53 感動の再会
仕事を終えたリリィがやって来た。
「お祖母様!!」
「リリィ、元気そうで、何よりだ・・・」
女王はこれまでのことを説明し、感謝と謝意を伝えた。
「私も悪かったんです。弓も魔法もそれほど得意ではないことに、卑屈になってしまって・・・エルフの里に居てもお荷物になるだけだと思ったんです」
「そんなことはないぞ。いつでも戻って来るがいい」
「ありがとうございます」
一緒に来ていたエレノアも続く。
「リリィ、本当にごめん。もっと丁寧に弓や魔法を教えてあげればよかった・・・」
「気にしないで、エレノアお姉様・・・色々あったけど、私はエルフの里を出てよかったと思っているのよ。ここに来て、私は自分の居場所を見付けた気がしたわ。中途半端な回復魔法と弓の腕でも、やり方次第では、活躍できるってね」
「こっそり見させてもらったわ。みんなから尊敬され、頑張っているリリィを誇りに思うわ。混ざりものだとか言って、本当にごめんね」
エレノアとリリィも和解したようだ。
「お祖母様、エレノアお姉様、私が今あるのはお二人のお蔭です。本当に感謝しています。そして、聖女アオイ様にも感謝を。私に生きる道を示してくださいました。まさに光のような存在です」
「そうだな。リリィにもう一度会えたのも、アオイ殿のお蔭だ。礼をしたいのだが、どうすればいい?」
そういえば、細かい報酬の話をしていないことに気付いた。
どうしたらいんだ?急遽のことで、契約書も作ってない。こういうのはもめる元だ。高すぎても怒るだろうし、安すぎてもプライドを傷付けてしまう。
「そういえば、きちんと契約していなかったニャ」
「そうだな・・・どうすればいいんだ?」
ノーリが言う。
「だったら、アンさんに任せるッス。こういう交渉事を担当してくれているッス」
かなり嫌な予感がしたが、それでも自分たちで煩わしい交渉をするよりはマシだと思い、密着取材と称して、勝手について来ていたアンさんに交渉をお願いした。
その日はアンさんと女王は顔合わせしただけで、詳しい話は明日以降ということになり、私たちは温泉に入ることになった。温泉もグレードアップしていて、サウナや薬草風呂みたいなのもあった。因みに薬草風呂に使う薬草は、トールが取ってきたものだという。
みんなそれぞれ活躍しているようだった。
★★★
次の日、報酬が決定した。
今回は、女王からは金銭的な報酬は貰わないことになった。その代わり、エリクサーやポーションを安く卸してくれる契約を結んでもらった。エルフは代々、世界樹を管理していて、世界樹の葉や実から良質の魔法薬が作れるらしく、かなりの値打ち物のようだった。
それと、女王からの要求も呑んだ。
「実は若いエルフの何人かをこちらで修業させてほしいのだ。エルフも変わらなくてはならん時期にきておる。エレノアの希望でもあるしな」
「そうね。他種族からも学ぶことは多いと分かったからね。聖女さん、よろしくね」
これを聞いたダクラの弟であるダクルも、ここに残ることになった。
「まずは、姉上のような立派な冒険者になってみせます。将来、族長となる身ですから、こういった経験は、きっと役に立つと思います」
またまた、団員が増えてしまった。
それも戦闘力の高いエルフとダークエルフだ。因みに「鋼鉄の聖女団エルフ隊」として活動するらしい。
私たちが金銭的な報酬を貰わなかったのには、訳がある。
というのも、私たちはなにもしなくても、毎月十分な額の給料が支給されることになっているからだ。
これに気を良くしたミウとダクラは、アンさんに心を許してしまった。
「迷惑な奴だと思っていたけど、なかなかやるニャ」
「ああ、思ったよりも使えるな」
「ありがとうございます。よろしければ、お二人にもインタビューをしたいのですが、可能でしょうか?ドラゴン討伐の話やエルフの試練について、詳しく教えてください。お食事をしながらでもと思っています」
「そこまで言うなら、話してやるニャ」
「大したことはしていないが、それでよければ話してやる」
2週間後、アンさんが驚きの雑誌を持ってやって来た。
その名も「月刊鋼鉄の聖女団」だ。内容を確認する。特集記事として、ドラゴンの討伐とエルフの試練が掲載され、リリィと女王の感動の再会の記事も掲載されていた。
ただ、内容が盛りに盛られていた。
「そんな臭いセリフ、言っていないニャ!!」
「流石にこれは恥ずかしすぎる・・・私とエレノアが男を取り合ったことになっている」
やはり、アンさんは反省したとはいえ、記事の盛り癖は治っていなかった。
抗議しようにも、アンさんは忙しく捕まらない。
だったら、「社長を出せ!!」と出版社に怒鳴り込んでやろうと思ったが、出版元を確認すると、何と「鋼鉄の聖女団」となっていた。となると代表者は私だ。私が私を怒鳴ることになる。
途方に暮れた私は、癒しを求め、「聖女の癒し館」に向かうのだった。
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