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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』過去の因縁と遭遇する

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『追放者達』、束の間の安息を過ごす

 


追放者達(アウトレイジ)』がメンバーであるタチアナの身柄を賭けて決闘を行った翌日。



 リーダーであるアレスと、メンバーの一人であるセレンの二人の姿は、アルカンターラの商業区画に存在していた。



 ただ単に日用品の買い出しに赴いたハズの二人の表情と顔色は何故か対称的で、アレスが何処かゲンナリとして青白くなっているのに対し、セレンは嬉しそうで楽しそうな表情と共に、血色が良く艶々とした張りの在る肌艶をしていた。


 そんな二人が並んで歩いていれば、『そう言う関係の男女』として見られる事も、また男女の絡みに於いてアレスに無理をさせ過ぎたのではないか?と言った下品なジョークを飛ばされる事も在ったのだが、事実としてはまだ(・・)二人はその様な関係性には至っていないが為に、見当違いなモノとなってしまっていたりする。



 ……では、何故そうなっているのかと言えば……。




「…………はぁ……しかし、幾ら半ば俺達で焚き付けた様なモノとは言え、まさか彼処まで変わると思っていなかったんだけどなぁ……」



「……ふふふっ、それは、タチアナさんとヒギンズ様のお二人の事ですよね?」



「……まさか、あの二人が付き合い始めたから、って言って、彼処まで四六時中デレデレイチャイチャし続けるバカップルに成り果てるなんて、思っても見なかったモノでしてね?

 流石に、少々充てられて食傷気味でして……」



「……まぁ、確かにアレは、男性のアレス様には少々重かったかも知れませんが、同性かつ友人から見れば、以前から想いを寄せられていた方と、漸くその想いを通ずる事が出来たのだから、とはしゃいでいる様が何とも可愛らしくて、ついつい見てしまうのですよねぇ……」



「女性って、本当にその手の話が大好きだよねぇ……」



「ふふふっ!女性が若々しく、美しく在る為の要素の一つですからね。そこは、諦めて頂くしか無いかと♪」




 相も変わらず楽しそうに語るセレンの姿に、思わずこちらでもゲンナリとするアレス。



 そんな様子ながらも、彼女から離れて一人買い出しに行く訳でもなく、二人揃って近すぎす、然りとて離れすぎる事も無い絶妙な距離感にて連れ立ちながらメモ書き片手に露店や商店を巡るその姿は、行く先々でからかわれ、いつぞやのドラゴン騒動の時から男性陣によって時折弄られている通りに、まるで付き合いたてなカップルか、もしくは新婚ホヤホヤな若夫婦の様にも見てとれていた。



 基本的に楽しそうに微笑みを浮かべ、特定の異性と近しい距離を保っている様子を見せていれば、否応なしに先々の店にて


『若くて綺麗な良い奥さんだね!』


 だの、


『じゃあ、美人な彼女さんに免じてオマケしとくよ!』


 だのと声を掛けられ、流石にその手の話が好物らしいセレンであっても、羞恥心等によって顔を赤らめてしまう。



 しかし、ソレでいてもアレスの隣から離れようとはしないが為に、より一層ソレっぽく見える様になっているらしく、そうやって声を掛けられる頻度はどんどんと高まって行き、最終的には買い出しの途中ながらも一旦脱出してほとぼりを冷ます、と言う選択肢を取る羽目になる。




「……ほら、ご注文の通りに買って来ましたよ、お姫様?」



「あら、ありがとうございます、従者さん?ふふふっ」




 商業区画の近くに在った公園のベンチで一休みするセレンの元へと、偶々近くに出ていた果実水(要はジュース)を買ってきたアレスが、彼女の分を手渡しながら腰掛ける。



 財布を出して果実水の代金を払おうとするセレンに対し、先に自分の分へと口を付けながら空いている方の手を振って不要だと示して見せるアレス。



 そして、使い捨てとして広く使用されている木製のカップに口を付ける。


 暫し、無言ながらも不思議と居心地の良い空間が二人の間で形成され、共有されていたのだが、何か覚悟を決めた様な表情と共にそれまでとは雰囲気を変えながらセレンが言葉を紡ぎ始める。




「…………些か唐突では在りますが、私は今のままでも十分だと思っておりました。

 共に在れ、互いに信頼を寄せ合い、些細な事であっても感謝を忘れず、敬意を持って相手と接する。

 そんな、当たり前なハズの関係で、私は満足できていると、そう思っていました……」



「………………」



「……ですが、先日の出来事を切っ掛けとして、交際を始められたタチアナさんとヒギンズ様の姿を目の当たりにした際に、私は思ってしまったのです。


 ……あぁ、羨ましいな。私も、あぁなりたいな……。


 そう、思ってしまったのです」



「…………セレン……」



「既に、私は想いを伝えた様なモノでした。

 それに、アレス様も、彼のドラゴンとの戦いにて、その心の内に秘めていたのであろう想いを吐露して下さいました。

 それが、故意的では無く、あくまでも無意識的な叫びであったのだろうとしても、です」



「…………あの、その……ソレに関しては、忘れて頂けると……誠に有難いのですが……?」



「……ですので、私としては、互いに想い合えていれば、ソレで良いと、互いの心地好い信頼と好意さえ在れば、ソレで良いと思っていたのです。

 ……ですが、先日名実共に交際を始められたお二人を見ていると、こうも思ってしまうのです。


 ……あぁ、何故私は、アレス様とあの様に、睦まじく過ごす事が出来ないのだろう、と……」



「…………つまり、あの二人みたいに、俺の膝に座ってみたり、俺の腕を枕にしてみたり、処構わず抱き合ってみたり、俺に『はい、あーん♥️』とやってみたかった、と言う事でしょうか?」



「わざとその辺はぼかしていたのですから、あまり直接的な表現は止めて下さいませんか!?事実ですけど!!」



「…………事実なのは否定しないんですね……」




 半ばからかいのつもりでアレスが口にした指摘に、顔を赤く染めつつ、手を握って振りながら反論するも、肝心の部分は否定していなかった為に羞恥心が爆発したらしく、耳処か首まで真っ赤に染めながら、顔を覆って俯いてしまう。



 そんな彼女の姿に若干の罪悪感を抱きながらも、何故か胸の奥から湧いてくる様な、それでいて全身がむず痒くなる様な不思議な感覚を覚えつつも、やっぱり一緒にいるならセレンが良い、と自然と認識し始めたアレスは、恐る恐る、と言った様子にて答えを確認する為に口を開く。




「…………つまり、あの二人みたいな事をしてみたいから、正式にお付き合いしませんか?ってお誘いをしている、って事で良いんですかね?」



「……………………その、大枠としましては……その、通り……です…………」




 絞り出す様にして返って来た、半ば予想通りなその言葉と俯いているにも関わらず、羞恥心と僅かながらも歓喜の感情が混じる言葉に、ソレまで感じた事の無い、いや、かつては確実に抱いていたハズの『ソレ』が、今の今までは無自覚に抱いていたらしいその感情が彼の胸の内で荒れ狂い、抑える間も無く収められていた場所から吹き出して彼へと突発的な衝動として襲い掛かる。



 一瞬だけ、アレスはソレに抗おうと試みる。


 しかし、ソレは如何ともし難い程に強烈で、理性としては『ソレは不味い!』と言う事を理解していながらも、半ば本能的なその衝動に突き動かされたアレスは、隣に腰掛けていたセレンの手を取って引き寄せ、そのまま自らの腕の中にその華奢なセレンの身体を抱き込んでしまう。



 突然の出来事に、目を白黒させたセレンが、半ば反射的にその弛くも逃がすつもりは欠片も無い拘束の中から逃れるべく身を捩るが、直ぐに自らを抱き締めている相手が誰なのかを思い出したのか、その身に感じられていた強張りが解け、おずおずとした様子ながらも徐々に体重を彼へと預けて行く。



 そんな、気を許した相手にしかしない事をされていると言う事実と、その腕の中に在る温もりと柔らかさに、爆発的に彼の胸の中に歓喜の感情が高まって行くと同時に、自覚した『愛しさ』が際限無く高まって行き、思わず彼女の美しく整った(おとがい)にソッと手を掛けるアレス。



 少し前まで教会に管理され、その手の経験をする事の無かった彼女であっても、現在は市勢にて見聞きする事や実際に友人がしている事を目の当たりにしている為に、その行為の意味を悟って無言のままに潤んだ瞳にて彼を見詰めてから瞼を下ろし、顔を上向け期待から鼓動を激しくしながら待ち受ける。



 ソレにより、否やは無い、と判断したアレスは、その赤く染まった瑞々しい二つの果実を啄むべく、自らの顔を傾けて近付けて行き――――――









 




「そこまでだ、不埒者め!!彼女を離せ!!!」






 そして、不粋な覗き見をしていた不審者の乱入を受ける事となってしまうのであった。




このらんにゅうしゃはいったいだれなんだー?(凄まじい棒読み)



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― 新着の感想 ―
[良い点] あ、量産型マルクズパーティーが来た。ゴールデンボール粉砕案件だ。 [一言] 最初からくる三組目までは前パーティーくるたびにバカップル成立しそう
[気になる点] 二番手(おそらくセレンの古巣)は実は最も厄介な相手だと思うのだが。パトロンが権力持ちだし、政治力もあるだろうから。 [一言] 正面から突っ掛かるより教会上層部に頼みこんで圧力をかけた方…
[気になる点] 別の人の感想・予想みて [一言] 古巣同士で同盟・紛争はまだ先かな?
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