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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』岩人族の国を救う

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『追放者達』、最前線へと向かう

 


 ガシャンダラ王へと原因が在る……かも知れない場所の最寄りと思われる城塞都市をアレスが提示した次の日、彼らの姿はまたしてもミョルニルの入り口に在った。



 各都市を回り、物資を補給し、戦線へと介入すると言う人外染みた荒業を行使して見せる彼らは、一日もまともな寝床と食事とその他(詳細?教えられないよ!)で休息を取れば、次の日には元気は溌剌、魔物は虐殺と言った様子を見せる程には回復力も異常と言える域に在るのだから、やはり人間辞めつつ在るとみるべきなのかも知れない。


 …………まぁ、そうでなくてはやっていられない、という可能性も無きにしも在らず、と言った処なのだろうが。



 そんな彼らも、既に依頼として王命を下され、最前線になる…………とまだ確定した訳ではないにしても、そうなる可能性が現時点では最も高いシュピーゲルへと向かって出発する為の準備を整えていた。


 既に一度赴き、膠着して押し込まれそうにもなっていた戦線を打開してはいるものの、どうせまだ戦闘が続く以上物資は在れば在るだけ助かるのだから、と追加で運搬の依頼をされたからだ。



 次々に運ばれて来る物資の山を、生鮮食品や壊れやすいモノは優先的にセレンがアイテムボックスへと収納し、その他の大多数で量にすればセレンが収用したモノの数倍近い量をナタリアが同じくアイテムボックスへと仕舞い込み、他に残された分はアレスやタチアナが戦闘に支障が出ない程度に同じく収納し、最後にそれでも残された頑丈なモノは橇へと直接詰め込んで行く。



 一番最初こそ、従魔達の体力を考えたり、純粋にスペースが足りなくて何人か交代で降りて並走する必要の在ったナタリアの橇だが、従魔達が存在進化してスペックが上昇した事に合わせて規模を拡張しており、ソレなりの量を詰め込んではいるもののメンバー全員が乗り込んでもまだ幾分か余裕が残されており、あと何人かならば乗せる事も可能である様にも見えた。



 とは言え、事前に誰を運ぶと言う話もされてはいないし、そもそも誰かを送るとしても今回の調査である程度の結果を出してからになる。当然、軍を出して戦力を集中させる、と言った事もまだ出来ない。


 何せ、シュピーゲルに集中させたは良いものの、アレスの読みが大外れでミョルニル壊滅、なんて事も、未だ可能性としては否定出来ない程度に残されているのだから。



 何て事情もコミコミとして、ある種の罠避けのカナリアとしてシュピーゲルへと向かおうとしている彼らの元へと、複数の影が近付いて来る。



 その内の一つは、彼らに取ってはここに来るまでの旅路で見慣れたモノであり、もう一つは畏敬と共に幾度か目にしたモノであったが、他の二つは彼らの内の大半が初めて目にする相手であり、アレスとセレンにとっては()()()()()()()()()()()()()()()()()()であった。




「…………なぁ、オッサンとガシャンダラは俺達の見送りに来てくれた、って事で理解出来るけど、二人の後ろにいる『お二人』は、何でこんな処に居るんだ?

 こうして一緒に来ている、って事は、二人が連れてきたのだろう?何の用なんだ?」



「…………実は、その事なんじゃが……今回、見送りに来たのは儂だけでな、他は『見送り』と言う訳ではないのじゃよ。

 まぁ、詳しい話はこの青二才に聞いてくれい」




 若干顔を強張らせながら問い掛けるアレスに対し、こちらも気まずそうにしながら視線を逸らしてガシャンダラ王へとパスを投げるドヴェルグ。



 それにより、自身へと集中した視線を特に気にする様な素振りも見せず、何て事は無い、と言わんばかりの様子にてガシャンダラ王が口を開く。




「うむ。取り敢えず、我は見送りでは無く『同行者』だ。

 つまりは、戦力だな」



「………………おい、何真っ昼間から酔っ払ってやがるよ?

 仮にも一国の主が、原因だと確定しているならまだしも、まだ何も分かって無いに等しい場所にわざわざ赴くヤツが在るか!?

 と言うか、どうせ普通に止められたからこっそり行こうとしているだけだろうがよ!?」



「まぁ、否定はせんが取り敢えず聞け。

 確かに、国として軍を、戦力を動かせる様になるのは、己が原因を特定出来てからになる。それは、良いな?」



「……まぁ、流石にな?」



「だが、己らだけを送り込んで調査をさせようにも、事態は逼迫し過ぎている。確実に防衛用の戦力は欲しくなるし、こう言う事態では戦力なんて幾ら在っても足りなくなるのは馬鹿でも解る。これも良いな?」



「…………まぁ、否定はしないが……それなら、俺達が兼任でこなせば済む話で……」



「なら聞くが、本当に兼任して両方達成出来ると思っているのか?

 この、原因の究明に失敗しても、究明の為の拠点にもなるシュピーゲルの防衛に失敗しても、どちらかでも落とせばそれだけで全てが終わる段階へと来ている事くらいは、己も理解しているだろう?

 なら、要らぬ意地を張らずに人手を受け入れろ」



「………………だが……」



「それに、我が動かせない、と言ったのはあくまでも軍等の集団としての戦力のみだ。

 これから最も重要になるであろう拠点に、この国で最強の個人戦力を投入して状態の維持を図るのだから、間違った判断と言う訳でも在るまいよ?」



「………………ぐっ……!?

 ……確かに、百歩譲って軍単位で戦力を動かすよりも、個人でソレに匹敵出来るだけの戦力を誇るあんたを動かして置いておく事が合理的だ、って事は理解しよう。納得も同意もしはしないが、そこは良い。そこは、な。

 …………だが、それならばそうと、その後ろに居る二人組は一体何なんだ?何故こんな処に、しかもあんたが連れて来ているんだ?正直、俺とはもう無関係なハズなんだがね?」



「………………っ!」



「…………くっ……!」




 アレスから向けられる厳しい言葉に、思わず表情を歪める二人組こと『連理の翼』のアリサとカレンの二人。



 その言葉と、それまでの彼の態度により、漸く他のメンバー達も彼女らの正体に思い至ったらしく、既に彼から一通りの話を聞いていた彼らは揃ってガシャンダラ王へと非難する様な視線を向け、従魔達も姿勢を低くして警戒体勢へと移行したり、牙を向いて威嚇の唸り声を出したりしている。



 そんな彼らの様子を見たガシャンダラ王は、その若干表情を苦々しいモノへと変えて首を振るが、しかし伝えなければならない事、為さなければならない事であるが為にそのまま再度口を開く。




「…………己には不満も在るだろうし、諸君には受け入れがたい事だろうとは思うが、これでも戦闘力で言えば我らには及ばずとも世間から見れば一級品と言えるだけのモノが在る。

 この非常時に、使えるモノを『使いたく無いから』『相性が悪いから』と言って使わずに苦労するのは阿呆のする事だ。我の立場からすれば、使え、と命令せざるを得ないのは了承してくれ」



「…………他の人手不足な都市や砦に送るのでは不味いのか?」



「「……っ!?」」



「…………残念ながら、その余裕も無い。

 今最も必要とされているのは、原因の確証を掴んでソコに全戦力を注げる環境を作る事だ。故に、ソレ以外にはあまり気を配る余裕は無いし、そうするつもりも無い。

 あくまでも、これは国全体に関わる問題だ。嫌な言い方になるが、一々たった一人の人間関係程度に気を配ってはいられないのだ。

 …………申し訳無いが、少しの間辛抱して欲しい」



「………………俺達と混ぜての運用は辞めておけ。

 でないと、俺達は常に背中を気にして行動する羽目になるし、何時『誤射』が起きて『行方不明者』が増えるか分からないからな」



「「…………っ!!そんな事!?」」



「……あぁ、了承した。

 ならば、時間も勿体無いからな。もう乗り込んでも良いかな?

 急造ながらも大叔父殿が手を加えた逸品だと聞いている。どの様な乗り心地なのか、非常に興味が在るのでな」



「………………はぁ、分かっちゃいたけど、その早すぎる程に踏ん切りの良い切り替えの早さ、たまに着いて行けなくなりそうになるから少しは抑えろ、って前にも言ったよな?」



「……はて?そうだったかな?」



「何だ?とうとう呆けたか?」



「抜かせ!まだそんな歳じゃ無いわ!!」




 自らが作り出した重苦しい空気を、これまた自らの手で吹き飛ばして見せたガシャンダラ王は、リーダーたるアレスからも所有者たるナタリアからも特に許可を取る事はせずに、勝手に橇へと乗り込んで行ってしまう。



 そんな友人の行動に呆れの表情を浮かべながらも、事の成り行きを見守っていたメンバー達へと手振りで乗り込んで出発する事を伝えて行く。



 ……そして、自ら側に移動して労る様な手付きにて腕を絡めて来たセレンの肩を抱きながら、何か言いたげにしている元幼馴染みの二人に対して





「…………依頼主からのお達しだ。取り敢えず、乗せてはやるよ。

 ……だが、俺達はお前らの事を信用しちゃいない。寧ろ、お前らは『味方と言われてる敵』程度に思ってるだろうから、精々背中に気を付けるんだな。

 只の顔見知りでしかないが、魔物に殺られるよりも先に死ぬ羽目になるのは御免だろうから、忠告だけはしておいてやるよ。感謝するんだな?」





 と言い残し、自分達はさっさと橇へと乗り込んでしまい、後には空中へと伸ばされた呆然とした表情を浮かべる二人の姿が残されるのみであった……。




アレス編、第二次ざまぁ(?)



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