『追放者達』、行動を開始する
アレスが絶縁宣言をアリサとカレンの二人に突き付けた後、自分を庇ってあんな事に……と済まなそうにしているセレンと貸し切り風呂に入浴し、彼女の素晴らしく艶やかな曲線と柔らかで豊満な肢体、抜ける様な白い肌をアレス自らの意思で明るい内に備に観察し、彼女自身の羞恥とその他によって赤く染め上げ、その様子と彼女自身を十二分に堪能してから二日程が経過した。
その間にも、何度か二人の襲来は在った様子だが、一度目の時に既にガシャンダラ王へと連絡が行っていて、ソレ以降は王直属の近衛隊(当然の様にアレスとは顔見知り)から何人か護衛として派遣されて来ていた為に、二度と侵入されて騒がしくなる事は無かった為に、アレス達『追放者達』はその間特に外部から脅かされる事も邪魔される事も無く、平穏無事に身体を休める事が出来ていた。
そのお陰で、休養を終えた彼らは気力充実体力万全の状態となっており、今すぐ大迷宮を攻略して来い!と言われても二つ返事で鼻歌混じりに蹂躙……とは流石に行かないが、それでも竜が出たから討伐して来い!程度であれば、まぁ出来なくは無い、かな?と言える程度には疲労も抜けている為に、これから挑む依頼に僅かな不安も抱いてはいなかった。
「……出来れば、もう少し休ませてもやりたかったのだが、流石にこれ以上は問題が出てくるのでな、済まんが頼んだぞ。アレス」
「任せとけよ。取り敢えず、物資の輸送と避難民の誘導を最優先に設定して、出来れば、って感じで原因を探って来れば良いんだろう?
なら、どうにでもなるさ。少なくとも、お前さんと経験する羽目になった諸々の地獄よりは、余程やり易い仕事だろうよ」
「抜かせ!それらは、己がドジを踏んだからであろうが!」
「うるせぇ!そもそも、それらを無理矢理俺にぶん投げやがったのはお前だろうが!」
「なにおう!?」
「やんのかごるぁ!?」
「「ガルルルルルッ!!!」」
何故か、出立に合わせて来訪したガシャンダラ王がアレスとそんなじゃれ合いを繰り広げる事となったが、ソレ以外は特に何かトラブルに見舞われる、と言う事も無く、平穏無事に首都ミョルニルを出立する『追放者達』。
……しかし、目指す先は定まってはいるし、かつ迅速に行動するべきであるのは確かな事なのだが、とは言ってもその道中はどうしても比較的単調で暇になる(当然魔物も襲ってくるが彼らにとっては今更である)為に、メンバー間で行われていた会話の流れは先程のガシャンダラ王とのやり取りと合わせて、アレスと彼との間柄へと向かって行く。
「…………あん?俺と、ガシャンダラとの出会いの切っ掛け、だってか?」
「そうそう。
言っちゃあなんだけど、正直アンタって立場的にはガリアンみたいな貴族出身だとか、セレンみたいな特殊な立ち位置だとかよりは、スラム出のアタシ寄りじゃない?
だったら、って訳でも無いけど、そんなアンタがなんであんな王様と知り合えて、その上であんなに忌憚無く悪口言い合える様な仲になれた訳?って話よ。普通は有り得ないでしょう?」
「…………まぁ、当方の分類にはちと物申したい処では在るが、タチアナ嬢の言い分も最もであろうな。そこは、確かに当方とて気になる部分である。
どの様な経緯で、あの様な関係に至ったのだ、リーダー?」
「……どの様な、って言われても、そんな劇的な『何か』が在った訳でも無いんだけど……?」
「では、陛下とはどの様にして出会う事となったのですか?
言えない、と仰られるのでしたら、私は無理に聞くつもりは在りませんが……」
「…………まぁ、別に黙ってなきゃならない理由も無い事だけど、本当にしょうもない事だぞ?
何せ、王様仕事に嫌気が差してミョルニルを抜け出して来たガシャンダラが、長期的に滞在する必要が在ってかつ俺が不要、って依頼を受けて来訪した際に例の転職神殿を初めて利用してテンション上がってた俺に対して酔っ払って絡んで来た、ってのが俺とあいつとの関係の始まりだからな?」
「「「「………………はい……?」」」」
「なはははははははははっ!!!」
アレスの口から飛び出した言葉に、思考停止した様に気の抜けた言葉を漏らすガリアン、タチアナ、セレン、ナタリアの四人と、半ば予想していたのか、それとも『あの王様ならやりそうだ』との感想を抱いたからかは不明だが、走り続ける橇の上で器用に腹を抱えて爆笑するヒギンズ。
そんな彼らの様子に、爆走しながらもチラチラと彼らの方へと振り返り、何か在った?大丈夫?と言いたげな視線を向けて来る従魔達に手振りで『大丈夫だ』と告げてから、中途半端になっていた彼の王との馴れ初めの続きを口にする。
「……それで、俺とあいつとが遭遇した時の続きだけど、最初はあんまり仲良くなれそうにも無かった、ってのが俺の正直な感想だったよ。
何せ、当初の俺は幼馴染みだった二人の役に立つ事だけを必死に考え続けていて、それで漸く戦えるかも知れない、もっと役に立てる様になるかも知れない、って可能性を見出だしたばかりだったからな。少しでも早く、大きく成長する事しか頭に無い、ボロボロで貧相な孤児院を出たばかりのガキだったのさ。
そして、一方あいつは当時の俺から見ても既に『強者』としての高みに在って、その上でお忍び様の変装とは言えそれなりに金の掛かっているだろう事が一目で解る格好をしていたのさ。
…………ここまで言えば、タチアナなら少しは理解できるんじゃないのか?多分だけど、さ」
「…………まぁ、否定はしないわね。
大方、金も地位も力も持ってるヤツの道楽に巻き込まれた、とか思ったんじゃないの?」
「大正解。
だから、俺も最初はあいつの事は無視していたし、遭遇したのだって偶然酒場に通り掛かって、ってだけだったからさっさと目的地にしてた狩り場に移動してスキルを鍛えていたんだが、何故か気付かない内に跡を尾けられていたみたいでな。気付いたら俺が倒した魔物の側に酒瓶片手にしゃがみ込んでいてさ?その上で『強くなりたいか?なら、我が良い処に連れて行ってやってもよいぞ?』とか抜かしてくれたのよ。
流石に、俺も最初は酔っ払いの戯言に付き合うつもりは無い、って事で突っぱねたんだけど、その後ガシャンダラが実力を俺に見せて来て、これだけの力が欲しくは無いのか?勿体無い、とか抜かしてくれやがったから、俺も売り言葉に買い言葉で『なら、俺をその場所に連れて行って、実際に強くしてみやがれ!』って言ったのさ。
まぁ、それが、あいつとの腐れ縁の始まりであり、今の俺を形つくっている最大の要素であると同時に、人生初にして最大の地獄を見る羽目になった訳なんだけどさぁ……」
「………………いや、そこで虚ろな瞳をしながら沈黙されると、続きが気になるアタシ達としては、どう反応して良いのか分からなくなっちゃうんだけど?
ってか、地獄って何さ地獄って。そんな感じの事を、確かにさっきも言ってたみたいだけど……?」
「…………聞きたいか?本当に聞きたいか?
このパーティーを結成した当初みたいに、ランク不相応の実力を持っていた訳でも無いのに高位の魔物の群れに放り込まれたり、特定の攻撃でしか倒せない様な相手の弱点を自力で探って倒すって事を繰り返したり、一つでも作動させれば確実に死ぬトラップに満ち満ちたダンジョンにぶちこまれたり、見付かれば確実に殺されるって魔物の直ぐ近くで隠れさせられ続けたりと、今思い出しても何で死ななかったのか不思議になってくる様な地獄の数々の詳細を、本当に聞きたいのか……?
ぶっちゃけ、欠片もオススメは出来ないぞ……?」
「………………いや、そうまでされて、何故今の様な関係性に落ち着いたのかが理解出来ぬのであるが……?」
「……さぁ?そこは、実の処俺にも良く分からん。
確かに、そうやって方々に無茶苦茶な放り込み方されて、地獄と転職神殿とを行ったり来たりする生活を続けさせられる羽目になって恨んでいたし、力を着けたら確実に殺してやる!とも思っていたハズなのに、最終的には冗談を飛ばし合って笑いながら酒を酌み交わす間柄になっちゃっててさぁ……何でだろうね?
ついでに、あいつの身分なんかを知ったのもその頃だったけど、あんまり驚かなかった事は良く覚えているよ」
「と言う事は、ガシャンダラ王ってリーダーの師匠に当たる間柄って事になるのかなぁ?」
「……………………多分?きっと?そうなんじゃないの、かなぁ?
まぁ、確かに戦い方とかを教えて貰った、って事は事実と言えば事実だけど、俺の感覚としてはあんまりあいつの事を『師匠』としては認識してないんだよねぇ。
どっちかって言うと、感覚的に一番近いのは『悪友』だとかそっち系になるのかな?本人も、言動を見る限りだとそうっぽいし」
「……成る程、その様な過去が在ったのですね……」
何故か染々とした様子でそんな事を呟くセレン。
大した事でも無いハズ何だが……?と思いながらも、取り敢えず聞き出すべき事でも無いだろう、と判断したアレスは、早くも遠目ながらも見え始めた最初の目的地と、そこから挙げられる黒煙によって意識を引き締めて行くのであった。
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