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『追放者達』、気力の充足に成功する

 



「…………ふむ?この、緑色の結晶体を作っている鉱石は、何であろうな?

 マギアカッパーの亜種であろうか?」



「……う~ん、どっちかって言うと、ソレってこっちの赤いヤツなんじゃないの~?

 そっちのは、魔導石のマナジェイドの親戚だとオジサン思うんだけどなぁ~」



「…………ねぇ、アンタはあの二人が何言ってるのか理解出来る?

 ちなみに、アタシはさっぱり分かんない。チンプンカンプンも良い処なんだけど?」



「……まぁ、一応は。

 コレでも、前に岩人族(ドワーフ)の治める国で依頼を受けた時に、現地の職人に色々と教わった口だからな。

 鉱石系統で良ければ、分からなくは無い、程度に判別すること程度は出来るぞ?まぁ、スキルで判別出来ない事も無いから、あんまり役には立ってない技能かもしれないけど」



「……いえ、どちらかと言うと、スキルに頼らずにそう言った判別の出来る方が異常に近いと思うのですが……?」




 露天鉱床を掘り返した結果として得られた鉱石を前にし、ああでもない、こうでもない、と意見を交わすガリアンとヒギンズの二人を遠巻きに眺めながら、タチアナに求められた意見を率直に返したアレスにセレンが驚く、と言った、半ばコント染みた事を繰り広げる五人。


 ちなみに、ガリアンが口にした『マギアカッパー』とは銅に魔力が浸透して出来た魔導金属(魔導具等の製作に使われる金属。以前出た真銀(ミスリル)神鉄鋼(オリハルコン)もこの仲間)の一種であり、ヒギンズが口にしていた『マナジェイド』とは同じく宝石(この場合は翡翠)に魔力が浸透して出来た天然の魔石である『魔導宝玉』の一種の事である。



 そんな彼らを若干の呆れの感情を混ぜた視線にて眺めつつ、今回協力してくれた獣達一頭一頭に対し、感謝と労いの言葉を投げ掛けつつ、その頭を撫でて行くナタリア。


 その表情は、何処かの教会に『秘蹟の到来』とでも銘打たれて描かれ、聖人画や宗教画として飾られていても可笑しくは無さそうな程に慈愛と親愛に満ち溢れており、何とはなしに視線を向けたガリアンが目を離す事が出来なくなってしまう程度には、とても印象的な光景であったと言えるだろう。



 とは言え、一応は目的を達成した以上、あまり長々と居ても仕方がないと言う事もあり、手早く準備を整えて森を出る為に移動を開始する『追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達。



 元ナタリアの従魔であった獣達の大半はその場で解散する事を選択し、名残惜しそうに散って行ったのだが、当然の様に一部の獣達はその場に残って彼らへの同行を申し出て来た(ナタリアによる通訳曰く)。


 彼女への親愛と、彼女が信頼しているアレス達とならば、と言う事なのであろうが、残念な事に彼等がこの後予定している場所は只の動物達を連れて行く事はほぼ『死なせる』と言う事と同等の行為であり、かつ最低限月紋熊のヴォイテクや森林狼のズル達と同じ様な存在になっていない限りはそもそも連れてさえ行けないのだ、と言う事を、彼らの正体(?)を明かしてまで説明し、どうにか理解を得る事に成功した。



 とは言え、ならば見送り位は!と言う彼らの熱烈な意思を受け、ソレを受け入れた彼らと共に一路森の出口を目指して爆走して行く。



 その途中、倒すだけ倒された魔物の死骸や真新しい夜営の痕跡を発見したり、森の入り口付近に停められた無人の馬車(飼い葉と水が餌桶から無くなって悲しそうに馬が嘶いていた)を見付けたりしたが、取り敢えずその辺の事柄には自分達は無関係である、と割り切っている彼等がそれらを見たからと言って足を止めるハズも無く、悉くをスルーしてサジダリアの森を後にすると、獣達とソコで別れて一路ケンタウリの街を目指して進んで行く。



 本来であれば、行き道よりも重量を増して速度が鈍っているハズであろう橇も、アイテムボックスによって重量を無視出来る上に、久方ぶりに訪れた故郷の森によってリフレッシュしてテンション爆上げ状態となっている従魔達(エンジン)によって逆に行き道よりも速度が出ていた彼等は、昨日よりも圧倒的に短い時間にて道を走破してケンタウリの街へと到着する。



 当然、入る時に申請が必要であった様に、出たのならば出たでソレを申請する必要が在る(遭難した、と言う事態に迅速に対応する為、なのだとか)ので、彼らとしては誠に業腹であるが真っ先に目指すべき場所であるギルドへと向かって進んで行く。



 途中、以前と同じ様に、彼らを目の当たりにした地元の民衆が何やらコソコソと噂話に興じている様子であったが、既にその手の悪意に晒されるであろう事は予想出来ていたので特に戸惑う様な事は無かったが、それでもうざったい事に代わりは無いので、擦れ違い様に軽く殺気を込めて睨み付けたりしたか、その程度の『オチャメ』は許されて然るべきであろうから、特には気にせずギルドを目指す。



 街中故に橇の速度を上げる事は憚られるが、それでもそこまで広大な面積を誇る街、と言う訳でもないので、嫌が応無しに冒険者ギルドの建物へと到着してしまう『追放者達(アウトレイジ)』一行。



 今の処、嫌な思い出しか無いこの支部には、正直関わりになりたくは無いのだが、それでも規定されている以上はしなければならない手続きではあるし、今回手に入れたモノの内、食料品以外の土産として入手したモノを送る為にはギルドのシステムを利用するのが一番手っ取り早い(物品輸送の依頼として出す事になる)為に、使わざるを得ない、と言う事情も在ったりするのが痛い処でもある。



 そんな思いにて苦々しく表情を歪めながら、渋々、と言った感じを隠そうともせずに、ギルドの扉を押し開いて中へと入って行くアレス。



 同じく、あまり良い思い出の無いが為に多少不機嫌になりながら、彼の背中に続いて中へと踏み込んで足を進めるメンバー達。



 手っ取り早く用事を済ませたかったが為に、周囲へと視線を配る事すらせずに、真っ直ぐに受付を目指して進む一行の視界に、何となく見覚えの在る様な気がする受付嬢の姿が写り込んで来る。



 先頭を行くアレスとバッチリ視線が合っていたし、何よりその受付だけは他に並んでいる人が居なかった為に、さっさと用事を済ませたかったアレスとしては丁度良かった事も在ってその受付ブースへと足早に直行して行く。



 すると、向こうもアレス達には覚えが在るらしく、顔を強張らせながら彼らの対応をし始めた。




「…………ようこそ、いらっしゃいました。

 先日の件ですが……」



「……ん?あぁ、アレね。

 ……もしかして、そうやって真っ先に言い出すって事は、まさかナアナアで済まそうとしてないだろうな……?」



「まさか!そんな訳在りません!

 確かに彼らは地元に貢献する貴重な冒険者ですが、流石に今回の件は見過ごせません!それに、流石に皆様Aランクのパーティーの方々からの告発を揉み消す様な事は致しませんし、皆様が泊まられた宿の従業員の方々からも、直接皆様と交わされたやり取りに対しての証言も得られましたので、そんな状況で『森林の踏破者』を庇いだてする様な事は致しません!

 最低でも、冒険者資格の剥奪は確定ですし、それ以上の刑が下される可能性も在ります。

 ……が、過去に同じ様な手口で犯罪を行っていないとも限らないので、そこら辺の取り調べが終わらない事には、確実に『こうなる!』とはまだ言えない状態でして……」



「…………ふぅん?じゃあ、確実に処分はする、と言う事で良いんですかね?

 後でこっそり庇いだてて……とか言うオチは、絶対に許すつもりは無いんだけど?」



「も、勿論です!

 信用して頂けない、と言う事でしたら、今すぐに『森林の踏破者』の登録を抹消致します!支部長からも、皆様がお望みとあれば、直ぐに手続きをしても良いとの言葉を頂いておりますので、大丈夫です!」



「……まぁ、その辺はどうでも良いや。

 取り敢えず、コレから配送依頼(お使い)を出すから、ソレを確実に達成できるだけの信用が在る冒険者に依頼しておいて。ガメられたのが分かったら、そいつらだけじゃなくてこの支部も潰すからそのつもりで。

 あと、あの連中に次絡まれたらもう殺すけど、ソレは構わないよな?」



「…………は、はひぃ……!」




 思わず溢れ出ていた殺気に当てられたのか、名も知らぬ受付嬢は涙目になって必死に首を縦に振るのであった。






 ******






「…………なぁ、この鉱床で、既に掘り返した跡が在るって事は……」



「……そんな、あんな目にまで会ったのに……!?」



「…………引き返そう」



「……おい!?トッド、お前自分が何を言ってるのか分かってるのか!?」



「そうよ!?ここまでやって引き返すなんて……!!」



「じゃあ、どうするって言うつもりだ!?

 土の様子から、彼等がここで採掘してからそれなりに時間が経っている事くらい、お前達にも分かるだろう!?

 なら、もう追い付けない事くらいは理解出来るハズだ!!

 …………行き道みたいに、あちこち探し回ったりしなければ、今ならまだ日が落ちきるまでには街に戻れる。

 俺達の栄光は潰えた可能性が高いが、それでもこの森でまた夜営したいと言うのなら、俺は放置してでも戻るが、お前らはどうする……?」



「「………………」」





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― 新着の感想 ―
[良い点] 元使い魔との絆が泣かせるねぇ。こういうの弱いんだ。
[気になる点] もし余罪がなくて、有っても微罪だった場合は冒険者資格剥奪は再登録可能なのかな?その時はFからやり直しなのかな?永久追放に近い物なのだろうか? [一言] なんかしばらく遭難していた方が「…
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