『追放者達』、岩人族の国へと到着する
今回少々短いです
ご了承下さいませm(_ _)m
『追放者達』のメンバーが、依頼主であるドヴェルグと共にアルカンターラを出立してから約三日。
彼らの姿は、ガンダルヴァとカンタレラとの境界線である関所に在った。
通常であれば、アルカンターラからではどんなに急いでも、例え夜通し四頭立ての馬車にて飛ばしに飛ばして駆け抜けたとしても、この関所へと辿り着くのに五日程は掛かる(本来はある程度加減して七日程掛ける)上に、その時点で既に馬は潰れてその場で立ち往生する羽目になる。
しかし、彼らは普通に夜営をし、適宜休息を挟みつつ、道沿いに出現した魔物を蹴散らしながらの道程でありながらも、橇を牽いている動力たる従魔達は未だに元気一杯であり、今も手続きを続けるアレスやガリアンと言ったメンバー達へと『暇だから』と足元にじゃれついたり、下げられた手に自ら頭を擦り付けて『構え!』と自己アピールをしたりする程であった。
そんな彼らの事を、今更ながらに正体不明なモノを見る目で眺めるドヴェルグであったが、ソレはソレとしてそれまで牽いていた橇を、整備も兼ねて手持ちの道具で弄くり回していた。
以前から、従魔達を橇に固定する為の時間や、止まった際に分離する為に掛かる時間がそれなりに発生してしまっていたので、そこら辺をどうにか出来ないか、とナタリアが頭を悩ませており、ソレを聞いたドヴェルグが手空きの時間を埋める為に改良を買って出た、と言う事なのだ。
取り敢えず、既に改良は終わっており、現在は新たに組み込んだ仕掛けがちゃんと作動しているかどうか、パーツの損耗度はどうなっているか等のチェックを行っており、その目付きは半ば手慰みに作ったモノであっても自身の作品の一つである、と言う自負に溢れていた。
「……ふむ。片手間に作った仕掛けではあったが、どうやら大丈夫なようじゃな。
パーツも無駄に磨り減ってはおらぬし、がたつきの類いも無い事を見ると、取り敢えずは成功と見ても良かろうよ。
まぁ、今後使って行く内に何か不具合が出ぬとも限らぬが、その時は儂の処まで持って来れば面倒見てやるわい」
「ありがとうなのです!
でも、良かったのですか?ドヴェルグさんって、確か有名な職人さんなのですよね?
そんな人に、こんな専門外のモノを、しかも無料で依頼なんてしちゃって……?」
「……ふん!この程度、専門家で無くともどうにでもなるし、こんな簡単なモノで一々料金を取るのは儂の主義に反するからのう。
それに、儂とてこんな危険度の高い依頼を出しておるのだ。この程度のサポート、せんでいてどうするよ?」
そう言って鼻を鳴らしたドヴェルグであったが、その耳は僅かながらも赤く染まっており、表情は満更でも無さそうに緩められていた。
その為に、悪態を吐く、と言っても良いであろう態度を取られたにも関わらず、自分達の為にやってくれた事なのだから、とドヴェルグの元へと駆け寄って行き、モフモフの身体を擦り付けたり、その顔を舐め回したりし始める。
突然、自身よりも大きな従魔達九頭が、敵意や傷付ける意図は無いにしても殺到して来た事により、外見的な年齢よりも遥かに頑強に出来ているドヴェルグと言えども圧倒されてしまい、なす術も無く地面へと押し倒されて九頭掛かりで揉みくちゃにされてしまう。
いきなりの事に、流石に怒られるのでは!?と心配になったナタリアが従魔達を引き剥がそうとするが、しかし毛玉から覗いているドヴェルグの表情はだらしなく崩れており、幾ら小型化しているとは言えそれなりの重量が掛かっているハズなのにソレを感じさせない程の『至福』に満ちている様にも見えた。
……どうやら、この頑固爺で鳴らしていたドヴェルグ。
隠れモフリストの気が在ったのか、それとも今回の旅路でソレに開眼したのかは定かではないが、少なくともかつて彼らの装備を作る事を引き受ける程度には昔から好感度が高かったらしい従魔達を、隠す事無く愛でる方向に考え方をシフトした様子であった。
そんな、まるで孫に集られた好好爺、と言った様子を見せるドヴェルグの姿を尻目に、手続きを終えたアレス達が合流してくる。
そして、毛玉の中に埋もれていた爺を発掘し、橇の上へと投げ捨てて気付けをして正気に戻してから、現状の確認を行ってゆく。
「取り敢えず、手続きは終わったからもう入れるぞ。
ただ、さっきも関所の処で忠告されたけど、やっぱりガンダルヴァ側は最近魔物の出現が増えて来ていて危険度が跳ね上がっているらしい。それこそ、低位の冒険者程度なら、外を出歩くのは自殺行為に当たる位には、危険度が上がっているらしいぞ」
「…………おい!いたいけな老人を、天国から無理矢理引きずり下ろして謝罪の一つも無しに、いきなり切り出した話がソレか!?
お主には、欠片も老人を労ろうと言う心持ちが無いのか!?」
「労る様な言動を取ったら取ったで切れ散らす癖しやがってからに、あまり無意味に声を張り上げるんじゃねぇよ!
取り敢えず、ここからは危険地帯で、俺も戦力の方に切り替えた方が良さそうだから、この先の案内はドヴェルグに任せる事になるが、別に構いやしないだろう?」
「……ふんっ!誰にモノ言っとるか分かっておるのか?
この国は儂にとっての庭に等しいモノよ。ある程度様変わりしておったとしても、酔っ払っていようが安全かつ最短の道を示してやるわい!」
「だ、そうだ。
と言う訳で、これから先は細心の注意を持って進むからそのつもりで!」
「「「「「応!!」」」」」
そう、力強く返事をするメンバー達の姿を目の当たりにしたからか、満足そうに一つ頷いて見せ、手振りで出発する事を示しつつ自らは率先して橇へと乗り込んで行き、他の皆を急かす様にして橇へと乗せると、御者であるナタリアへと出発を促してガンダルヴァへと向かって行くのであった……。
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