23 ボンバーロック
乗り合い馬車に揺られ、シュルト山を目指す。
暇なので、参考書を読んで、ボンバーロックの予習をする。
ボンバーロックは、比較的ポピュラーな魔物だ。
そのため、討伐?駆除?方法が確立されている。
ボンバーロックは一定のダメージを受けると自爆する。
この自爆攻撃は強力で、下手すると大怪我を負ってしまい、最悪は死亡するケースもある。推奨される討伐方法は、防御力の高い全身鎧を着こんだ戦士たちが、多少のダメージ覚悟で討伐する場合や魔導士や弓使いが遠距離からダメージを与え、自爆しそうになったら、一斉に退避するといったものが、参考書に書かれていた。
そして、その参考書には、前衛と後衛が連携して対処する方法が一番確実だと記載されていた。
「ポイントは、前衛がしっかりとボンバーロックのヘイトを集めることニャ。後衛にボンバーロックの意識が向かなければ、大したことはないニャ」
「うむ。後衛も自分たちの位置が分からないような魔法や弓の撃ち方を推奨されているようだな」
「ところで、私は何をやればいいの?」
「いつも通りニャ」
「そういうことだ」
何となく、そんな感じはしたけどね・・・
依頼者の牧場主のベータさんに挨拶をして、早速討伐に向かう。
ベータさんは、私たちがBランクと知って、驚いていたけどね。
地図を渡され、ボンバーロックの出現ポイントに向かう。
目視で、10体程のボンバーロックを発見した。
「じゃあ行くわよ!!聖女パンチ!!」
私が一番近くのボンバーロックに殴り掛かると、ボンバーロックたちは、一斉に私に向かって来た。
ボンバーロックは、そこまで素早くないので、こんな私でも躱せる。訓練の成果が出て、少し嬉しい。
そんなことを思っていたところ、ミウの魔法とダクラの矢が飛んで来た。
魔法はアイシクルランスという氷の刃が降り注ぐ魔法で、矢も山なりの軌道だった。これはボンバーロックの討伐に推奨されている魔法や矢の撃ち方で、自分たちの位置をボンバーロックに知られないようにするためらしい。
10体中8体は討伐されたのだが、二体はまだ生きている。
その二体は、体が真っ赤になり、かなり怒っているように見える。
ダクラが叫ぶ。
「アオイ!!気を付けろ!!爆発するぞ!!」
ドカーン!!
大音量と共にボンバーロックは爆発した。
私はというと「鋼鉄化」のスキルを発動していたので、全くの無傷だった。
★★★
討伐に成功した私たちは、反省会を行った。
「前衛部隊だけで戦うと時間が掛かり過ぎるニャ。かといって後衛部隊だけだと、反撃されて負傷する危険が増すニャ。自爆前は、かなり素早くなるからニャ。つまり、討伐には前衛と後衛の連携が欠かせないニャ」
「それにしてもミウは、討伐方法に詳しいな。討伐経験があるのか?」
「思い出の魔物だニャ。ライダース帝国の宮廷魔導士団時代に重装歩兵隊と合同で、ボンバーロックの討伐任務に就いたニャ。そこで私は、味方に魔法を当てまくってしまったニャ。魔導士団長から『何で、動きの遅いボンバーロックにさえ、碌に当たらないんだ!?』と言われて、クビにされたニャ・・・」
「辛い過去を思い出させてしまって、すまない」
「気にすることはないニャ。あの時、アオイがいれば、クビになっていなかったと思うけどニャ」
ミウの場合、威力は凄いけど、コントロールが悪すぎる。
宮廷魔導士団だけでなく、多くのパーティーをクビになっているからね。
「ミウ、過去は気にしないで。じゃあ、これからもいつも通りにやりましょう」
それから、地図の印がある場所を周り、ボンバーロックを討伐していく。
5箇所程あったが、もう決まった工程で作業をしているだけだった。討伐も予定より早く終わり、依頼主のベータさんに報告する。
「も、もう討伐したのか?信じられんな・・・アンタたちを疑う訳じゃないが、少し確認させてほしい」
「だったら、一緒に確認に向かいましょうか?」
「そうしてくれると助かる」
ベータさんと一緒に確認に向かう。
討伐地点を案内する度にベータさんは驚きの声を上げていた。
「信じられんが、依頼達成と認めよう」
「ありがとうございます。それでは、こちらの確認書にサインをお願いします」
手続きを済ませ、帰還しようとしたところ、呼び止められた。
初老の男性だった。
「ボンバーロックに困っているのは、何もベータのところだけじゃないんだ。この付近一帯の者が困っているんだ。儂から新たな依頼をしたいのだが・・・」
ベータさんに聞いたところ、この男性は村長さんだった。
冒険者ギルドに依頼しても、一向に解決しないことから、近々、危険を覚悟で自警団を編成して、討伐しようとしていたようだ。
「受けてもいいのですが、ギルドを通してもらいたいのですが・・・」
これは、冒険者になった時にカナリマのギルドで、ジャンヌさんに教えられたことだ。
依頼者と冒険者が直にやり取りすると、搾取されたり、トラブルになったりする場合があるから、基本的にはギルドを通じて依頼を受けるようにとのことだった。
「では早速、ギルドに話をつけに行く。早馬を走らせれば、今日中に着くし、明日には依頼を発注できるだろう。宿泊場所はこちらで用意する。もちろん無料だ」
私たちは、村長さんの好意に甘えることにした。
お風呂にも入らせてもらったし、豪勢な夕食もいただいた。
特に山羊ミルクのチーズ料理が絶品だった。
「遠慮せずにどんどん食べてくれ。報酬も弾むからな」
夕食の時にそれとなく聞いたが、かなり困っていたようだ。
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