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鋼鉄の聖女~勇者召喚されたOLですが、不遇なジョブの所為で追放処分を受けました。でも実は、私のジョブは最強のようで、いつの間にか無双しちゃってます。  作者: 楊楊
第三章 ミウの秘密、ダクラの過去

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50 幕間 聖女の憂鬱 3

 ~聖女クルミ視点~


 私がザマーズ王国から移籍した教会も碌な組織ではなかった。

 教会の正式名称はレイア教会で、この世界を作った唯一絶対神レイアを信仰している。総本山は聖なる山とされているレイア山にあり、信者の数もそうだが、独自の騎士団や諜報部隊があり、かなりの戦力を持っている。小国など、太刀打ちできないレベルだ。


 レイア教会には、二つの顔がある。表の顔と裏の顔だ。

 表では、世界平和を説きながら、裏では非人道的な活動もしている。幸い私は、聖女として表の活動に従事している。ほとんどが慈善活動や治療院での治療だ。多くの人に感謝され、それなりに満足しているが、それでも、何かすっきりしない。


 ザマーズ王国でお世話になった神父さんが、総本山を訪れたことがあったので、少し相談をした。


「私も若い頃、クルミ様と同じことで悩んでいた時期がありました。でも、ある時から、こう思うようにしたのです。今できることを精一杯やろうとね。自分のやっていることが、偽善に思えるかもしれません。しかし、その偽善でも多くの人が救われているのは確かです」


 少し気持ちが軽くなった気がした。

 実際、多くの人から感謝されるし、多くの人を救ったと思う。


「だから、今は実力をつけ、自分に賛同してくれる人を集めるのです。そして、この教会が正しい道に進めるようにしてはどうでしょうか?すぐには実行できないかもしれませんが、それでもクルミ様と同じような考えを持っている者も大勢いるのです。私もその一人ですよ」


「ありがとうございます。頑張りますね」


「時間は掛かるかもしれませんが、クルミ様ならきっと、できますよ」


 その日から、以前よりも少し頑張るようになった。

 多くの人に回復魔法を掛けたり、気乗りはしないけど、戦闘訓練にも参加するようになった。戦闘訓練を始めたのは、戦闘力も必要だと思ったからだ。各国が教会の意向に強く反対しないのも、強力な神聖騎士団を持っていることが大きい。神の教えだけで、従ってくれたら誰も苦労しないからね。



 ★★★


「聖女」というジョブのお蔭か、私の努力が実ったのかは分からないが、私は高位の回復魔法も使えるようになった。具体的には、部位の欠損も治せるようになった。これには、教会の上層部は大喜びだった。王族や貴族から、法外な治療費を巻き上げることができるからだ。


 部位欠損を治す回復魔法は、かなりの魔力を消費する。

 だから、1回使うとその日は魔法を使えなくなってしまう。最近では、治療院で貧しい人たちを治療することは、めっきり減ってしまった。

 それでも、部位欠損を治した人は、これまでにないくらい、喜んでくれる。王族や貴族ともコネができた。それが何になるのかは分からないが、今自分にできることは、これだと思い、上層部の指示に従う。

 だって、一般の怪我の治療は、経験を積んだ回復術師ならある程度治療できるけど、部位欠損は私くらいしか治せないしね。だから、今後は魔力を高め、1日に何度も使えるようにしていこうと思っている。


 でも、少し苦手な活動もある。

 それは信者を前に有難い話をすることだ。少し前まで、普通の高校生だった私には、荷が重すぎる。

 上層部から渡された原稿を必死で丸暗記して、それを信者の前で話す。だから、あまり評判はよくない。私の話になると、寝ている信者も多くいる。


 少し、学校の先生が寝ている生徒を怒る理由も分かった。私だって、腹が立つ。一生懸命に暗記したんだからね。


 ★★★


 慰問活動として、ライダース帝国を訪れた時、宿泊場所で上層部が話しているのを聞いてしまった。

 最近、上層部は私に気を許しているようで、情報管理が甘くなっているように思う。


「おい、聞いたか?新しい聖女が誕生したのを」

「ああ・・・今回は厄介だな・・・クルミ様よりもカリスマ性があるらしいぞ」

「そうだな。それに話も上手いらしい。クルミ様は少し話が下手だからな、一生懸命にやってはいるが・・・」


 どうせ、私は話が下手ですよ。

 普通に話すだけでも、緊張するのに、大勢の前でのスピーチなんて・・・これでも頑張ってるんだからね。


「それもそうだが、冒険者も抱き込んでいるようだ。今までの聖女とは一味違うぞ。もしかしたら、本気で我らとやり合おうとしているのかもしれん」

「冒険者だけでなく、亜人や獣人の信者も多いようだ。亜人や獣人は、我が教会に恨みを持っている者が多いからな」


 そんな話をしているところに、教会ではかなりの権力を持っているレオニダス枢機卿が現れた。

 レオニダス枢機卿は、次期教皇の座を狙っているし、裏の仕事を取り仕切っている。話をしていた二人が、急に畏まる。


「畏まらなくていい。それで、新しい聖女についてだが、諜報員の報告によると総本山はシュルト山だそうだ。噂通り、亜人や獣人を集めているという。それに独自の戦力も厄介だ。高ランクの冒険者も多く抱き込んでいるようだ」


「それは厄介ですね」


「しかも、危険思想の持主だ。種族の平等を説いたり、我が教会を暗に批判することも言っている。それと、荒唐無稽な逸話が多い。身を挺して、ボンバーロックの爆発から子供を救ったり、神の力で温泉を出したと言い張っているようだ。実際、質のいい温泉が湧き出たらしいが、後付けのでっち上げだ」


「かなり危険ですね。私も聞いたことがあります。何でも、名立たるギルドの選抜チームを押さえて、ダンジョンバトルに勝利したとか・・・」


「他にもあるぞ。目立つようにスライムの駆除依頼を受けて、信者を集めているようだ」


「目的は何なのでしょうか?」


「それが分からないだけに、危険な集団と言わざるをえない。場合によっては、異端審問に掛けることも考えねばならんな。その辺の商人がやっている商品PRの聖女とは全く違うからな」


 この世界にも危ない人がいるのか・・・

 絶対に関わり合いたくはない。まあ、今のところ、私に被害はないから、どうでもいいんだけどね。


 ★★★


 甘かった。早速、その聖女の所為で私が被害を受けることになる。

 急遽、スピーチの原稿が変更になった。怪しい聖女団の注意喚起をする内容が盛り込まれたからだ。


 ちょっと!!折角、覚えたのに・・・それも、こんな時間に・・・

 怪しい聖女め!!絶対許さない!!


 そう思ってみたが、原稿を書いてくれた神官を怒るわけにいかず、その原稿を覚えることにした。

 かなり分厚い。これは徹夜だ。


 眠い目をこすりながら、原稿を読んでいく。


 あれ?これって!?


 原稿にはこう書かれていた。



 最近、巷で噂になっている「鋼鉄の聖女団」には注意をしてください。

 かなり危険な集団です。「聖女アオイ」を教祖とする集団で、我が教会も必死で情報を集めていますが、組織の全容解明には至っていないのです。彼らの言っていることは、全て嘘です。だから皆さん、絶対に信じないでください。もし「鋼鉄の聖女団」から勧誘があった場合は、最寄りの教会までご連絡をお願い致します。



 多分、というか絶対、アオイさんだ・・・


気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!


次回から、新章となります。

知らず知らずのうちにアオイさんは、ヤバい組織に目を付けられていたようです。

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