24 ボンバーロック 2
次の日の昼には、依頼書が届いた。
かなり急いで、町まで向かったようだった。そして依頼書を確認して驚愕した。
「この量はヤバいニャ!!30箇所以上あるニャ」
「1日では無理だぞ」
村長さんが言う。
「依頼書を確認してくれ。期限は記載していない。だから、何日か掛けてもらってもいい。その間の滞在費はこちらで負担する」
流石に何日も、ここにいる訳にはいかないので、1日10箇所、3日で討伐が完了する計画を立て、実行することにした。
討伐はというと、順調だった。
というか、単調過ぎて、三人とも集中力を欠いている。私は集中していても、していなくても大差はないのだが、ミウとダクラは顕著だった。
ミウは、ただでさえ低い命中率が更に下がり、撃った魔法の半分は私に直撃していたし、ダクラなんて1回の戦闘で、1本しか矢を射らなくなったしね・・・
流石に二人に注意する。
「こういうときに決まって、事故が起きるものよ。もう少し集中したほうがいいと思うのよね」
「それは分かっているニャ。でも、張り合いがなさすぎるニャ」
「そうなのだ。どうにも飽きてくる・・・」
私は少し考えて言った。
「だったら一度、私一人で討伐させてくれない?」
二人がここまで集中力を欠いているのには、理由がある。
ボンバーロックは1体が自爆すると、周囲にいるボンバーロックも巻き添えを喰らう。極端な話、1体だけ自爆させてしまえば、群れごと殲滅できる。だから、適当に魔法を撃っても、そのうちの1体にダメージが蓄積されていけば、自爆して群れが壊滅する。
普通の冒険者ならこんなことはできない。自爆攻撃に巻き込まれて、大怪我をするからだ。まあ、私のスキルが特殊だからできる戦法なんだけどね。
★★★
私は今、群れから少し離れた場所で、一体のボンバーロックと対峙している。
かれこれ、1時間近く戦闘を行っている。必殺技の聖女パンチを繰り出しているが、自爆するまでダメージを与えられないでいる。
ここまで長く戦っていると、宿命のライバルのような気になってしまう。
ボンバーロックの表面は徐々にではあるが、ひび割れていて、そろそろ相手も限界に近い感じがする。
そんな時、ボンバーロックが、物凄い速さで突進してきた。以前までの私なら、為すすべもなかっただろうが、マーサさんとの特訓もあり、この程度の攻撃であれば、対処できるようになっていた。
向かってくるボンバーロックに必殺のパンチを繰り出す。
「ハイパー聖女パンチ!!」
ボンバーロックに鋼鉄化した拳がめり込む。そしてボンバーロックは、燃えるような真っ赤な色になった。
自爆する!!
私はボンバーロックを抱え込み、ボンバーロックの群れに向かって走った。
そして、群れに向かって自爆寸前のボンバーロックを抱えて、飛び込む。ラグビー選手がトライを決めるような感じだ。
ドカーン!!
爆発が起こり、ボンバーロックの群れは壊滅した。
私は鋼鉄化しているから、無傷だったんだけどね。
誇らしげにミウとダクラに言う。
「どう?私もなかなかやるでしょ?」
「こんなことをしていたら、依頼達成まで1ヶ月は掛かるニャ」
「そうだな・・・だが、アオイの戦いを見て、私は作戦を思いついたぞ。これなら、今までよりも効率よく討伐ができる」
ダクラの作戦を実際にやってみることになった。
まず群れを見付けたら、群れから少し離れている個体に私が突進する。そして、そのボンバーロックを抱え上げた状態で鋼鉄化する。こうすると、ボンバーロックは動けない。
そこにダクラが弓を射かける。私の聖女パンチとは比べ物にならないくらいの威力なので、すぐにボンバーロックは自爆モードになる。
そこにミウが風魔法を私にぶつける。
私は「重量調整」のスキルで、かなり軽くなっているので、ボンバーロックの群れまで飛んでいく。
結果はというと、大成功だった。
大昔のバラエティー番組でやっていた人間大砲みたいだ・・・
「これならあっと言う間に討伐が終るし、魔力も矢も節約できるニャ」
「そうだな。これも何れ飽きてくるから、さっさと終わらせよう」
そこからは、早かった。
楽しくはない。ただ三人共、とにかく早く依頼を片付けようという思いから、回を重ねるごとに効率がよくなっていった。
計画では3日以上掛かるところを2日半でやり遂げてしまった。
村長さんや村人たちもびっくりしていた。
「信じられん・・・これなら、追加報酬を払ってもいいくらいだ」
「村長、是非出してあげましょう。自警団を編成して討伐することを思ったら、安いもんですよ」
「それはそうと、折角だし宴でも開きませんか?」
「そうしよう。すぐに準備をさせろ。酒も料理も一番いい物をお出ししろ」
村の人たちが喜んでくれて、私も嬉しい。
ミウとダクラも誇らしげだ。
そんな時、ベータさんが慌てた様子で駆け込んできた。
「子供たちがいなくなった・・・もしかしたら、未開の森に行ったのかも・・・」
詳しく事情を聞くと、ベータさんの息子のゼータ君10歳とその妹のシータちゃん8歳が昼過ぎから、行方不明になっているようだった。付近を捜しても見付からず、村長に捜索隊を組織してほしいと要請に来たようだった。
「分かった。すぐに村人集めて、捜索に向かおう。すまないが冒険者殿・・・」
「もちろん、私たちも捜索に協力しますよ」
こういった緊急事態であれば、ギルドを通さなくてもいいだろう。
それにしても、心配だ。
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