28 サポートパーティー
その日私たちは、ギルマスのケアルさんから呼び出しを受けた。
「今日来ていただいたのは、少し相談がありましてね・・・マーサ!!来てくれ」
ギルマスに呼ばれマーサさんがやって来た。
「相談というのは、「鋼鉄の聖女団」への加入希望者のことなんだ。三人程、何度も一次審査を受ける奴らがいるんだ。審査料も決して安くはないんだけど、いくら言ってもやめないんだ・・・」
三人というのは、ドワーフの少女ノーリ、魔道士のライトル、コボルトのトールとのことだった。
「三人を見たことはあるだろ?」
ノーリは部隊をクビになった現場に出くわしたし、ライトルもギルドとの契約解除された現場に居合わせた。トールは、暗殺の仕事を請け負わされたということで、北ギルドに駆け込んで来たので、よく覚えている。
「いくら言っても聞かないし、こっちも可哀想になってきてね・・・だから、アンタらに諦めさせてほしいんだ。それ用に依頼も見繕っているからね」
「依頼については、私のほうから説明します。場所はシュルト山で・・・」
依頼というのは、シュルト山の未開の森の調査だった。
最近、北ギルドにはシュルト山関連の依頼が多く舞い込む。北ギルドに所属していた冒険者が多く、シュルト山に移住しているのも大きい。
温泉効果もあり、それなりに実力が戻った冒険者もいるが、未知の危険が潜む調査依頼を受ける者はいない。
「その調査依頼に、彼ら三人をサポートパーティーとして同行させてください。それで、それとなく才能がないと言ってもらえれば・・・」
私たちが肩叩きをしろと?
辛い仕事だな・・・
「報酬も弾みますし、彼ら三人の活動費は、ギルドで持ちます。最悪、直接伝えてもらわなくても、後日こちらから伝えるようにしますから・・・」
ミウとダクラと相談する。
「可哀想だけど・・・この報酬は破格ニャ。私は受けていいと思うニャ」
「うむ。チャンスくらいは、やってもいいと思う」
二人は報酬に釣られたようだった。
「分かりました。お受けします」
★★★
3日後、私たちは三人の加入希望者を連れて、シュルト山に出発した。
移動は前回と同じく馬車だ。魔導士の少年ライトルが自慢げに言う。
「どうですか?乗り心地は?この馬車を手配したのは、僕なんですよ」
「何で、一人だけアピールしてるんスか!?みんなでやったじゃないッスか!!」
「そうだよ・・・馬車の担当はライトルだったけど、僕とノーリは食料の準備や資材を準備したし・・・」
仲裁に入る。
「みんなのお蔭で、快適な旅ができているわ。冒険者パーティーには、協調性も大事だからね」
実際、三人のお蔭で準備や荷物運びも楽だった。
ただ、この三人は何かにつけて、アピールをしてくる。本人たちは、最終審査と思っているからね。
野営をすることになった。
無理をすれば、1日でシュルト山に着くことができるが、これは彼らの能力を見るためでもある。
「珍しいキノコを採ってきました!!すぐに料理します」
コボルトのトールがキノコを持って来たのを皮切りにアピール合戦が始まってしまった。
「ちょっと獲物を狩って来るッス!!」
ドワーフの少女ノーリは、森に入って、スモールボアを狩ってきた。
「えっと・・・僕は・・・明るく照らします・・・」
ライトルは、光魔法しか使えない。まだ明るいのに光の玉を出現させる。どことなく、その光が寂しそうに映った。
次の日にはシュルト山に到着した。
ここまでは彼らにケチをつけるところはない。夜間の警戒もしてくれるし、料理や雑務、御者も交代でしてくれた。正直、居てくれたら有難い存在ではある。
「仲間にしてやってもいいと思うニャ」
「しかし、費用がなあ・・・まだ戦闘力も分からんし」
私の意見は、二人の中間だね。
まあ、時間はあるし、総合的な評価を下そう。
シュルト山で依頼主の村長を訪ねると、大喜びしてくれた。
「聖女様に来ていただけるなんて、本当に有難い。すぐに歓迎の宴を開きます。もちろんお風呂もご用意いたしますよ」
かなりの高待遇だった。
これには三人もびっくりしていた。
「こんな待遇が受けれるなんて、絶対に入れてもらわないといけないッス」
「そうだな・・・」
「このパーティーに入れば、将来は安泰だね」
どこに行ってもこの待遇だと勘違いしているようだ。
ボンバーロックの一件があったから、この村だけこんな感じなんだけどね。
次の日、早速未開の森に入った。
三人共、アピールする気満々だ。最初に活躍したのは、コボルトのトールだった。自慢の鼻で、薬草やキノコを見付けてくる。
「ど、どうですか?僕がパーティーに入れば、こういった採取活動も楽になりますし、索敵も得意ですからね」
後の二人はというと、歯ぎしりをして悔しがっていた。
「私もアピールしないとヤバいッス。魔物が出てくれば、戦闘力の高さをアピールできるのに・・・」
「夜になれば、魔法で照らしてアピールするんだけど・・・」
ミウとダクラと相談したところ、三人には、気の済むまでやってもらおうということになった。
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