読者リクエスト・愚か者達の末路
…………取り敢えず、リクエストが寄せられていたので、書いてみました。
………………みましたが、相当アレな内容となっております。
なので、腐ってる表現が苦手な方は、今回は飛ばす事をオススメ致します
人々に悪意を持って襲い掛かる魔物が跋扈する世界にて、ソレを狩って日々の糧を得る冒険者。
そんな彼らは、得てして『人間』としての平均を大きく逸脱した力を持つ事を自覚しており、ソレを有事の際以外に於いては同じ『人間』に振るう事を『良し』とはしていない。
……が、星の数程に存在している冒険者の中には、自らが持つ破壊的な能力を『特別なモノ』だとして信奉し、ソレを授かった己こそが特別な存在である!と思い上がる者や、ソレを魔物に向けるよりも同じ『人間』に向けて振るう事の方が楽に糧を稼げる、そうした方が余程楽しい、と感じてしまう者が少なからず出現してしまっている。
そんな連中の大半は、実際に行動を起こして同じく破壊的な能力をもつ同輩達に排除されるか、もしくは世間へとその思想・思考が知れ渡る前に魔物に喰われてこの世を去る事になる。
しかし、中には運が良いのか悪いのか、相対した同輩が隔絶した実力を持っていたが為に落命せずに済んだ者や、冒険者ギルドや国と言った組織から『生かして捕まえろ』との指令が下されていたが為に生け捕りにされた、と言うパターンも少数ながら一定数存在しており、必然的にその手の輩を収容する先が必要とされる様になるのだ。
その際の対応は国によってマチマチであり、とある国では厳重な監視の元街一つを丸々使い、強制的に避妊処置を施してから内部に放って生活をさせていたり、とある国では純粋に危険な魔物の棲息域の内部に在る鉱山にて働かせたり、と言った具合に、その尊重具合や用途に於いても様々であった。
そんな中、彼のカンタレラ王国に於いては、単純に性別で振り分けた監獄に幽閉する、と言う手段を取っているのだが、その監獄には『とある噂話』がまことしやかに囁かれているらしい。
…………なんでも、その監獄、通称『グラジオラス監獄』では、一度囚人として入った者は、その者の意思に関わる事無く、二度と外には出てこれないのだ、と……。
そんな噂の立つ『グラジオラス監獄』に、今日も、新たな囚人がもたらされる……。
******
「…………そら、ここだ。大人しく、入っていろ!」
「「「「…………ぐっ!?」」」」
ドンッ!!!
『グラジオラス監獄』の一角、囚人達が押し込まれる監房へと、新しく四人の只人族の男が、背中を蹴り飛ばされる形で押し込まれた。
彼らは、揃いの囚人服に身を包み、その『イケメン』と評しても間違いでは無いであろう相貌を、蹴り飛ばされた苦痛や雑な扱いを受けた憤り等にて歪めながら、看守に対して口々に悪態を吐いて行く。
「……貴様!貴様の様なクズに、この様な扱いをされなければならない覚えは我々には無いぞ!!」
「そうだ!お前、俺達を『新緑の光』だと知っての事だろうな!?」
「…………俺達がここに居るのは、ある種の手違いだ。直ぐにこんな場所おさらばしてやる。
その時に、自分が何をしたのか思い出して後悔しても、もう遅いぞ?」
「それとも、今この場で消し炭にされるのがお好みなのかなぁ?
君程度を消すのも簡単だし、消した処でソレを揉み消すのだって簡単なことなんだけどなぁ?」
そうして、口々に看守に対して恐喝とも取れる悪態を吐いて行く彼らだったが、そんな事なぞ知った事ではない、と言わんばかりの態度と、呆れを多大に含んだ表情にて無情に告げながら扉に鍵を掛けて行く。
「…………残念だったな。お前らが何処の誰で、元々どんなランクに在ったとしても、ここでは一切関係無いんだよ。
それに、お前ら程度の十把一絡げなパーティーの名前なんぞ、一々覚えちゃいないし知りもしないよ。
ついでに言えば、ここに居る時点でお前らはもう出れないし、その腕に付けられてる『スキル封じの腕輪』が在る時点でもう魔法もスキルも使えなくされてるのに、どうやって俺を消し炭にするつもりだ?
……これは、親切心からの忠告だが、あんまり外の感覚を引き摺るのは良くないぞ?さっさと外の事は忘れて中の環境に慣れる事を、オススメするよ」
そう言って、若干の憐れみと共に視線を切ると、看守はさっさと通って来た通路を使ってその場から移動してしまう。
ソレを黙って見送る程に達観しているハズも無い四人は、まるで動物園の猿の様にギャイギャイと喚きながら錠の掛けられた鉄格子を蹴り飛ばしたり揺らしたりしていたが、当然その程度で外れたりするハズもなく、ただただ体力を消耗するだけであった、と悟るのにそこまで長い時間が掛かる事は無かった。
騒ぐ事に疲れはて、その場で座り込んでしまう『新緑の光』の四人。
しかし、未だにその瞳には意地汚くも意思の力が満ちており、どうにかしてこの監獄から脱走してやろう、と考えているのが容易に見て取れる様であった。
そんな彼らへと、唐突に同じ監房の奥側から声が掛けられる。
「…………よう、新入り共。随分と威勢が良いのは結構だが、あんまり派手にはしゃぐと、ヤバい連中に目を付けられる事になるぞ?
まぁ、そうなったとしても、結局は自業自得ってヤツだろうけど、な」
「誰だ!?」
半ば反射的に振り返り、誰何の声を挙げるブレット。
その声に釣られる様にして、監房の奥の暗がりから複数の人影が鉄格子の近くまで歩み出てくる。
総数にして七人の只人族と魔人族によって混成されたその集団は、若干一名がやや内股気味となってはいるが、ソレ以外は基本的に体格もまだ確りとしており、瞳にも活力が満ちている為に、まだ収監されてからあまり日が経っていないのであろう事が予想出来る。
しかし、ソレにしては反骨精神の様なモノは薄れており、何かを恐れているのか頻りに周囲へと視線を走らせ、若干ながらも背後へと強い警戒心を抱いているらしく、常に壁を背にしながら彼らへと声を掛けて来たのであろう、リーダーと思わしき只人族が一歩前に出て来た。
「そう警戒しなくとも、俺達は何もしやしねぇよ。俺達は、な……。
ただ単に、お節介な親切心から、一つ忠告してやろうかと思っていただけさ。ソレ以上でも、ソレ以下でもねぇよ」
「…………忠告、だと……?
そんな事をされねばならない筋合いは、我々には存在していない!そもそも、何処ぞの誰とも知れぬ貴様の言葉等、我々が聞き入れなければならない理由は存在していな「…………アッーーーーーーーー!!!♥️」……い………………?」
唐突に他の監房から響いて来た男の咆哮と呼んでも良いであろう叫びに、ブレットの言葉が尻すぼみとなって途切れてしまう。
それは、声色からして屈強な男であるのだろう誰かが、そこまでの悲鳴を挙げる程の責め苦を受けさせられている、と言う事もそうなのだか、彼が戸惑いから言葉を切った理由は全く別のモノから来ていた。
…………そう、その『戸惑い』の正体とは、その叫び声自体が嫌がっている様子がそこまで無い事と、苦鳴として漏らされたモノであるハズなのに、少なくない喜悦の色が感じ取れたからだ。
多少の好奇心と共に、多大なる恐怖心と絶大なる嫌な予感を抱いたブレットが、先程から『忠告』しようとしていた男の方へと向き直り、視線にて続きを促す。
まるで、今自らが声を出せば先程の叫びの主と同じ様にされる、と言わんばかりの様子を死んだ魚の目で見ていた彼は、少し前の様子とは打って変わって疲れきった様な空気を纏いながら口を開く。
「……もう察して貰えているとは思うが、俺がくれてやろうとしていた『忠告』って言うのはアレに関してさ。
何、そんなに難しい話じゃねぇさ。
兎に角、ひたすらに『目立つな』。
ソレさえ守っていれば、自称『次世代の英雄候補筆頭』とか抜かしていた割にやってた事が女絡みばかりで、入ってきて早々に連中の『オモチャ』にされたって話のヤツよりゃましな余生を過ごせるだろうよ」
「……なん、だと……!?その様な人物までもが、この様な環境に落とし込まれている、と言う事なのか……!?
…………我々に対しての行動と言い、真なる神の教えを軽んじる姿勢と言い、やはりこの国は間違っている!
早急に脱出し、この国の腐敗を糾弾せねば!それが、教会に所属する我々の使命である!!」
「………………あ~あ、やっちまった。
人が折角親切に教えてやったって言うのに、そんな大声で叫びやがって。
……この監獄じゃあな、女を食い物にしてやがった連中と、クソッタレな宗教家は優先的に『可愛がられる』事になるんだとよ。
お前らがどんな事して誰にぶちこまれたのかは知らねぇが、生きてここに来た事を後悔するか、もしくは新しい扉開いて適応するか、好きな方を選ぶと良いさ……」
そう言い残し、再び奥の暗がりへとその姿を隠してしまう七人組。
そのメンバー達のほぼ全員は憐れむ様な視線を投げ掛けていたが、その内の一人は何故か羨む様な視線にて彼らを一瞥し、来た時と同じ様に若干内股になりながら歩み去って行く。
唐突に現れた彼らが、またしても唐突に去っていった事に困惑を深める『新緑の光』のメンバー達だったが、彼らが去っていったのとは別の方向から近付いて来る複数の気配と、まるで隠すつもりが無いらしい『雄』丸出しの雰囲気に、尋常ならざる相手である、との認識を瞬時に下し、表情を引き締めるのであった。
…………なお、この僅か数時間後、このグラジオラス監獄に響く声の中に、新しく野太い喘ぎ声が四つ追加される事となるのであった。
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泣く子も黙る『グラジオラス監獄』。
カンタレラ王国に於いて、罪を犯した冒険者や騎士、魔法使いと言った危険な力を持つ者達を収監する、一度入れば二度とは出てくる事が出来ない事で有名な、大監獄。
…………又の名を、腐臭漂う漢の花園。
『黒薔薇の咲き乱れる庭園』にして『一度嵌まれば二度と抜け出す事が叶わぬ底無し沼』と名高き、漢と漢が愛を語り合う地獄の二丁目である。
…………はたして、コレに対して需要は在るのだろうか……(遠い目をしながら嘔吐する作者)
一応、次回から次の章に移る予定です
お楽しみにして頂ければ幸いですm(_ _)m
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