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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』岩人族の国を救う

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暗殺者、聖女と共に過去の因縁と対峙する

 



「……それで?今更ながら騒ぎを起こして、何のつもりだ?

 まさか、その行いが自分達の名声を地に貶めるモノだと、理解していないハズが無いのだろう?」



「「……………………」」




 返事もせずに、自身に対して信じられないモノを見た、と言わんばかりの視線を返すのみの二人に対し、それまで彼女達に対して抱く事の無かった『苛立ち』から舌打ちを漏らして組んだ腕を指で叩く。



 つい先程まで宿の受付にて大騒ぎしていた二人は、今は同じくロビーに設えられている休憩室の様な一角に在る椅子に座り、目の前のアレスに対しては終止無言で視線を注いでいる。



 どうやら、出会い頭で浴びせかけられた言葉の冷たい温度が余程衝撃的であったのか、それとも内容に思う処があってわざと黙ったままで居るのかは定かではないが、どちらにしてもアレスにとってはただただ鬱陶しいだけに過ぎない、と言うのが正直な話。



 何せ、彼にとって二人は既に『過去』であり、もうとっくに『終わった話』となっている。


 故に、こうして押し掛けられても『追い掛けて来てくれた!』なんて思う事は有り得ないし、『久し振りに会ったのだから何を話そうか?』なんて気分にも勿論ならない。


 前述の通り、彼にとっては二人との遭遇はただただ鬱陶しいだけなのだ。



 しかし、そんな事を察する事が出来なかったのか、それまで唖然としている様子を見せていた二人はハッと何かに気が付いた様に正気を取り戻すと、アレスの記憶に最も多く存在し、端から見れば悪意にまみれていながらも一摘まみの好意が込められている…………かも知れない表情を浮かべながら口を開く。




「……アレス、お前オレ達にそんな偉そうな口を利ける様な立場だと、本当に思ってるのか?」



「私達は、ガシャンダラ王からの直接指名を受けてここに居る。つまり、私達は望めばガシャンダラ王に対して直接的かつ優先的に謁見する事が可能。偶々ここに居るだけのアレスとは、文字通りに存在の格が違うのを、なんで理解できない?」



「オレ達が一言伝えるだけで、お前もお前の仲間も、罪人として冒険者資格を剥奪させる事も出来るんだぜ?

 ソレを分かって無かったって事なら、今すぐ土下座して『勝手に出て行ってスミマセンでした。絶対服従を誓うのでもう一度仲間に加えて下さいお願いします』って言うなら許してやらなくも無いぞ?まぁ、考えるだけだけどな!」



「………………」



「ただの暗殺者に過ぎず、偶然優秀な冒険者を仲間に出来て、たまたまランクを上げられたからと言って、本物たる私達と同格になれたなんて、思い上がり過ぎ。

 いい加減、アレスは私達の足元にも及ばない存在だと言う事を自覚して、こうしてわざわざ会いに来て上げた事を感謝しなくてはならない。

 それが、私達とアレスとの間に在る、絶対的な実力差によって産み出されている格差。それを、いい加減自覚してくれない?」



「そうそう!生意気に、一丁前にパーティーなんてこさえやがって!お前がそんな事出来るハズが無いし、して良いハズも無いだろうが!

 良い年して、自分の出来る事出来ない事すら分かって無い雑魚でしか無いんだから、さっさとオレ達に頭下げて謝って戻って来れば良いんだよ!ほら、さっさと返事しやがれ!!」



「………………」




 整った容姿の二人が開いた口から放たれる罵声の数々。


 対峙するアレスの全てを否定し、かつ自分達が振るえると思っている権力を誇張して一気に捲し立てる様にして相手に叩き付け、反論する隙を与えず、かつ『反論しなかった』と言う事を認めた証拠として更に相手を詰って行くその手法。


 ソレを、アレスが黙ってソレを聞いている事を良いことに、流れる様に罵倒を混ぜ込んで一気に巻くしてて来るその遣り口の前には、あまりにも一方的かつ高圧的な物の言い方に、相変わらずアレスの隣にいたセレンも咄嗟に口を挟む事が出来ずに呆然と二人を見詰めるのみに留まってしまう。



 しかし、生来の気性として他人を悪く言う事を嫌うセレンが、幾ら以前からの知り合いであるとは言え、現在は自身のパーティーメンバーであり、その上で自分の恋人でもある存在に対して罵倒されている、と言う状況に我慢しきれなかったらしく、それまでアレスの隣に腰掛けていた椅子から腰を浮かせて二人へと詰め寄る。




「お二人とも!さっきから黙って聞いていれば、好き放題言ってくれますね!

 貴女達が幾らアレス様の元パーティーメンバーだったとは言え、言って良い事と悪い事があります!その程度の事、何故分からないのです「セレン」……アレス様?」



「…………良いから。

 セレンがそう言ってくれるだけで、俺は充分だから」



「…………アレス様……」




 しかし、アレス本人の言葉により出鼻を挫かれ、その上で本人によって宥められてしまっては流石の彼女も勢いを持続させる事は出来なかったらしく、アレスと視線を交えた状態のまま素直に席へと着き直し、彼の腕を愛しそうに胸へと抱いて行く。


 ソレに対し、アレス本人も目の前の二人に向ける無機質なソレとは打って変わって、彼女へと向ける視線は甘く暖かく蕩ける様なモノへと変化しており、一目で互いに想い合っている関係なのであろう事が見てとれる。



 …………しかし、そんな二人の関係を、より的確に表現するのであれば『故意的に(・・・・)認識から外していた』二人が漸く彼女の事を認識した事により、二人の表情に怪訝そうなモノが浮かび、視線には理解不能なモノを見ている、と言わんばかりの色が滲み出ていた。




「…………処で、アンタ誰だ?

 そいつの隣に座ってる、ってだけでも充分に変だけど、なんでそいつと腕組んでるんだ?

 誰の、許可を、得て、そんな事、してやがるんだ、って聞いてるんだよこっちは!?」



「……大方、彼の活躍を聞いて取り入ろうと言う魂胆なのでしょう?なら、残念ながら無駄な努力に終わるだろうから、諦めなさい。

 それに、そんな下品な駄肉で彼を惑わそうとしても無駄。彼は、そもそもスレンダーな方がタイプだし、彼のパートナーはとうの昔から私達だと決まっている。貴女の付け入る隙なんて、もう毛ほども無いの。分かった?」



「そう言う事!

 だから、分かったんなら、いつまでも下品で在るだけ無駄な肉塊を押し付けて無いで、さっさと何処へともなく消え失せな!

 心配しなくても、こいつの世話はオレ達で確り見てやるし、アンタはその売女に相応しい身体でも使って、娼婦の真似事でもしてるのがお似合い「黙れ」……………あ?」





「…………いい加減、二人とも黙れ……」





「「………………っ!?」」




 二人の罵声がセレンへと向けられ、決定的な言葉が出た途端に、高位の魔物と相対した時以上に濃厚な殺気と物理的な圧力すら感じさせる気当たりと共に、アリサとカレンの二人に対して絶対零度の温度にてアレスから言葉が放たれる。



 その表情は完全に凪いでおり、瞳の中にはそれまで辛うじて存在していた『幼馴染みとの対峙』と言う比較的明るく暖かみを帯びたモノすらも消え失せ、完全に殲滅するべき敵を見るモノとなっていた。



 その二つを合わせ、流石に彼の逆鱗に触れたのだ、と気が付く二人であったが、彼女らにとって彼は『支配して然るべき存在』であるとこれまでのやり取りにて無意識的に思い込んでしまっていたために、咄嗟に弁明する言葉すら出ず、ただただ自分達に対して殺意を向けて来た、と言う事に衝撃を覚えて固まるのみとなってしまっていた。



 そうして固まる二人に対し、赫怒と殺意の入り交じった昂り過ぎた事によって逆に凪いでしまっていた視線を向けていたアレスだったが、ソレ以上何か言葉を掛ける事すらもせずに席を立ち、表情を一変させてセレンへと手を差し伸べる。



 半ば反射的な行動として彼に微笑み返し、その手を取ったセレンだが、席を立つ際に二人に対してチラリと視線を送り、何か言わなくても良いのですか?と問い掛ける。



 しかし、彼は無情にもその場で首を横に振り、二人にとっては最も聞きたくなかったであろう言葉を残し、ソレによって顔を赤らめ恥じらいながらも拒否する事はしなかったセレンの姿を見て更なる絶望に陥る二人を残して休憩室を後にするのであった。






「……良いんだよ。こいつらは、俺の大切な仲間と、大切な恋人を馬鹿にしてくれたんだ。

 元々、殆んど向こうから切ろうとしていた幼馴染みとしての縁が、ここで漸く完全に切れたってだけに過ぎないさ。

 それに、ここには連れてきていないみたいだけど、あいつらはあいつらで男いるから、そっちはそっちで『愉しむ』だろうから、もう俺とは無関係で居たいんだろうよ。

 なら、その望みを叶えてやるだけさ。

 ほら、気分の悪い話はここまでにして、早い処一風呂浴びようぜ?例の貸し切り風呂、空いていたら入ってみるのも一興だろう?」






取り敢えず前哨戦終了


次回から本格的にスタンピードへの対応に移ります



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