75 最強のドラゴン 2
山頂に到着した。
山頂は少し開けており、世界樹を植えるには適してそうだ。
しかし、山頂の中央部に巨大な灰色のドラゴンが寝ころんでいた。
周囲には、ビッグボンバーロックがゴロゴロいる。
「ビッグボンバーロックの隣で、平然と寝るなんて、やっぱりヤバいドラゴンだニャ」
「うむ、これは危険だぞ」
「じゃあ、みんなは隠れていて、私が声を掛けるからね」
私は緊張しながら、灰色のドラゴンに近付いた。
とりあえず、声を掛けてみる。
「こ、こんにちは・・・お休みのところ、失礼しますが、少しお話を聞いてもらっても、よろしいですか?」
眠そうな目で、灰色のドラゴンがこちらを見てくる。
そして、叫んだ。
「に、人間!!何でここに!?も、もしかして・・・僕をいじめに来たの?」
何を言ってるんだ、コイツは?
「そ、そんなことはしませんよ。とりあえず、話だけでも・・・」
「そ、そうだ!!ここは威厳を示さないといけなかった。お、おい!!人間。すぐに立ち去れ!!そうしなければ、酷い目に遭わすぞ」
「まずは、話し合いを・・・」
「だったら、掛かって来い!!ドラゴンの恐ろしさを分からせてやる」
全く会話にならない。
ルージュが言っていたとおりだ。
私は、「鋼鉄化」のスキルを発動させ、びくびくしながら、ドラゴンの攻撃を待った。
しかし、攻撃は一向に飛んでこない。私とドラゴンは微動だにせず、睨み合いを続けていた。30分くらい、そうしていただろうか、堪りかねた私は言った。
「あのう・・・そちらから、攻撃されてはどうでしょうか?」
「えっ!?そ、それは・・・そっちが攻撃したら?」
「いえいえ、そちらからどうぞ」
「いや、そっちからしてよ」
微妙な雰囲気になってしまった。
これは困った。私には、攻撃手段が全くないのだ。聖女パンチという必殺技があるが、ドラゴン相手に通用する技ではない。かなり悩んだ末、ある作戦を思い付いた。
「それじゃあ、こちらから行きますよ」
私は、近くのボンバーロックを抱え込み、何発も聖女パンチを喰らわす。
10分くらい、殴り付けてたところ、真っ赤になって自爆モードになった。私はボンバーロックを抱えたまま、ドラゴンに突進した。
すぐにボンバーロックが爆発した。
土煙が収まり、確認すると、ドラゴンは無傷だった。
「そんな攻撃は効かないぞ。どんどん来い」
「そんなの、悪いですよ・・・今度はそちらからどうぞ」
ドラゴンは、どうしてか分からないが、かなり困っているようだった。
しばらくして、ドラゴンは、近くに転がっていたビッグボンバーロックを殴り付けて、爆発させた。大爆発が起きたが、私は無傷だった。
ドラゴンがびっくりしたように言う。
「この攻撃を防ぐとは、なかなかやるな。次はお前の番だ」
「えっ!?私は別にしなくてもいいんですが・・・」
「いや、順番は大切だ」
仕方なく、私はボンバーロックを爆発させた。
当然、結果は同じだ。
「それでは、今度はドラゴンさんの番ですよ」
「そ、そうだな・・・よし、仕方ない」
それからは、もう何をしているのか、分からなくなってしまった。
私とドラゴンで、順番にボンバーロックやビッグボンバーロックを爆発させているだけだった。
「もう止めませんか?とりあえず、話し合いを・・・」
「話し合いは苦手なんだ・・・怖いし・・・」
もう訳が分からない。
そんな時、ルージュが私とドラゴンの間に入った。子犬サイズから通常の大きさに戻っている。
「フェルスよ。何をしておる!!妾を倒したお前が、何という有様じゃ!?」
おい、ルージュ!!
アンタは、どっちの味方なんだよ!!
「えっ!?ルージュ?何でこんな所に?」
「それは、こっちのセリフじゃ。妾は、こちらのアオイの騎竜となっておるのじゃ」
「そ、そうなんだ・・・それで、僕をどうしようというんだよ?」
「何もせん。ここを調査に来ただけじゃ」
「そうなんだ・・・だったら帰ってよ」
何とか会話はできそうだった。
そんな時、ルージュのお腹が激しく鳴った。
「緊張したら、腹が減った。アオイよ、とりあえず食事にしよう。話し合いなら、食べながらでもできるぞ」
「ちょっと、ルージュ」
「うるさい!!妾は腹が減ったのじゃ」
聞いてくれなかった。
仕方なく、食事の準備をする。保存用の食材で、料理を始めることになった。鍋に入れて、火にかけるだけだけどね。
しばらくして、いい匂いが漂う。
フェルスも、料理には興味を示していた。
「フェルスも食べたいじゃろう?早く小さくなれ。そうすれば、いっぱい食べられるぞ」
「小さくなっても、いじめない?」
「そんなことはせん。早く、小さくなれ」
子犬サイズとなったフェルスとルージュ、一心不乱に料理を食べている。
ミウが言う。
「一体、私たちは何をしているんだニャ?」
「訳が分からん。アオイとドラゴンがボンバーロックを爆発させ、今は一緒に料理を食べている・・・」
私だって、意味が分からない。
料理を食べ終えたので、話をしようとしたところ、ルージュもフェルスも寝てしまった。
「どうしようか?寝ちゃったし・・・起きるまで待つしかないわね」
私たちは、途方に暮れていた。
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