37 共闘
10階層までやって来た。
ここにはエリアボスがいる。そのエリアボスは、ビッグホーンブルというBランクの魔物だった。牛型の魔物で、突進攻撃が強力だ。
ノーリが言う。
「まずは、私たちだけで、やらせてくださいッス!!」
ノーリたちが戦闘を始める。
ライトルがライトボールで、ビッグホーンブルの視界を奪い、ノーリが近接戦を行う。そして、ライトルとトールが上手くサポートをしている。
「上手く立ち回っているけど、決定打に欠けるニャ」
「短期間で、よく頑張ったと思うが、少し厳しい感じがするな」
しばらくして、ノーリが言う。
「今の私たちでは、無理だったッス・・・」
「仕方ないよ」
「で、でも・・・修行を積めば、勝てない相手じゃない・・・」
三人は悔しそうだ。
ダクラが言う。
「自分たちの実力を把握して、安全策を取るとは、成長したな。後は私たちに任せろ」
私たちとノーリたちが交代する。
作戦は、いつもどおりだ。私が向かって行き、ヘイトを集める。そこにミウとダクラが攻撃を仕掛ける。あっという間にビッグホーンブルは討伐された。
「こ、これが聖女様方の実力ッスか・・・私たちも、まだまだッス」
「そうだな。もっと修行をしないと」
「僕も頑張るよ」
ビッグホーンブルからは、大きな角と大量の肉がドロップした。
ダンジョンは特殊で、討伐した魔物が消滅するとドロップアイテムが出現する。なので、解体しなくてもいいのだ。
大量の肉を見つめながら言った。
「ちょっと早いけど、今日はここで野営をします。肉もあるし、セーフスポットもあるし・・・BBQ大会をやりましょう」
一同が盛り上がる。
かなり美味しかった。この肉を売るだけでもかなりの儲けになると思える。しかし、あまりの美味しさにすべて食べきってしまった。
かなり食べ過ぎた。確実に体重は増加しているだろう。
帰ったら、少しダイエットしないとね・・・
★★★
次の日、ダンジョン探索に出発する。
今日はダンジョンバトル最終日だ。気合いを入れて望む。しかし、一向に他チームの姿は見えない。
「まあ、負けたとしても10階層を攻略したから、ギルドとしての面目は立つと思うんだけどな」
「それはそうニャ。最下位でも、北ギルドもなかなかやると思ってもらえるニャ」
「私としては、目標を達成したいが、無理をする必要はないな」
ノーリたちも同意見だった。
11階層からは、また魔物も強くなった。それにトラップも巧妙になっていく。斥候としての役割を求められているトールは涙目だ。
「この階層は、僕の鼻が利きません。臭いを消す魔法が掛けられています。それにトラップなんて、見たこともないものばっかりだし・・・」
「大丈夫よ。私に任せて」
そう言っても、先頭を歩くだけだけどね。
11階層からは、「鋼鉄の聖女団」の得意パターンで進む。
私が先頭で、距離を置いて進み。魔物が襲ってきたら、ミウとダクラが討伐する。トラップはというと、すべて発動させ、すべて受け止める。
11階層も難なく攻略した。
「もう規格外ッス・・・」
そして、12階層に到着した。
★★★
12階層には、他の三チームが集結していた。
何やら、もめているようだった。
「お前たちが先に行けよ」
「ここは、お前たちに譲ってやるよ。もしかして、南ギルドは腰抜けか?」
「うるさい!!東ギルドが肉の壁になれ!!」
「おい、西ギルド!!魔導士なんて、大したことないな」
明かに良い雰囲気ではないが、挨拶だけはしておこうと思い、声を掛ける。
「あ、あのう・・・皆さん、お久しぶりです。何かありましたか?」
一斉に私に視線が集中した。
「ここまで、たどり着くとは・・・お前らもなかなかやるな・・・」
「だが、ここは簡単には突破できんぞ」
「ああ、突破はできるが、大ダメージを喰らう。そうなれば、バトルに勝てなくなるからな」
とりあえず、12階層を確認する。
フロア一面にボンバーロックがひしめき合っていた。
なるほどね・・・だったら、みんなで協力すればいいのに・・・
ここまでやって来た精鋭部隊であれば、共闘すればなんとかなるだろう。しかし、それはできないんだろうな。
一瞬、彼らが自滅するのを待とうと思ったが、やめておいた。それで勝っても、後味が悪いしね。
「ここは私に任せてください」
ボンバーロックの討伐は慣れている。
多分、ここ最近のボンバーロック討伐ランキングがあるとすれば、私たちがダントツの1位だ。それに討伐方法も確立している。もはや、ただの作業だ。
まあ、ただ私が突っ込むだけなんだけどね。
私がボンバーロックの群れに向かって歩いていると、他チームから叫ぶ声が聞こえる。
「おい!!ちょっと待て!!自分の身を犠牲にすることはない!!」
「そうだ!!早まるな!!」
「おい!!お前ら!!仲間なんだろ?止めろよ」
ミウとダクラは無視している。
私がボンバーロックに近付くと、ボンバーロックは一斉に向かって来た。
森にいるボンバーロックと違い、こちらのボンバーロックは好戦的だ。私も負けじと聖女パンチを繰り出す。そんな攻防をしている内にミウの魔法とダクラの矢が飛んで来た。いつも通り、ミウの魔法は私にもヒットする。
「なんて奴らだ・・・仲間を犠牲にして、仲間ごと撃つなんて・・・」
「北ギルドは、実力だけじゃなく、人としても終わっているな」
酷い言われようだ。
でも、いつものことなんだけどな・・・
しばらくして、ボンバーロックの1体が真っ赤に変色した。
「や、ヤバいぞ!!重装歩兵隊!!楯を構えろ!!おい、ここは一旦休戦だ。俺たちの後ろに隠れろ」
「そ、そうだな・・・」
「非常事態だ・・・好意に甘えよう」
ドカーン!!
ボンバーロックが大爆発する。それに伴い、他のボンバーロックも誘爆する。
辺りが砂煙に包まれる。
「聖女殿・・・敵ながら敬意を表する。バトル後に見舞金くらいは出してやる」
「命を無駄にしおって・・・」
「同感だな。こんな所で命を懸けるなんて、馬鹿のすることだ」
全部聞こえてるんですけど・・・
砂煙が収まると、無傷の私が登場する。
他チームは、呆気に取られていた。
私は他チームを無視して、他のメンバーに指示をした。
「この階層も少し調査しましょう。ボンバーロックもダンジョンではアイテムをドロップするようだしね」
他の三チームは、すぐに次の階層へ転移して行った。
私たちは、ボンバーロックのドロップアイテムを拾い集めている。
ノーリが言う。
「彼らも共闘すれば、こんな階層、すぐに突破できたのにと思うッス」
「そうよね。でもそれができないから、ああなっていたんでしょうね。この町の縮図だと思うわ」
冒険者の町ブレダムの負の部分を見た気がした。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




