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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』岩人族の国を救う

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『追放者達』、目的地に到着する

 


 カンタレラ王国とガンダルヴァ工匠国との境に設えられた関所を無事に通り抜けたアレス達『追放者達(アウトレイジ)』は、ガンダルヴァの首都であり、今回のスタンピードに於いて最重要防衛拠点かつ最後の砦であり、その上で中央指揮所となる事が決定されている大都市『ミョルニル』へと向かって一路街道を爆走して行く。



 とは言え、その道程は平坦かつ安全なモノとはとても言い難いモノとなっていた。



 先ず、一つ目の障害を挙げるとすれば、道の状態があまりよろしくない。


 これは、基本的に平地が多いカンタレラ王国とは異なり、国民の殆んどが職人にして鉱夫と言う特殊な種族性を持つ岩人族(ドワーフ)であるが為に、必然的に国土の殆んどが山地で占められており、ソレが故に、と言う訳でもないのだろうが、殆んど獣道と変わらない様な砂利道に、上がったり下がったりと言った坂道がとても多くなってしまっているからだ。



 次に挙げるならば、やはり遭遇する魔物の多さも旅路を険しくしている要素の一つだろう。


 先程も述べた通り、ガンダルヴァは国土の殆んどが山地に占められている。


 ソレが故に、山歩きに慣れた地元の岩人族(ドワーフ)達を持ってしても、どうしても魔物の取り零しは多く出てしまい、結果的に以前からガンダルヴァは魔物の多い国としても有名であった。


 故に、彼らもある程度までは襲われる事も覚悟していたのだが、今回は発生寸前のスタンピードの影響なのか、普段よりも魔物の数が多く、彼らの乗る橇も彼らの覚悟を上回る規模と回数によって度々襲撃を受ける羽目になってしまった、と言う訳だ。



 とは言え、彼らがそこまで悪戦苦闘していた、と言う訳でも無かったりする。



 何故なら、依頼によっては出先で岩の上で寝る羽目になる事すら在る彼らは悪路には慣れているし、何より横揺れではなく縦揺れでしか無かった為に、激しく躍動するセレンの一部を直視してしまったタチアナが吐血しながら血涙を流した以外は特に弊害は無く、平時と変わらぬ速度にて道なき道を突き進んで行く事が出来た。



 魔物にしても、普段からして哨戒要員としての働きを果たしている従魔達とアレスによる警戒網によって接近してくる前に存在を察知され、遠距離攻撃の手段を元々持っていたアレスやセレン、新たに手にしたナタリアの手によって近接職のガリアンやヒギンズが手を出す暇も無いままに処理されてしまい、橇を返り血で汚す事すら出来ずに散って行ってしまった。



 そんな道中にて唯一彼らの心と身体を疲弊させる事が在ったとするならば、ソレは時折価値の高い素材となる魔物や植物の類いを察知する事に成功しても、急ぐ旅路であった為にそれらを放置して行く必要が在り、かつドヴェルグが飛び降りてでも採りに行こうとするのでソレを力ずくで止める羽目になり、そのやり取りの際に消費する体力と精神力が最も辛く苦しいモノであったと言える……かも知れない。



 流石に、カンタレラ王国と繋がっている街道であるが故に、時折宿場町の様なモノが見えて来る事もある。



 しかし、それらは一様に魔物の襲撃によって破壊されているか、もしくは建物は無事な様に見えても人気が感じられない廃墟の様な雰囲気を醸し出している場所ばかりであった。




「…………どうやら、この辺も聞いていた通りに魔物が活性化してるみたいだな」



「……うむ。しかし、その全てが蹂躙された、と言う訳でもない様であるな。

 幾つかではあるが、血の匂いや腐臭が感じられない処も在った。そう言う処は、恐らくは避難したのであろうよ」



「流石に、こう言う盤面になれば上から避難指示が出されるんじゃないのかなぁ?

 少なくとも、破壊されてる処とかの規模を鑑みると犠牲者の数がかなり少ないから、多分襲われたのを一旦撃退して、その後避難したんじゃないのかなぁ?」



「…………そうだと、良いのですね……」



「まぁ、ソレもさっさと到着すれば分かる事なんだから、早く行きましょうよ。

 言っちゃ悪いけど、ここはもう『終わってる』場所なんだから、あんまり長居してもアタシ達に出来る事なんて何もないわよ?」



「……そう、ですね。

 今の私達に出来る事は、一刻も早く事態を解決に導き、こう言った犠牲を少なくする事だけです。

 ……ですが、この場にさ迷う無念に囚われた魂達に、祈りを捧げる事位は赦されて然るべきでしょう。

 …………安らかな眠りに、安住の地へと、どうか昇れます様に……」




 調査の為に、と寄った廃墟にて、セレンが教会式の鎮魂の祈りを捧げて行く。



 戦闘職としてはアンデッドに対して強烈な特効効果の在る神聖魔法を操り、回復魔法によって仲間達を助けるセレンであるが、その本分は聖職者であり、かつ『聖女』を授かっている関係で地に留まる魂を観る事が出来る彼女の目には、やはりこの光景は祈りを捧げざるを得ないモノとして写ったのだろう事は、容易に想像が出来た。



 そうして、幾度も廃墟と廃棄された宿場町を横目に通り過ぎる事約二日。


 彼らにしては大分遅く、そうであっても通常では考えられない程の早さにて街道を駆け抜けた彼らは、目的地として設定していたガンダルヴァ工匠国の首都である『ミョルニル』へと到着する。




 …………が…………。





「…………ねぇ、本当に、ここが目的地な訳?アタシを騙して遊んでいるんじゃなくて?だったら、アタシからアンタへの評価を改めないとならなくなるんだけど……?」




 そんな刺々しい言葉が、多少の苛立ちを滲ませた声色にてタチアナの口から放たれる。



 怒りすら感じられる彼女の言葉だが、他のメンバー達もソレを咎めたり、言葉を向けられたアレスへと、普段であればするであろうハズの取り成す様な事をしようとはしていない。


 寧ろ、それぞれの瞳にはタチアナが口にした疑問が色濃く宿り、猜疑の感情すらも滲んでいる様にも見て取れた。



 ……それは、何故なのか?



 その答えは、言ってしまえば至極簡単な事。




 そう、彼らがドヴェルグとアレスの案内によって連れて行かれたその先には、街や都市処か人が住んでいる気配を欠片も感じる事が出来ない、ゴツゴツとした岩山しか無かったからだ。



 カンタレラ王国ならばともかく、このガンダルヴァ方面に対しての情報に疎いらしいガリアンやナタリアは当然としても、旅慣れているヒギンズや見聞の広いセレンですらそうして訝しむ視線を向けて来ると言う事は、やはりここの防備は優れているのだろう、と一人勝手に納得するアレス。



 そんな彼の様子に、視線へと込められていた訝しむ感情を強めたメンバー達であったが、ドヴェルグによる




「…………そろそろ良いじゃろうか?

 そうしてからかいたくなる気持ちも分からぬでもないが、今は少しの時間も惜しい。早く入って(・・・)、色々と確認したいのじゃが?」




 との言葉により、幾分かソレが薄れ、変わって戸惑いの色が強くなって行く。



 そんな彼らの様子に苦笑しながら、流石にこれ以上は時間の無駄だから、と判断したアレスが、ドヴェルグに向かって首肯する事で許可を出す。



 ソレにより、橇から降りたドヴェルグが、近くに在った岩の内の一つへと、ノシノシとその短い足にて歩み寄って行く。


 そして、その岩の一部を軽い調子で叩くと、なんとその部分がパカッと開き、その内側に大粒の魔核の様にも見えるモノが収まっており、ソレに対してドヴェルグが手を伸ばして直接触れて行く。



 …………すると……






 …………ゴ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!






 との、重苦しい轟音を周囲へと響かせながら、彼らの目の前へと聳えていた岩山の一部が動き始め、呆気に取られつつも油断無く構えている彼らの目の前で、ユックリとではあるが左右へと開いて行く。



 暫し響いた轟音が止んだその時には、ソレまでは何もないただの岩壁であったハズの場所に通路が開かれており、その内部から油断無く得物を携えて全身を重鎧で武装した岩人族(ドワーフ)と思われる衛兵が彼らを出迎えに来る。



 それらの光景を、呆然としながら眺めていた彼らへと、まるで悪戯が成功した悪ガキの様な表情を見せつつ、衛兵へと対応しているドヴェルグからは呆れた視線を向けられながら、目の前に開いた通路の奥を手で指し示してからこう告げるのであった。





「……さて、ほぼ部外者の俺が言うのもアレだけど、取り敢えず言わせて貰おうか。

 ようこそ、岩人族(ドワーフ)の国ガンダルヴァの首都にして最大の都市、その技術の粋を凝らして作られた大規模地下拠点(・・・・)、『地底都市ミョルニル』へ!!」





ドワーフと言えばやっぱり、ねぇ?



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