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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』岩人族の国を救う

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『追放者達』、最前線へと到着する

今回少々短いです

 



「がはははははっ!!!

 速い!とにかく速い!!

 大叔父殿から聞いた話ではどの様なモノかと思っていたが、これは中々に爽快だな!素晴らしい!我も一つ欲しくなってしまうではないか!!」




 そこまで狭くは無いハズの橇へと、ガシャンダラ王の豪快すぎる笑い声が響き渡る。



 彼は、ナタリアがガリアンと共に座る御者台に繋がる空間から仁王立ちになって前方を見詰めており、その伸ばされた髪や髭(岩人族(ドワーフ)達は髪や髭は切らずに伸ばし続ける風習が在るので基本的に皆長くなる)を動力たる従魔達が爆走する事でもたらされる強風にたなびかせながら、とても愉快で愉快で堪らない!と言った様子で出発当初からはしゃぎっぱなしであった。



 そんな彼へと、良くやるよ、と言った風味の呆れを多大に混ぜた視線を送るアレスであったが、彼がこの手の物事が大好物であるのを理解した上で乗せている(半ば強制的に乗って来た、とも言えるが)ので、まぁこうなるわな、と言う思いも同時に胸中へと去来し、大変微妙そうな表情を浮かべながら橇に備えられた椅子へと腰掛けて足を組む。



 以前の橇であれば、荷物を考えなければ同じ事も出来ていたであろうが、かなりの量の荷物を積んだ上で彼以外の分の席とその空間すらも確保出来、屋根すらも着けて車輪の無い馬車の様な状態になっている事からも、大分派手な改装を施したのだと言う事が窺える。



 ガシャンダラ王の笑い声が響き渡る中、一応とは言え危険地帯を通り抜ける関係上、武装を着けたままとは言えそれぞれで思い思いに身体を休めて有事に備える『追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達。



 とは言え、一部のメンバーは自らのパートナーの元へと移動し、共に語らったり行き過ぎない程度にスキンシップを図ったりして互いに絆を深めて行く。


 それは、橇の手綱を握るナタリアであれ、この場の最年長であるヒギンズであれ変わりはなく、当然アレスもパートナーであるセレンと共に備え付けの座席へと腰を下ろしていた。



 そんな彼らへと、様々な感情を入り交じらせ、今にも飛び掛からんと手足を緊張させながら、何処か切羽詰まった様子にて視線を向けるのは、案の定『連理の翼』に所属する、彼の元幼馴染みの二人であるアリサとカレン。



 以前からアレスに対して想いを抱きながらも、ソレを素直に発露させる事もせずに粗雑な扱いをするのを良しとし、周囲の殆んどにもソレが正当なのだと錯覚させて孤立させ、挙げ句の果てに別離を望まれた彼女らにとって、あからさまに互いが互いを思い遣り、想いを通じ合わせて愛し合っている二人の姿は、正に理想像その物であった事だろう。



 ……しかし、とっくの昔に彼の中に在ったその想いと言う名の可能性()は芽を出す事無く消失し、既に別の()がソコには咲き誇っている。


 彼からも絶縁を申し付けられた二人では、ソコに割り込んで彼を奪い取る事は容易では無いだろうし、そもそもソレを彼が受け入れるとは二人にも到底思えない。



 ……だが、だからと言って、一度はその手にしかけた彼を、二人が早々に諦める事は当然出来ない。


 何せ、十年以上抱き続け、錯覚とは言え一度は通じたハズの想いなのだ。そう簡単には捨て去る事は出来ないのが人間と言うモノだろう。




 では、どうすれば良いのか?




 泥棒猫(セレン)を排除するだけならば簡単だ。


 金で暴漢でも雇って乱暴させて、彼に『浮気していた』とでも伝えてやれば良い。そうすれば、多分アッサリと別れる事になるだろう。



 しかし、その後に女性不信を拗らせられてしまっては、自分達の願いは叶わない。ならば、やるだけの意味はあまり無いだろう。



 他に思い付く手段としては、手っ取り早く殺して(排除して)しまう事だろうが、それはそれでバレずに達成するのは困難だし、万が一しくじったり、彼に犯人だとバレたりした場合は目も当てられない。


 最悪、負けるハズは無いが、彼が自分達に対して刃を向けて来る事になるかも知れない。それは、絶対に避けなければならない事だ。



 そして、バレる事無く迅速に排除する事に成功し、かつ自分達が疑われる事が無かった場合、速やかに悲しみに沈む彼の心の隙間に滑り込み、ソレを埋める事で自分達の望みは達成される事だろう。


 当然、リスクも失敗率も少なくは無いだろうが、そうだったとしても絶縁を宣言され、心身共に距離を取られてしまっている以上、最早自分達には彼を得る為の手段は他に残されてはいないのだ。



 そんな結論を出した二人は、様々な感情を込めた視線を二人へと向けて行く。



 アレスに対しては、手遅れになって漸く自覚した恋心に加え、十数年に渡って熟成された束縛心と執着心が入り交じった、冷たい様でその実根底にはドロドロとした熱量を秘めた混沌とした想いを。


 逆にセレンに対しては、想い人であるアレスの隣に収まっていること、アレスから熱の籠った視線を向けられていること、アレスから甘さを含んだ視線を一身に注がれていることへの怨念染みた嫉妬心と、どんな形であれアレスが異性に対しての興味を取り戻した事への一抹の感謝が混ぜ込まれた、徹頭徹尾憎悪によって彩られた漆黒の殺意を。




 ……そんな二人は、気付かない。


 既に、そうして敵意の類いを仲間達に、恋人に向けていると言う事を最も悟られてはならないアレスへと知られてしまっていて、既に仲間内で警戒態勢を敷かれている事を。


 そうなるであろう事をガシャンダラ王も承知した上であり、今回の作戦で二人の事は『使い捨ての利く戦力』としてカウントしていて、いざとなったら磨り潰すなり盾にするなりしてアレス達を優先し、かつ何かしらをやらかせば即座に罪に問う事で引き剥がす算段すらも立てている事を。


 一番の当事者であるセレンからは、敵意や怒りを向けられているのでは無く、かと言ってアレスの過去を知っている事やかつて好意を抱かれていた事への嫉妬心を向けられている訳でもなく、ただただ憐れみの感情を向けられ、二人の為にどうか事を起こさない様に、と祈られている事を。


 残りのメンバー達からは、既に『リーダーの元幼馴染み』と言うだけの存在を通り越して、ただ単に害を為す可能性の在る存在、としか見られておらず、噂通りの戦闘力であるならば戦場では役にも立つかも知れないが何かしらをやらかせば即座に処分する、位のつもりで接せられている事を。



 …………この二人だけは、気付いていない。




 そうして、殺意と悪意と嫉妬と憐憫に恋心が橇の内部で入り交じった道程となりはしたが、途中でわざわざ休息の為に止まる事もせずに走り続けた結果、早朝にミョルニルを発ったとは言え、その日の夕暮れが夜の帳へと落ちきる前には、どうにか今回の事例に於ける最前線だと予想されるシュピーゲルの都市へと到着する事に成功するのであった。




取り敢えずキリが良いので今回はここまで

次回からはもう少し派手に物事が動き始める…………ハズ!多分!



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『連理の翼』の2人は以前アレスが偵察能力でAランクPTを支えていたことを忘れているだろう。無知とは罪だと思う。本人が恥をかくだけならまだいいが、周りに大きな迷惑をかけたりするのは救いよ…
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