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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』岩人族の国を救う

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『追放者達』、調査を開始する

 


 夕暮れ時と夜の帳が降りる間際の時間帯にシュピーゲルへと到着したアレス達『追放者達(アウトレイジ)』と、その同行者たるガシャンダラ王と『連理の翼』の二人組。



 流石に時間帯が時間帯である上に、頻繁に魔物の襲撃が在る事もあって既に門は閉ざされており、今日中に入る事は無理か、とも思ったアレス達であったが、ほぼ最南端の都市とは言え非常時故に通達が行き届けられていたらしく、ガシャンダラ王が門番へと顔を出した途端に本人だと確認が行われた為に、大急ぎで門が開けられシュピーゲル内部へと入る事に成功する。



 それにより、魔物の襲撃を蹴散らしながらの夜営はせずに済んだ彼らは、既に日も落ちていると言う事もあり、当然夜間の調査も必要になりはするものの、それでも到着した初日である事から、取り敢えず今日はこのまま休む事に決めて適当な宿を取って一泊して夜を明かす。



 そして次の日。


 前日にほぼ休み無しで強行軍を行ったアレス達ではあったが、一日もちゃんとしたベッドで休めば疲労も残らず回復して元通りになる為に、早速調査に赴く…………前に積み込んでいた物資の類いをシュピーゲルに務める人員の指示に従って下ろす。


 その際に、半ばついでだ、と言わんばかりの態度にてガシャンダラ王がこのシュピーゲルを現在治めている領主に挨拶に行く事になり、残る『連理の翼』の扱いに関してどうするのか、と言った話し合いになってしまう。




「…………いや、流石に調査に同行されるのは勘弁願いたいんだが?

 前に集中せざるを得ない状況で、常に背中を警戒しておけなんて、お前さん何時からそんな鬼畜になった?……あ、元からか!」




 未だに信用できない為に、こちらには押し付けてくれるなよ?


 そう言うアレス達に対し、ガシャンダラ王は




「…………しかし、だからと言って我に同行させるのも無理が在るぞ?

 何せ、戦闘力を目当てにして連れてきたのだから、ソレを活用出来ない方向性の使い方をするのは些か業腹であるし、何より無駄にしかならないであろう?

 ならば、戦闘になり得る己らの方に付けるべきだと思うのだが?それと、別段我は鬼畜と言う訳でも無いぞ?ただ単に、我の教え(シゴキ)に耐えられる者がそうそういやしない、と言うだけでしか無いからな?」




 と言った風に、折角戦力として連れてきたのだからそちらの方面で使うのが妥当だ、と訴え掛ける。



 ……一つでも戦力が欲しく、かつ後の事を鑑みれば速やかに調査を終わらせるべき現状ではあるのだが、如何せんその調査隊の方がその戦力を信用出来ずにいる。


 しかし、連れてきた以上はどうにかして使うべきなのだから、やはり何処かには投入するべき……。



 完全に外野として扱われている二人が、自分達の事なのだから!と何か騒ぎ立てていた様子だが、ある種の無限ループに陥りつつあった二人の耳にはソレが届いてはいないのか、はたまた解っていて無視しているのかは定かでは無いが、互いに腕を組んだ状態にて黙り込んでしまう。



 そうこうしている内に、ガシャンダラ王がこのシュピーゲルの領主と昨晩の内に連絡して約束していた時刻が近付いて来てしまい、渋々と言った様子で二人はガシャンダラ王に引き取られて連れて行かれる。


 王曰く




『どうせ防衛戦力も足らんだろうから、精々見張り付きで高く売り付けて来てやるとするか!』




 と言っていたので、恐らくは脱走してアレス達に向かって強襲、と言う心配も無くなったのだろう、と思われる。


 …………まぁ、もっとも、その手の技能やスキルの類いは、必要となった場面では全てアレスに頼りきりであった二人が、本職であるアレスや高感度センサーの群れである従魔達の目と鼻を掻い潜り、更にヒギンズの第六感まで潜り抜けて事を成せるとは到底思えないが。



 そんな訳で、背後の安全を確保した『追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達は、意気揚々とシュピーゲルの門を潜って外へと向かい、より安全(?)な調査領域へと向かって進んで行く。



 その最中、荷物を下ろしてガランとしている橇の中で、ヒギンズがアレスへと問い掛ける。




「…………そう言えばリーダー、オジサン聞き忘れちゃってたんだけど、今回の調査ってどの辺から手を付けるんだい?

 流石に、何の目処も無しに手当たり次第、って言うのは非効率過ぎるし、何より時間が幾ら在っても足りなくなっちゃうと思うんだけどぉ?」



「あぁ、ソレについては心配無用だ。一応、目処は立てて在るからな。

 取り敢えず、コレを見てくれ」




 ヒギンズからの問い掛けに応えたアレスは、自らのアイテムボックスから一枚の紙を取り出すと、普段は折り畳まれて収納されている簡易机を展開してその上へと見易い様に広げて置く。



 すかさずソレを覗き込んだヒギンズは、顎に手を当ててその紙面の中央部分に書き込まれた情報と図形を目の当たりにしてから再度口を開く。




「…………これは、このシュピーゲル周辺の地図、だよねぇ?

 後から書き込まれているバツ印は、何かの発見例か、もしくは遭遇した箇所、って事かい?」



「正解。

 こいつは、このシュピーゲル周辺でガンダルヴァ国が『国内』として把握している地形を地図に興したモノで、後から書き込まれているモノが例の『粘性体(スライム)』と遭遇したポイントになってる。

 ちなみに、遭遇した時期で色を、数で大きさを分けてあるから比較的分かり易くなっているハズだ。一応、色と大きさの早見表も作ってあるけど、そっちも出そうか?」



「…………いや、在るんなら早く出そうよ……」



「…………済みません、アレス様。私も、ソレを見ないとちょっと……」



「仕方無いにゃあ、良いよ」




 半ばふざけながら差し出された紙片を片手に、改めて紙面を覗き込む二人。


 その視線には、確かな気付きの光と、気付きたく無かったと言わんばかりに苦々しいモノが混在している、複雑なモノとなっていたが、意を決した様な表情にてヒギンズが紙面の中央から端よりの部分、特に多くのバツ印が書き込まれている、紙面に於ける白紙の部分との境目付近の所を指差して見せる。




「……こうして見てみると、この付近が一番遭遇が早くて目撃された数も多いみたいだけどぉ、この辺て多分『未開領域』に当たる場所だよねぇ?

 もしかしなくても、リーダーが立ててる『目処』ってソコの事だったりするのかい?」



「まぁ、否定はしないよ。可能性が一番高いのは、コレを見る限りだと多分ソコだしね」



「『未開領域』、ですか……。

 確か、かつて魔王がその暴威を解放していた時代に滅び、その際に浴びせられた魔王の魔力によって様々な変質を見せた魔物や動植物によって人々の生活圏から外れた場所で、未だに人類の立ち入りを拒み続ける未踏の地、でしたか……」



「そうそう。

 一応、そっちから変な魔物が沸いて来ない様に、接している国なんかは定期的に討伐隊を送り込んだり、調査隊を送り込んだりして少しずつ開拓を進めているって話だけど、今回はその『お漏らし』が原因なんじゃないのか、と俺は睨んでいる訳さ。

 でないと、あそこまで奇怪な魔物が自然発生するハズが無い…………とは言い切れないけど、多分早々ある事じゃないだろう?

 まぁ、何と無く能力やら適性やらから鑑みるに、人の手が入っていそうな臭いもする気がするけど、ね……?」




 アレスの口から溢された不穏な言葉に、思わず視線を合わせるセレンとヒギンズであったが、どうせリーダー(アレス様)ならどうにでもするか、と半ば悟りを開いた様な心持ちにて再度視線を地図へと落とし、更なる情報の収得を図って行く。



 そうしている間に、彼らを乗せた橇は目的地である人類の版図の外側、日常の中からも目に見える位置に存在する未開の土地である『未開領域』へと足を踏み入れて行くのであった……。






 ******






「…………キヒッ!キヒヒヒヒヒヒッ!!

 漸く、だ。漸く、我らの裏切り者共を根絶やしにする為の準備が整った!あぁ、苦節数百年。封じられし貴方様の為の数々の試行錯誤が、漸く結実を迎えます!

 どうか、どうか見守って下さいませ、***様!!

 …………ん?これは、侵入者、か……?今更、この段に至って、か……?

 ……まぁ、良い。どうせ、ここには辿り着けはしないだろうし、何よりこの計画が理解出来るハズも無い。なら、計画を頓挫させんとする刺客と言う訳でも在るまい。下手に手出しするよりも、放置する方が良かろうよ……」





謎の人物顕る?

裏切り者共とは一体……?



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