29 サポートパーティー 2
三人のアピール合戦は続く。
調査依頼には、地図の作製も含まれる。
マッピングというスキルがあれば、簡単に作成できるのだが、私たちにそんなスキルを持っている者はいない。なので、ライトルが積極的に地図を作成していた。
「僕は魔法だけでなく、こんなこともできるんですよ」
使える魔法が光魔法だけでは、他のこともしないと加入させてもらえないと思ったライトルは、魔法以外でのアピールに切り替えていた。
しばらく探索を続けていたところ、トールが叫ぶ。
「魔物の匂いがします。オオカミ系の魔物です」
これは便利だ。
私たちは戦闘体制を取る。
しばらくして、フォレストウルフが3匹姿を現した。
「ここは私に任せてくださいッス!!」
そう言うと、ノーリが巨大なハンマーを手に魔物に駆け出して行った。
ノーリは、力任せにハンマーを振り回し、半分以上の攻撃は当たらなかったが、それでもフォレストウルフを圧倒していた。
ダクラが解説してくれる。
「パワーはある。しかし、あんな戦い方では、集団戦闘には向かない。ミウと同じで、近くの味方に当たる可能性が高いな」
「私の魔法とは相性が悪いと思うニャ・・・」
実力はあるようだが、私たちとの相性が問題だった。
ライトルとトールはというと、私たちよりも更に後方に下がり、逃げる準備までしていた。
「あそこまで臆病だと、困るな」
「戦闘力はないみたいだニャ・・・」
何となくだが、彼らの問題点が見えてきた。
★★★
3日目に入った。
大体パターンができてきた。普段は、トールを中心に素材の採取を行い、併せてライトルが地図を作成する。魔物が出現するとノーリが撃退する。
実際のところ、私とミウとダクラは何もしていない。
これって、この子たち三人がパーティーを組めばいいんじゃないだろうか?
そんなことを思っていたところ、ノーリが聞いてきた。
「どうッスか?私の実力は分かってもらえたッスか?」
私はミウとダクラに相談する。
「どう思う?」
「多分、私たちとは相性が悪いニャ」
「そうだな・・・一度、私たちの戦闘を見てもらってはどうだろうか?」
ダクラの意見に賛成し、三人に伝えた。
更に探索を進める。
そんな中、トールが叫び出した。
「これはヤバいです。熊系の大型の魔物が近くにいます」
この頃になると、トールは匂いである程度の魔物の種類が分かるようになっていた。
しばらくして、出現したのは、フォレストベア3匹だった。森に住む熊型の魔物で、Cランク相当の魔物だ。攻撃力が高く、普通の冒険者なら逃げることを優先すべき相手だ。
「じゃあ行くよ。いつも通り、私が引きつけるから」
私はフォレストベアに突進して行く。
いつも通り、「鋼鉄化」のスキルを発動させる。3匹とも私に攻撃を集中させているが、全くダメージは入らない。
「ヤバいッス!!聖女様が・・・」
ノーリが驚きの声を上げるが、ミウとダクラは動じない。
しばらくして、ダクラの矢が一匹のフォレストベアの右目に突き刺さる。そのフォレストベアは、倒れ込んだ。その後すぐにミウの風魔法が大量に降り注ぐ。もちろん、3割くらいは私に当たっている。
「そ、そんな・・・味方ごと、撃つなんて、何を考えているんだ・・・」
ライトルは驚きの声を上げたが、私は無事だし、フォレストベア3匹は既に討伐されていた。
戦闘後、フォレストベアの解体をしながら、三人に説明をした。
「これが私たちの戦い方なのよ。かなり特殊な戦い方だから、貴方たちと組むと、お互いの個性を潰し合ってしまうわ。残念だけど・・・」
三人は落ち込んでしまった。
★★★
その日の夜、私たちは話し合いをした。
「みんなはどうして、私たちのパーティーに入りたいの?まずは、それを教えてもらえるかしら」
最初に答えたのは、ドワーフの少女ノーリだった。
「それは東ギルドの奴ら、特に前にいた部隊の奴らを見返すためッス。左手もかなり良くなったので、部隊に戻らせてほしいとお願いしたけど、断られてしまったッス。隊長からは『このまま部隊に戻っても、平凡な部隊員で終わってしまう。それなら、ノーリの個性が生かせるパーティーを組むほうがいい』と言われたッス。隊長は優しいから、私を傷付けないようにそんな言い方をしたッス。私の居場所はもうないんス」
ダクラが言う。
「その隊長が言うことは一理あるな。ノーリは主にハンマーを使うが、部隊に戻れば槍と楯で戦うのだろう?」
「それはそうッスけど・・・」
「だったら、今の戦い方に合わせてくれるパーティーメンバーを見付けるべきだと思うがな・・・」
それはそう思う。
隊長だって、ノーリの今後のことを思って、部隊に戻らせなかったのだろう。
続いて話を始めたのは、魔道士の少年ライトルだった。
「僕は魔導士として活躍したいんだ。サポーターとしてなら、西ギルドでも契約してもらえるけど、それじゃあ駄目なんだ」
「サポーターも立派な仕事ニャ。なぜ駄目なのかニャ?」
「それは・・・」
ライトルは、魔法都市の名門魔法学校に入学したが、光魔法しか使えないこともあり、授業について行けず、中退したらしい。
「魔法学校を辞める時、『絶対にお前たちを見返してやる!!』って啖呵を切ったんだ。でも結果は・・・」
「全く攻撃にも、回復にも使えないとなると、魔道士としてやっていくには厳しいニャ。サポータとしての技能を高めたほうがいいと思うニャ」
「それはそうだけど・・・」
私もそれがいいと思う。
ライトルはサポーターとしては、それなりに技能を持っているからね。
最後はコボルトのトールだ。
「僕は一流の斥候になろうと思っていたんだけど、南ギルドに所属するのは、もう無理なんです・・・」
「どうして、斥候になりたいんのかニャ?」
「斥候というか、冒険者になって成功したいんです。自分が戦闘力がないことは分かってます。だから、一流のパーティーに入れば何とかなるかと・・・」
ダクラが言う。
「厳しいことを言うようだが、他力本願では大成しない」
「それはそうですが・・・誰も斥候の技術を教えてくれる人がいませんし・・・」
トールは落ち込んでしまう。
他の二人もそうだけど。
「アオイから何かアドバイスはないのかニャ?」
「そうだ、聖女としてアドバイスしてやったらどうだ?」
ここで私に話を振るのか・・・
少し考える。
三人の個性を生かせるパーティーか・・・
あれ?あるじゃん!!
「私に考えがあるわ。明日、もう一度森に行きましょう」
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