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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』過去の因縁と遭遇する

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『追放者達』、愚か者達の心をへし折る

取り敢えず、コレで止めかな?


注※ちなみに、前話に於ける賭けの胴元はギルドが取っているので、ギルド側にもキッチリ利益が在ったりします

組織、怖いなぁ

 



「さて、こうしてお前の望み通りに顔を出してやった訳だが、あのギルドでのやり取りが『初めまして』だったハズで、ソレ以前は会った事も無かったハズだ。

 ソレで?お前は、何処の、誰で、誰から、何を、委譲された、だったっけか?んん??」




 わざとらしく、確実に答えを知った上で、悪魔もかくや、と言わんばかりに嗜虐心と悪意に満ちた真っ黒な笑みを浮かべながら、強制的に跪かされているネイザンへとノリノリで問い掛けるアレス。



 やはり、今回の一件は、彼としてもあまり面白いモノでは無かったらしく、そのストレスをぶつける先として選ばれたネイザン(イケニエ)は、ただただ震えながらどうにか反論を繰り出して行く。




「…………き、聞いてねぇぞ!?

 なんで、何で本物がこんな処に居やがるんだよ!?

 ここ最近は街でもあんまり見掛けないから、依頼を受けて遠征でもしてるんじゃなかったのかよ!?」



「は?なんの事よ?

 ……もしかして、俺達がパーティーハウスに籠ってた間に、そんな噂が流れてた、とか言う事か?」



「……ふむ?となると、その噂を聞き付けた阿呆が、上手い具合に入れ替わった、と見せ掛ける為にあの様な体言をしていた、と言う事であろうか?」



「……確かに、自信ありげに大声で主張する方の言葉は、思わず信じてしまいそうになってしまう事も多いと聞きます。

 それ故のあの態度であった、と言う事でしょうか?」



「まぁ、昔から悪知恵が回って、無駄に声だけは大きかったから、あり得なくも無いんじゃないかしら?

 もっとも、アタシ達の地元と化しつつあるこのアルカンターラで、何でソレで上手く行くと思っちゃったのかが理解出来ないけどさ?」



「……ぐっ……!?

 ……だ、だが!仮に、もし仮にこいつらが本物だったとしても、それがどうした!?

 そんな奴らを連れて、無理矢理かつ不正に決闘に勝利したんだ!こんなの、無効に決まってるだろうが!!」



「不正?何処が?」



「……ど、何処がって、そんなの全部に決まってるだろうが!?

 俺様達を騙して参戦しやがったんだ!神聖な決闘を汚されたんだから、無効に決まってるだろうが!!」



「騙した、と言う事は否定はしないが、しかし確認を取らなかったのはお前らだし、そもそも勝手に勘違いしたのもお前らだろう?

 それに、最初に言っただろう?俺達は、タチアナの『知り合い』だ、ってさ。仲間ではない、と言った覚えは欠片も無いぞ?」



「それを、意図的に言わなかったのだから騙したのと代わり無いだろうが!

 それに、当事者以外が口を挟んでくる事にも、俺様は納得行って無かったのだ!その賠償として、俺様達の即時の解放と、俺様達とクソアバズレのタチアナとで再度の決闘を申し込む!

 今度は、部外者無しで、だ!」



「…………馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけど、まさかここまで馬鹿だったとは思わなかったわよ……。

 そんな言い分が通るとでも、アタシ達にメリットが皆無な事を受けるとでも、本当に思ってる訳?」



「それに、『部外者』の定義によるのですが、この場に部外者はいないのですよ?」



「えぇ、そうなりますよね。

 何せ、私達は彼女の現在の仲間であり、十二分に身内と言えます。

 かと言って、私達を『部外者』と定義するのでしたら、ただの『かつての仲間』でしか無い貴方達にも参戦権は無くなると思うのですが……?」



「…………ぐっ……!?

 …………………そ、そうだ!俺様と、そこのタチアナは、かつて愛し合っていた間柄だ!だから、俺様には参戦権は在るし、アイツに片想いしていたこいつらにも在る!だが、ただのパーティーメンバーでしか無いテメェらにはソレが無い!どうだ!!」



「…………アンタ、妄想もいい加減にしておきなさいよ…………!!」




 何故か勝ち誇った様な顔にてそう告げるネイザンと、殺気も駄々漏れな状態で表情を消し、瞳に殺意の焔を灯したタチアナが対峙する。



 すると、それまで部屋にいながらも、何か難しい顔をしながら考え込んでいたヒギンズが、二人の間に割り込む様にして進み出て来た。




「……あのさぁ、一つ確認なんだけだ、さっきの君の理論だと、彼女と互いに想い合っている相手がいれば、その人は参加する権利が在る、って事で良いんだよねぇ?」



「……あ?それが、どうしたってんだよ?あぁ??

 確かに、そんなヤツが居やがるんなら参加させてやらんでも無いが、どんな野郎だったとしても、俺様の恋路に立ちはだかる間男って事になるんだ。手加減なんてしてやるつもりは更々ねぇぞ?

 もっとも、そんなヤツ、こんなクソアバズレに居やがるハズがねぇだろうがよ!?」



「……成る程、それが聞けたのなら、オジサンは満足だよ」




 そう言って言葉を切ったヒギンズは、そのまま振り返って背後にいたタチアナへと向き直る。



 その眼差しと表情は、普段の飄々として草臥れた中年のソレでは無く、一人の男として、一人の『雄』としての、何処が『餓え』に似た様な激情を奥に秘めたモノとなっていた。




 そんな、今迄に見たことの無い『男』としての顔を見せてきてヒギンズに、思わず心臓の鼓動を早めて僅かに顔を赤らめるタチアナへと向けて、真剣な様子にてヒギンズが口を開く。





「……タチアナちゃん、いや、タチアナさん。

 オジサンと、()と、真剣なお付き合いして頂けませんか?」





 突如として落とされた爆弾発言に、部外者であったシーラは目を丸くしながら白黒させ、発言の元となったネイザンは絶句し、思わず部屋の内部の空気が凍り付く。



 が、しかし、当の『追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達は何かしら感付いていたらしく、特に言及する事も無しに生暖かな視線を無言のままに二人へと注いで行く。



 そんな、無言の空間に耐えきれなかったのか、突如としての意中の相手からの告白と、シチュエーションから察せられる最悪のパターンとの合間にて葛藤しながら口を開く。




「…………その、そう言って貰えると、正直アタシは嬉しいよ?

 気付いて無かっただろうけど、アタシもオジサンの事は、その…………す、すすすすすすすすす、す……き、だったし?

 …………でも、だから、だからこそ、さっきのあの馬鹿野郎の口車に乗って参戦する為の口実に、って言う事なら、悪いけど断らせて貰うわね。

 ……流石に、流石にね?アタシも女だからさ?好きな相手からだったとしても、そんな事で告白されたとしたのなら、悲しくて泣けて来ちゃうから、さ?」



「…………えぇっと、タチアナちゃん?君は、二つ程勘違いしてるみたいだから、そこだけは訂正させてくれないかなぁ?」



「…………勘違い……?」




 それまでの悲しそうな表情に、怪訝そうな色を滲ませるタチアナ。


 そんな彼女へと、救済とも止めの一撃とも取れない言葉をヒギンズは連ねて行く。




「……まず、一つ目の勘違いだけどね?

 君は、自分の気持ちを隠せていたつもりみたいだけど、実は少し前からオジサンはその事に気が付いていたんだ」



「………………ゑ……?」



「うん、そう言いたくなる気持ちは理解出来るけど、割りと分かりやすかったよ?さっきも、ソレっぽい事を口走っていたし。

 多分、皆も分かってたんじゃないのかなぁ?」




 バッ!!と音が聞こえて来そうな程の勢いにて、他のメンバー達へと視線を向けるタチアナ。


 向けられた瞳の中には、ある種の懇願する様な色が垣間見えたが、ソレに考慮も遠慮もする事は無く、無慈悲な断罪の一撃を下して来る。




「「「「ぶっちゃけ、結構分かり易かった(です)(なのです)」」」」




「……い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?!?」




 思わず悲鳴を挙げて顔を隠すタチアナ。



 そんな彼女を、包み込む様にフワリと抱き締めながら、その頭を優しく軽く落ち着かせる様に撫でて行くヒギンズが、最も重要な部分を続ける為に口を開く。




「……それでね?勘違いの二つ目だけど、オジサンは別段君の手助けをしたいが為だとか、傍迷惑な粘着男から助ける為だとかで告白した訳じゃないからね?

 オジサンも男だからさ?そう言う、正義感とかだけで行動できる程に若くも無いし、羞恥心も持ち合わせていない訳じゃないからね?

 それに、オジサンだって、好きになっちゃった相手以外に、こんな事する程に節操無しじゃないつもりだから、ねぇ……」



「…………め、珍しく、赤くなってるじゃない……」



「……そりゃあ、ねぇ?産まれて初めての告白ですから、オジサンでも赤くもなるよぉ。

 それで、どうかな?こんな、草臥れた中年でも、大分歳が離れていても、オジサンの、俺の恋人になって、くれますか……?」



「……っ!……はい!喜んで!!」




 顔を赤らめながらタチアナを抱き締めていたヒギンズへと、涙を流しながら抱き付き返すタチアナ。


 その顔は、それまでの憂いが尽く無くなったかの様に晴々としており、うら若き乙女が浮かべる笑顔はとても魅力に満ち溢れるモノとなっていた。



 ソレに見惚れたからか、思わず、と言った風に手を伸ばそうとしたネイザンだったが、その喉元に自然に添えられた白刃によって現実へと引き戻され、一気に額から冷や汗を垂れ流して行く。




「……見ての通り、やっと二人が結ばれる事になったんだ。あんまり、不粋な事はしてくれるなよ。な?

 もし、万が一、これ以上あの二人の邪魔してくれるつもりなら、俺としても仲間で友人の二人を守るために、手段を選んでられなくなるから、さ?

 監獄だろうと、鉱山だろうと、生きていたかったらこれ以上関わってくれるなよ。な?」




 そうして囁かれたアレスの言葉と、一切の温かみが消え失せている瞳によって彼の本気度を悟ったらしいネイザンは、今度こそ本当に心が折られたらしく、青ざめた顔色にて瞳から光を喪いながら、力無く頷きを返す。




 こうして、『支援術士タチアナ』の因縁は、めでたくもこの場を持って絶ち斬られたのであった。





この後『闇を裂く刃』が表舞台にてその名を響かせる事は二度と無かったとか……


面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価等にて応援して頂けると励みになりますのでよろしくお願い致しますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ドラゴンの強さですが野良竜(撃退した紅竜より格下)はAランクPT(冒険者)でも苦戦する強さなのでしょうか?もし騙って「追放者達」が来なくて野良竜と同等の物の討伐依頼がきたらトンズラーだ…
[良い点] やだ……おっちゃんがイケメン……。 [一言] 『(鉱山の)闇を裂く(ツルハシの)刃』 良き良き。
[気になる点] もし行き先が同じならプリズンブレイクやりそうな気がする。この一件で多少なりとも慎重さを身に付けていなければ。 [一言] そういった悪巧みを企てないように同じ場所には送るとは思えないが。…
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