もない、と言う事も判明しているし、純粋に攻撃の手を止めると追い付かれる、と言う事情も在った為に、休むこと無く攻撃を続けて行く一行。



 暫くの間そうしていると、長く永く延びていた通路も漸く終わりが見え始めてくる。


 漸く外へと逃れる事が出来る!と喜ぶべきか、それともこのままの速度で扉にぶつかれば確実橇は大破するし、減速すれば追い付かれて喰われるからこれは詰みでは?と絶望するべきか、と言った複雑な心境へと誘われる事となってしまった彼らだが、それまで後部で攻撃を担っていたヒギンズが前部へと移動し、操縦者たるナタリアに対して決して止まらない様に指示を出して行く。



 若干不安げに瞳を揺らしながら『どうするのか?』と問い掛けて来るナタリアに対し、ヒギンズならば大丈夫だからそのまま行け!との思いを込めて攻撃の手を止めずに頷き返して見せるアレス。



 そんな二人のやり取りを微笑ましそうに眺めていたヒギンズは、まだ入り口まで少し距離が残されている、と言う段階で唐突に御者台から前方へと目掛けて弾ける様に飛び出して行く。




「「…………え、えぇ(なのです)!?」」




 突然の事態に驚愕の声を挙げたのは、同じく御者台にいて飛び降りた瞬間を隣で見ていたナタリアと、恋人の動向が気になって視線を送っていたタチアナの二人。



 幾ら頑強なヒギンズであってもこの速度で飛び降りては無事では済まないだろうし、何より橇の前方に飛び降りたと言う事は必然的に轢いてしまう!




 そんな事を反射的に考え、思わず手綱を引いて速度を落とそうとしてしまったナタリアだったが、次の瞬間に視界へと飛び込んで来たまさかの光景に手綱を引き絞る事すら忘れて呆然と見つめる羽目になる。




 ……そう、ソコには、前方へと飛び降りたヒギンズが、橇が走っていた為に得られた速度を殺す事無く床を蹴って更に加速し、動力として必死に走る従魔達ですら目を丸くする程の速さへと到達すると、橇よりも一足先に入り口へと到着し、その勢いを殺す事無く足から腰、背中と伝わらせて最終的に腕へと運動エネルギーを伝播させ、その全てを目の前の扉目掛けて解放する!




「流石に、ここまですれば壊れてくれるだろう!?

『龍闘法・奥義の二・山河貫き』!!」




 …………ゴパァンッッッッッ!!!!





 異常なまでに高められた速度を乗せた、これまた限界まで高められた身体能力によって放たれる龍人族(ドラゴニア)の奥義を前に、多少頑強で数百年の年月を平気で耐え抜く事が出来た程度の強度しか持たない壁が耐えられるハズも無く、人一人が槍一本で起こしたとは思えない様な轟音と共に、入り口の周辺が大きく破壊されて吹き飛んで行く。



 それにより、橇を牽いたままでも通り抜けが出来るようになった!と歓声を挙げる一同であったが、そう言えばヒギンズはどうするつもりなのだろうか?と言う事にも思い当たってしまい、今度は一変して悪い意味で騒がしくなってしまう。



 とは言え、直ぐにでも止まれる様な速度では最早無いし、何より背後からは巨大『粘性体(スライム)』に追われていて止まれば喰われる、と言う状況ゆえに止まる事も出来ず、かつ本人からも『何があっても止まるな』と言われていた事も在って、御者台に座るナタリアは泣く泣く手綱を緩める事無く開かれた入り口へと橇を突撃させて行く。



 そして、他のメンバー達も飛び降りたり縄を投げたりしてどうにか助けようと試みる中、橇が入り口へと差し掛かった正にその瞬間、それまで脇に寄って橇を通す為の空間を維持していたヒギンズがヒョイッ!と何気無く跳び上がり、高速で走り続ける橇の上へと擦れ違い様に跳躍すると、そのまま屋根へと跳び乗ってしがみついて来たのだ!



 そして、ソレを唖然としながら一行が見詰める中、橇が建物から完全に脱出してから何事も無かったかの様に乗り込んできたヒギンズに対し、背後から追われている事も忘れて全員が口を揃え、背後から響く破壊音にも負けない声量にて周囲へと響かせて行くのであった……。






「「「「「「「「…………そうするつもりだったのなら、最初からそう言って行けよ!?!?」」」」」」」」






知ってたかい?

オッサンは、殺しても死なないんだぜ?



面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価等にて応援して頂けると励みになりますので宜しくお願い致しますm(_ _)m

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