38 共闘 2
13階層にやって来た。
ここでも、他の三チームはもめていた。
「おい、南ギルド。こういった所は、斥候の腕の見せどころじゃないのか?」
「なぜ、お前らのために、俺たちが行かなきゃならんのだ?それなら、南ギルドの魔道具でなんとかしろ」
「魔石代が掛かる。それを払うなら、受けてやらんこともないが、高いぞ」
ここでも仕方なく、声を掛ける。
「あのう・・・何かお困りでしょうか?」
「見て分からんのか?」
13階層を確認すると、暗闇に覆われていた。
「でも、光を出す魔道具をお持ちでは?」
「それはすべてのチームが持っている。だが、ここの魔物は、光に群がる性質がある。皆、牽制し合って、進もうとしないのだ」
じゃあ、私の出番か・・・
そう思っていたところ、ライトルが声を上げる。
「ここは僕に任せてください。魔道具よりも優秀なところを見せてあげますよ。スーパーライトボール!!」
いつものライトボールよりも、大きくて明るいライトボールが、無数に飛んでいく。
そして、そのライトボールで、フロアの隅々まで光に照らされた。蝙蝠型の魔物が大量に潜んでいたことが判明する。
「なんだ・・・ダークバッドじゃないか。だったら大したことはない。進むぞ!!」
「突撃だ!!」
「遅れを取るな!!」
他の三チームは魔物を討伐しながら、走り出した。
「ライトル!!何をしてるんスか?敵チームのアシストをして!!」
「ご、ごめん・・・ちょっと調子に乗っちゃって・・・」
「だったら、すぐにライトボールを消滅させるッス!!」
流石にそんなことをしたら大惨事になる。
「ノーリ、落ち着いて。ライトル、そのままでいいわ。バトルに勝つことは大事かもしれないけど、冒険者を危険に晒すのは、よくないわ」
「ありがとうございます。聖女様」
私たちは、ゆっくりと13階層を探索する。
他の三チームが討伐した魔物のドロップアイテムを拾い集めたり、宝箱を見付け、中を確認していく。宝箱の9割は、トラップだったが、それでも高価そうなアイテムが多く見付かった。
「これを売るだけでも、半年は遊んでくらせるニャ」
「そうだな。後で奴らが欲しいと言ってきても、絶対に渡さないぞ」
「流石にそれはないと思うよ」
ドロップアイテムを回収しながら、今後の方針を確認する。
時間的に考えて、15階層のエリアボスが勝負の分かれ目になるだろう。ここまで、全チームが無事に攻略できているので、どのチームが先にエリアボスを討伐するかで、勝負が決まる。
だったら・・・
「いいことを思い付いたわ。これなら、最下位にならない。その方法は・・・」
私が提案したのは、とりあえず15階層までは行ってみるということだった。
そうすれば、他のチームも15階層までは到達しているので、全チームが攻略できなければ、15階層が最高到達階層で、全チームが優勝となる。1チームが突破したら、優勝が1チーム、2位が3チーム、私たち以外の3チームが15階層を突破したら、頑張ってエリアボスに挑む。
「それがいいニャ。無理そうなら、そこでリタイアしても、文句は言われないニャ」
「そうだな・・・いい案だと思うが、私は勝つ方法を思い付いたぞ」
ダクラの説明を聞く。
なるほど・・・運任せの戦術だけど、もしかしたら勝てるかもしれない。
「じゃあ、とりあえずは、15階層を目指すということでいいわね?」
「そうだニャ。でも14階層も油断しては駄目だニャ」
「そうだ」
14階層に進む。
気を引き締めて臨んだ割には、拍子抜けした。セーフスポットはあるし、食料になりそうなキノコもある。体力回復薬として有名な薬草も採取できる。おまけに帰還用の転移スポットも用意されている。
「凄く親切よね?」
「これは逆にヤバいニャ」
「ああ・・・このダンジョンは、かなり良心的なダンジョンだ。しかし、ここまでサービスしてくれるとなると・・・」
ダクラが言うには、15階層のエリアボスがかなり強力な可能性が高いという。
「ここから先は、心して来いという意図だろうな。引き返すのなら、今のうちだとな」
「そうか・・・だったら、どのチームも15階層を突破できない可能性があるよね?それなら、15階層に行くだけ行って、すぐに14階層に戻って帰るのはどう?それなら、優勝じゃない?」
「優勝なんて、言ってられなくなるぞ。ダンジョンの15階層からは、一般的にはAランク以上は必要と言われているんだ。本当にすぐに帰還する準備をして、15階層に向かうほうがいいだろう。それと、さっき言った、私の作戦はなしだ」
ダクラの作戦というのは、多分、三チームがもめているだろうから、こっそりとすり抜けて、エリアボスを討伐して、先に進むというものだった。話を聞く限り、こっそりと進むなんてできないよね。
「じゃあ、ここでしっかりと休憩していきましょう」
★★★
私たちは、万全の準備を整えて15階層に臨んだ。
15階層に到達すると、激しい戦闘が行われていた。人間くらいの大きさのアリの群れと、三チームのメンバーが戦っている。
「あれは、アーミーアントだニャ!!巣が発見されたら、災害指定されるレベルだニャ」
「うむ、軍や騎士団が動くレベルだな。1匹1匹は大したことはないが、統制が取れていて、数が多い。まるで軍隊同士の戦闘をしているような感じになる。基本戦術は前衛戦力がしっかりと相手の進軍を止め、後衛が援護を行う。一番大事なのは、前衛と後衛の信頼感だな。言うは易いが・・・」
ダクラが戦術について、熱く語ってくれる。
「詳しいわね?」
「私がライダース帝国軍弓兵隊として、戦った最後の相手だからな。援護射撃をしない私は、戦闘後に吊し上げにあった。それにアーミーアントの親玉である女王を仕留めたことも、文句を言われた。そして、隊長からは『いいとこ取りをしやがって!!協調性のない奴はクビだ!!』と言われて、そのまま除隊したのだ」
「ご、ごめん・・・嫌なことを思い出させちゃって・・・」
「気にするな。過去のことだ」
微妙な雰囲気になってしまった。
確かにダクラ向きの相手ではなさそうだ。
「じゃあ、14階層に戻って帰還しましょう。そんな危ない魔物なら、安全策を考えて・・・」
言い掛けたところで、ノーリに遮られた。
「ちょっと待ってくださいッス!!あれを見てほしいッス!!」
注意して、戦闘を見る。
三チームがそれぞれで、勝手に戦っている。協力する気なんてなさそうだ。
「私には頑張って戦っているように見えるけど・・・」
「かなり危ないニャ。特に魔導士は、今にも魔力が切れそうニャ」
「東ギルドの戦士たちも、頑張ってはいるが、周囲を囲まれて、危険な状況だ。あのままでは、各個撃破されるかもしれんな」
ノーリが言う。
「クビになったとはいえ、重装歩兵隊のみんなは、大切な仲間ッス。それに隊長には、お世話になったし・・・」
ライトルも続く。
「あの中には、僕に一生懸命、魔法を教えてくれた魔導士もいるんです。どうにか、助けられませんか?」
トールも・・・
「えっと・・・僕は南ギルドに思い入れはありませんし、お世話になった人もいません。でも、ノーリとライトルの恩人がいるなら、助けてあげたいです」
私は、ダクラとミウに言った。
「助けに行かない?」
「そう言うと思ったニャ」
「いいだろう。全体の指揮は私が取ろう。アオイは思いっきり、やって来い」
私は走って、アーミーアントに向かって行く。
私がスーパーヒーローなら、華麗にアーミーアントを蹴散らすんだけど、そんなことはできないから、ある程度進んだところで、「鋼鉄化」を発動させた。
アーミーアントが大挙して襲ってくる。
非常に後悔した。
私って、虫は苦手なんだよね・・・
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