36 ダンジョンバトル開始
とうとうダンジョンバトルが始まった。
東ギルドからは、重装歩兵隊と「ソードガールズ」の混成部隊、西ギルドは魔導士と魔法剣士の部隊、南ギルドはというと、覆面集団だった。
各ギルドのギルマスたちや関係者が見守る中、ダンジョンバトルはスタートする。
ルールは、とにかく一番ダンジョンの奥の階層にたどり着いたチームが勝利する。バトル中に他のチームへの攻撃は禁止されている。他のチームへ攻撃をすると即失格だ。
スタートの合図と同時に私たちを除く三チームは走り出した。
私たちはというと、のんびりと歩いてダンジョンに入る。ダンジョンは洞窟型のダンジョンだった。
なぜ私たちが、焦らずにゆっくりとダンジョンに入るかというと、色々と理由がある。
まずは、失格をしないためだ。
ミウもそうだが、ノーリもかなり不器用で、周囲の味方を攻撃してしまう。もし近くに別のチームがいたら、高確率で誤射などが起きる。それで被害に遭ったチームから申し出があったら、失格にされる可能性があるからだ。
ミウやノーリが故意に他チームに攻撃を加えることなんてないけどね。
そして最大の理由は、このダンジョンバトルで私たちが勝利しても、北ギルド単独でダンジョンを管理することはできないからだ。これはケアルさんから説明があった。
「皆さんが頑張って、このバトルに勝利したとしても、北ギルドで単独管理するのは無理です。ですから、無理をせずに参加してもらえばと思っています」
以前までのノーリたちなら、怒り狂っただろう。
でも、自分たちの実力を知った今は、受け入れている。だから、自分たちが行けるところまで、頑張るということで、納得している。
「それと我が北ギルドは、かなり他のギルドから馬鹿にされています。優勝はできないまでも、最下位だけは脱出してほしいと思います。なので、その作戦も・・・」
その作戦というのは、他の三チームが自滅するのを待つというものだった。
他の三チームは仲が悪い。直接的な妨害をしないまでも、嫌がらせくらいはするとのことだった。そして、優勝しようと必死だ。なので、どれか一チームが脱落したところで、そのチームよりも少しだけ、奥の階層に進めばいい。
ケアルさんの話だと、状況によれば、低階層でリタイアするチームもあり得るとのことだった。
だから、私たちはゆっくりと時間を掛けて進む。
バトル終了は、3日後だ。ケアルさんが言うには、何が何でも最下位脱出を目標にしなくていいとのことだった。そもそも、作戦自体が運を天に任せたものだからね。
なので、そうそうに他のチームが通過した1階層もゆっくりと探索しながら進む。
トールが言う。
「低階層にしては珍しく、いい薬草もキノコもあります。特にこちらのキノコは美味しいので、夕食に使いましょう」
ライトルが叫ぶ。
「ホーンラビット発見!!喰らえ、熱光線!!」
ホーンラビットを討伐した。
ノーリが言う。
「ツイているッス!!夕食はホーンラビットのキノコ鍋にするッス」
本当にのんびりしている。
まるでピクニックだ。
★★★
3階層までやって来た。
当然、他の三チームは既に通過している。1階層ずつじっくりと、ダンジョンを味わうように探索する。3階層からは、トラップも出現する。
トールが言う。
「ここは、斥候見習いの僕にやらせて下さい。元斥候の冒険者に教えてもらったので、何とかしてみせます」
それから1時間が経過した。
未だにトラップは解除できない。
「トラップ解除できません・・・ごめんなさい・・・」
私はトールに言う。
「よく頑張ったわ。ここは私に任せて。次に来た時に解除できるように頑張ればいいからね」
「はい」
トールからは、私の一挙手一投足を決して見逃さないという、熱い視線を感じる。
「えい!!」
私はトラップに聖女パンチを繰り出した。
トラップが爆発する。当然、私は無傷だ。トールは涙目になる。
「このパーティーって、斥候自体が、いらないんじゃ・・・」
「アオイは特別だニャ。アオイみたいなのは、まずいないニャ」
「そうだ。だから、じっくりと斥候の技能を高めていけばいい」
「はい・・・」
そんな感じで、のんびりとダンジョン探索は続く。
そして5階層には、エリアボスが出現する。エリアボスは、ビッグコングという大きなゴリラのような魔物だった。ランクで言うとCランクの魔物だ。
「ここは私に任せてくださいッス!!」
その言葉通り、一騎討ちでノーリはビッグコングを仕留めた。
「あっ!!このダンジョンはセーフスポットがあるニャ」
「珍しいな。一部の優良ダンジョンしかないはずだが・・・」
セーフスポットとは、魔物が全くでない安全な空間だ。
なぜそんな場所がダンジョンにあるのか、解明はされていないが、有難く利用させてもらう。
「初日だし、ここで野営するのはどう?」
「賛成だニャ」
「一応、仮眠中の警戒はするが、安心して休めるのは有難いな」
セーフスポット内で、ダンジョン内で採取したキノコやホーンラビットの肉を使った料理を楽しむ。
どう考えても、ダンジョンバトルをしている雰囲気ではない。
ノーリが言う。
「基本的にダンジョンの5階層に到達すれば、Cランクの能力有りと認められるッス。ここでリタイアしても、恥ずかしくはないッス」
「そうね。でもまだまだ、余力はあるし、目標は最下位脱出だからね。もう少し、進みましょう」
次の日の探索がスタートする。
他チームは影も形も見えない。ダンジョンは時間が経過するとトラップが復元したり、魔物が復活したりする。私たちが到達すると、すべてが真新しい状態だ。それから考えて、他チームはもっと奥に進んでいるのだと思われる。
まあ、他チームのことを気にしても仕方がないしね。
6階層からは、格段に魔物が強くなった。
もうライトルやトールでは太刀打ちできない。ノーリも頑張っているが、限界に近い。それでもトールのスリングショットでのサポートを受けながら、攻略に成功した。
そして、7階層に到達する。
「ここの魔物は、物理攻撃が効かないッス!!私では無理ッス」
7階層に出現する魔物は、スライムの変異種だった。
ポイズンスライムというらしい。物理攻撃はほぼ効かないそうだ。まあ、圧倒的な火力があれば、別らしいけどね。
ライトルが言う。
「だったら僕が!!」
ライトルの熱光線が炸裂する。
「ポイズンスライムは魔法耐性がゼロに近いニャ。初級魔法があれば簡単に討伐できるニャ」
ここに来て、ある疑問が浮かぶ。
私たちって、何もしてないんじゃ・・・
というか、ノーリたちって、かなり優秀なパーティーなんじゃないのだろうか?
ここまで、重い荷物をすべて背負い、三人だけでここまでやって来たのだからね。
まあ、戦力を温存できたと思おう・・・
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