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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』過去の因縁と遭遇する

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暗殺者、駆ける

 



「……さぁ、吐け。彼女は、セレンは、今、何処に居る!?」




 喉元を片手で吊り上げられるだけでなく、僅かに射し込む月光を反射する白刃がのど元に添えられた上に、絶対的な殺意と拒絶の意思を叩き付けられたシズカは、自らが気が付かない内に涙を流し、それまで感じた事の無い『リアルな恐怖』によって失禁していた。



 しかし、そんな彼女の様子に気が付いていながらも、それを特に気にする様子もなく、また彼女を労る様な素振りも見せる事も無く、ギリギリまで手に力を込めて指を喉へと食い込ませ、刃を肌が裂ける寸前まで押し込んでから再度問い掛ける。




「……もう二度とは聞かん。死にたくなければ、さっさと吐け。

 彼女は、セレンは、今何処に居る!?」



「……い゛、い゛い゛ま゛ず、い゛わぜでもら゛い゛ま゛ず!

 だがら、でを゛離じでっ……!?」




 突然手を離され、自らが作り出した汚ならしい水溜まりに尻餅を突くシズカ。


 しかし、そんな事を気にする余裕も無いらしく、直前まで締め付けられていた喉を抑えてしきりに咳き込みつつ、必死に空気を求めて喘ぎ声を出す。



 当然、アレスの方もそんなモノを聞いて興奮する様な性癖は持っていないし、また持っていたとしても確実に興醒めするであろう程に、涙と鼻水と涎とでぐちゃぐちゃな顔になっているシズカに対し、無言で切っ先を突き付け、視線にて『さっさと吐け』と促す。



 それに対し抗議する様な視線を向けるが、逆に返された怒濤の殺意と魔法を宿して赤熱を帯びた刃が自らへと迫りつつあった事により、即座に怯えの色が瞳を支配し、咳き込みながらも必死に言葉を紡いで行く。




「げほっ、げほっ!話しまず、話じまずから、その恐いの引っ込めで!お願いだがら!」



「それは、無茶な話だな。お前、自分が何をしたのか理解してないのか?

 それとも、実際に手足の一本でも落とされるか、もしくはご自慢の顔に醜い傷でも刻まれないと、その固くて重たい口は回らない様にでもなっているのか?あ?」



「ひっ!止めで!お願いだがら、いづもの優じい貴方に戻っで!!」



「…………はぁ、仕方無い。

 優しくしてやれば付け上がるなんて、今まで見ていれば分かる事だったろうに……」



 …………ザンッ!ジュッ!!



「…………え……?あれ?私の足、私の足は、何処……?

 …………あ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!?!?!?」




 何気ない様子にて振るわれた刃により、膝丈のスカートに包まれていた右足が、太腿の中程から断ち斬られ、刃に宿った赤熱によって断面を焼き焦がされて地面に転がる。



 突然の事態に理解が及んでいなかったのか、現実を受け入れられていない様な声を挙げていたシズカだが、遅れて来たらしい激痛によって獣の様な悲鳴を挙げて自らの作った水溜まりにてぬかるんだ地面を、切断された足の断面を抑えて転がり回る。



 激痛に襲われながらも必死に呪文を詠唱し、四肢の欠損を修復する上位の回復魔法を行使しようと試みる。


 が、それは断面にアレスが指を突き込んで掻き回す事で発せられた激痛により意識の集中が途絶え、呆気なく出来上がりかけていた魔法の構成が空気中に霧散して行く。




「……はい、残念。やるんなら、もっと素早く的確にやらないと。

 まぁ、でも、既に断面が焼かれたり回復したりで塞がってる場合、余程上手くやらないと欠損は回復してくれない、なんて事も知らなかったみたいだな?こんな、回復持ち相手に対しての常識すら知らないなんて、今まで何してやがったんだ?

 ……あぁ、別にその辺の事は興味ないから語らなくても良いぞ?俺が知りたいのは、一つだけだからな」



「…………あ、あぅ、あぁぁぁぁ……痛い、痛いよぉ……。

 なんで、なんでこんなに痛いの……?ここは、現実じゃないハズでしょう……!?それに、なんで!?なんで私の魅了が効いてないのよ!?」



「…………何を言ってるのか理解出来ないが、取り敢えず喋るつもりが無いって事は分かったよ。じゃあ、次は顔を潰して二目と見れない面に……」



「ま、まって!話す!話すから!!

 あのオバサンが連れ込まれた先でしょう!?なら、話すから、これ以上は止めて!!」



「…………なら、さっさと話せ。

 それと、次にセレンの事を侮辱してみろ。その喉潰して呪文詠唱出来なくしてから、魔物の巣に叩き込んでやるぞ?」



「……わ、分かったから!

 あのオバサ……聖女様が連れ込まれているのは、このアルカンターラに在る連れ込み宿の一つよ!でも、私は場所も建物の名前も知らないの!」



「……あ?おい、あんまりふざけた事抜かすなよ?

 まだ自分の命に価値があるとでも思ってるのか?俺にとっては、お前の汚ならしい首なんかとでは、セレンの貞操とは比べ物にならない程に後者の方が重いんだが、ソレを理解した上で言ってるんだよな?おい」



「……う、うぅ……そんな事言われたって、知らないものは知らないわよ……!精々、あいつらの性格から考えて、安宿は使わないだろうって程度しか私には言えないって!」



「…………はぁ、使えねぇ。マジで使えねぇ。こんな茶番に付き合わされる事になるんだったら、後が面倒になるから、って躊躇わずにさっさと始末しておくんだった……」



「……う、うぅ……酷い、酷いよぉ……なんでこんな事になるの……?

 私は、私の思う通りに出来る世界だから、そうやって振る舞って来ただけだって言うのに……!

 なのに、アレスはゲームの設定とは全然違う動きしかしてくれないし、わざわざ前作の悪役令嬢だったオバサンも追放させたって言うのに……!

 それに、なんで?なんで土壇場で私の魅了が効かなくなったのよ!?アレさえ無事に通っていれば、世界は私の思う通りに回っていたのに!!」



「……あ?また、訳の分からんことを喚いているみたいだが、一体何の妄想してやがる?痛みから逃れる為に、幻でも見てやがるのか?

 だが、魅了が効かなかった理由なら、答えてやれるぞ?とは言っても、その大部分はお前が迂闊であってくれたから、だけどな」



「………………え……?」




 アレスの予想外な言葉に、思わず、と言った風に言葉を溢すシズカ。


 しかし、そんな彼女の様子に気が付きながらも、ソレを構うこと無く無慈悲に続けて行くアレス。




「お前は気付いていなかったみたいだけど、お前が俺に掛けようとしていた、いや、掛けていた(・・・・・)魅了って、状態異常の一種だから、それと気が付いていれば普通に解除する事は出来るんだぞ?」



「……え!?ウソっ!?」



「…………お前、本当に気付いて無かったのか?

 じゃあ、同じ状態異常を食らい続けると、ソレに対しての耐性を獲得したりだとか、元々耐性系のスキルを持っていると、ソレが昇格して無効系のスキルに進化したりする事が在る、とかも知らないだろう?」



「……じゃ、じゃあ、もしかして依頼の道中で抜け出してたのも……!?」



「あぁ、その通りさ。毎回毎回、俺が自身に違和感を覚える度に、セレンに解除して貰ってたのさ。

 まぁ、流石に最後のアレは強烈過ぎたから、彼女に頼む事は出来なかったのが痛かったけど、な。

 んで、先回りして説明してやれば、最後のアレで俺の手持ちのスキルが『無効系』に進化したから欠片も効かなくなった、って訳だ。まぁ、そうならなくてもどうにか防げる様に、咄嗟に噛み砕ける様に細工した状態異常解除の為の薬も仕込んでおいたけど、そっちは無駄になったけどな。

 これで、疑問は晴れたか?」



「…………そ、そんなの……そんなの、私のソレよりよっぽどズル(チート)でしょう……。

 ……でも、良いの?私に長々と付き合って。今にも、貴方の大切なオバサンは、あいつら相手に腰振ってるかも知れないのよ?」



「…………まぁ、心配はしていない、とは言わんが、流石に他のメンバーも信じてるからな。

 それに、無いに越した事は無いが、例え彼女の身体が汚されていたとしても、彼女の心が俺から離れていなければ最悪それで構わんさ」



「…………は?」




 間の抜けたシズカの声に応える様で応えずに、アレスの視線が公園の出口へと向けられる。




「……俺があいつらなら、取り敢えず下手人と思わしき相手を辿れるだけのモノを、ソレを可能な相手に持たせて俺に合流させ、自分達は次点で怪しい場所を襲撃する、位の事はするし、あいつらも俺がそう予想する位は読んでいるだろうから…………ほら、来た」




 その視線の先には、鼻先が白く染まった見覚えの在る森林狼が佇んでおり、その首に締められた首輪には、小さな袋と音からして何か小さくて硬いモノが納められているのを察する事が出来たのであった。



次回、アレス間に合うか!?



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― 新着の感想 ―
[良い点] まぁ複数職経由で抵抗鍛えられるなら当然受けるだけでも抵抗上がるよね……
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