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鋼鉄の聖女~勇者召喚されたOLですが、不遇なジョブの所為で追放処分を受けました。でも実は、私のジョブは最強のようで、いつの間にか無双しちゃってます。  作者: 楊楊
第四章 鋼鉄の聖女教団

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55 町が凄いことに・・・

 あれからしばらく経つが、まだエルフの女王ご一行は、帰っていない。

 というのも、小国家群に属する都市の代表や王族などが、ひっきりなしにシュルト山にやって来て、女王に面会を求めて来たから、帰るに帰れなくなった。


「我も忙しい身だが、2年くらいなら、ここに居てもいいぞ」


 長命種のエルフならではの発想だ。


 都市の代表や王族との面談には、必ず私が同席することになった。

 なので、私は初めて会う偉い人に愛想を振りまく。私も女王も難しい話は分からないので、アンさんが交渉をまとめている。


「なるほど・・・そちらの特産品はワインですか・・・だったらこういうのはどうでしょうか?

 ワインを飲みながらの対談記事を「月刊鋼鉄の聖女団」に掲載いたします。かなりの宣伝効果があると思われます。まあ、こちらとしても、少しばかりの広告費を出していただければ有難いのですが・・・」


「もちろんだ。何なら、そちらの聖女グッズや「聖女アオイ伝説」を100セット買ってやろう。それでだが、少しでもいいからエリクサーを融通してくれないか?」


「ただ、あまりお安くはできませんよ。数に限りがありますし・・・」


 そんな話が続く。

 アンさんは記者ではなく、こういった仕事をしたほうがいいと思ってしまうくらいに交渉が上手い。

 一方、本業のほうは、訂正記事や謝罪記事が度々掲載される。

 例を挙げると、ダクラとエレノアが男を取り合った話で、二人が子供の頃にダクラが父親に対して、「大きくなったら、お父様と結婚する」と言ったの聞いたエレノアが、「だったら私がダクラのお父様と結婚する」と言った、微笑ましい子供の頃のエピソードを大きく改変したものだった。

 当然、ブチキレたダクラとエレノアに折檻され、謝罪記事が掲載されていた。


 女王との面談は1日に1組しか行われない。

 聞いたところ、特に理由はないそうだが、エルフ自体がのんびりした性格をしていることが、大きいようだ。1日に5組でもやれば、すぐに帰還できるのにと思ってしまう。


 なので、何日も面会を待っている国や都市の代表者たちは、勝手に自分たちだけで会談をするようになっていた。そして、変な建物が建設されることになった。

 その名も「小国家群連合本部」だ。


 小国家群は、その名の通り小国と都市が寄り集まった集合体だ。

 互いの利益の為にまとまっているのみで、統合した組織はなかったのだが、この際統合した組織を作ろうという話になって、この地に「小国家群連合本部」を作ってしまったようだ。まあ、家賃収入が入るから、こちらとしては別にいいんだけどね。


 私はというと、訓練の合間に晩餐会に出席したり、町の観光案内をしている。

 これで給料が貰えると思うと、別に文句はないのだが、最近できた「聖女館」を案内するのは、少し気が引ける。一番目立つエントランスには、討伐したドラゴンの巨大な剥製が展示されているし、私とミウとダクラのグッズも売られている。


 そのグッズも問題だ。

「聖女アオイ伝説」はアンさんが、これでもかというくらい脚色した話の数々が綴られている。恥ずかしさを通り越して、青ざめるレベルだ。



 今も獣王国のレーヴェ王子に「聖女館」を案内している。

 獣王国のレーヴェ王子は、ライオンっぽい顔をしていて、ミウが言うに獅子族らしい。獅子族はプライドが高く、武力こそすべてと思っている節があり、扱いには十分に注意するようにアンさんから注意されていた。怒らせないように注意しながら、案内をしていく。


 そんなレーヴェ王子でも、エントランスのドラゴンの剥製を見て、驚愕していた。


「聖女殿、討伐の話を詳しく聞かせてほしい」

「殿下、こちらの「聖女アオイ伝説」を購入いただけますと、詳しく状況が・・・」

「うるさい!!我は、聖女殿から直接聞きたいのだ!!」


 空気の読めないアンさんは、レーヴェ王子を怒らせてしまった。

 アンタが、怒らすなって注意したよね!?


 仕方なく、私はドラゴン討伐の話を始める。


「・・・このように私が「神の加護」で攻撃を受け止め、ダクラが上手くサポートしながら、最後はミウの魔法で、とどめを刺したのです」


 レーヴェ王子とそのお付きの者たちは、私の話に聞き入っていた。

 そして、レーヴェ王子が言う。


「我は感動したぞ。我ら獣人のために身の危険も顧みず、立ち上がってくれた聖女殿には、最大限の感謝を。もちろん、ダクラ殿にもだ。そしてミウ殿。貴殿は獣人の誇りだ。猫人族は、我ら獅子族と先祖が同じだと言われている・・・」


 そういえば、同じネコ科だ。


「近接戦闘が得意な者の子孫が獅子族となり、魔力が高い者の子孫が猫人族になったとも言われている。我は思うのだ。獅子族と猫人族が手を取り合えば、最強になれると・・・ミウ殿、結婚してほしい」


 あまりにも、予想外の展開に一同が騒然となる。

 当のミウはというと・・・


「ちょ、ちょっといきなり何を言っているのニャ!!今日、会ったばかりニャ」

「それはそうだが、我はミウ殿に惚れたのだ。その美しい尻尾、耳、獅子族にもそうはいない」

「で、でも・・・困ったニャ・・・」


 困惑して、私に助けを求めてくる。


「レーヴェ王子、いきなりは厳しいと思います。まずは食事でも・・・」

「そうだな。あまりのミウ殿の美しさに、我を忘れていた。まずは、食事でもしながら、今後について話そう」

「そうだニャ・・・食事くらいなら・・・」


 ミウには悪いが、犠牲になってもらった。


 ミウとレーヴェ王子が食事をしている間にレーヴェ王子のお付きの騎士が説明に来てくれた。


「流石にこの場で結婚は決められません。獣王様の許可を得ないと・・・」

「それもそうですよね」

「申し訳ありませんが、すぐに結婚はできないと思います。殿下の気持ちに嘘はないと思うのですが、それでも、立場がありますので・・・」


 まあ、急にミウを連れて帰ると言われても困るしね。

 ところで、ミウはというと満更でもなさそうだった。


「まあ、もう一回くらいはデートをしてやってもいいニャ」


 何とか上手くまとまった。


 アンさんはというと、王子ではなく、お付きの者たちにグッズを販売していた。本当に逞しい。


「どうですか?こちらの人形は?」


「素晴らしいな。聖女殿が生贄となるため、猫耳と尻尾をつけたものだな?」

「獣人のためにそこまでしてくれるなんて、感動する」

「あるだけ、買って帰ろう」


「お買い上げ、ありがとうございます」


 私は複雑な気分になったけどね。

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