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鋼鉄の聖女~勇者召喚されたOLですが、不遇なジョブの所為で追放処分を受けました。でも実は、私のジョブは最強のようで、いつの間にか無双しちゃってます。  作者: 楊楊
第二章 冒険者の町 

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21 ブレダムの闇 2

 コボルトの少年は矢継ぎ早に話始めた。


「南ギルドに行ったら、暗殺の仕事を無理やり請け負わされたんです。失敗したり、逃げたりしたら殺すって・・・僕はどうしたら・・・」

「それは大変でしたね。我がギルドで保護しましょう。マーサ、宿泊所に案内を頼む」


 コボルトの少年は、受付嬢のマーサさんに連れられて、ギルドを出て行った。


「心配しないで下さい。南ギルドは、暗殺の仕事なんかは、請け負ってませんよ。皆さんも南ギルドには行きましたよね?」

「はい」

「どう思いました?普通、入ろうとは思いませんよね?」

「そ、それは・・・」


 あんな所に入ろうという気には絶対になれない。


「それが普通の方の反応です。ここだけの話、南ギルドがあるのは、あの場所ではないんです」


 ギルマスが言うには、南ギルドは別の場所にあるようで、町で情報を集めれば、たどり着けるという。


「正規の場所にたどり着けない時点で、才能なしとして扱われ、所属は認められません。また、暗殺などの変な依頼を持ってくる者や、暗殺の仕事をしたいという変わった者を選別するのに利用しています。あの少年の場合ですと・・・」


 才能はないが、常識は持っているということになる。

 因みにこれは南ギルドがよくやる嫌がらせらしい。「無能は去れ」というメッセージだ。そして暗に北ギルドに駆け込むように持って行くようだ。


「可哀想ですが、この町で斥候として生きていくのは無理でしょうね。コボルトですから、鼻が良ければ、調合師なんかの仕事を斡旋していこうと考えてます」



 来客はまだ続いた。

 今度は片目の戦士風の男がやって来た。


「ギルマス、マーサ殿、世話になったな。実は故郷の冒険者ギルドで、職員兼訓練指導員として雇ってくれることになった。それで礼を言いに来たんだ。このギルドに来るのも、今日が最後になるだろう」


「おめでとうございます。ライアンさんの頑張りが認められたんですね」

「でも困ったねえ・・・ライアンが抜けると、依頼が溜まる一方だよ・・・」

「マーサ、いいじゃないか。ライアンさんに甘えてばかりではいけないよ」

「分かってるって・・・よかったね、ライアン・・・」


「礼を言うのはこちらのほうだ。それでは、失礼する」


 颯爽と戦士風の男は去って行った。


 ギルマスは言った。


「こんな感じのギルドなんです。貴方たちの来るような場所ではありませんよ」


 私たち三人は顔を見合わせた。

 皆、同じ気持ちだった。


「このギルドに所属させてください」

「頑張るニャ」

「力になるぞ」


 ギルマスはため息を吐いて言った。


「変わった人たちだ・・・」



 ★★★


 私たちが北ギルドに所属した理由は、自分たちの境遇もそうだが、ギルマスやマーサさんの人柄とギルドの方針に共感したからだ。ランクが低い冒険者や他のギルドをお払い箱になった冒険者を馬鹿にするようなことはしない。

「夢を諦めさせている」と言っているが、実際は傷を癒し、スキルを身に付けさせ、新たな人生を歩ませようとしている。


 それに私たちはお金に困っていない。

 クロフォード伯爵に貰った資金はまだあるし、コツコツと依頼をこなしていけば、十分に生活はしていける。そもそも、一番の目的はザマーズ王国から逃れるためだからね。


「本当にいいんですね?お金になるような依頼はありませんし、ほとんどはE~Fランクの仕事ばかりですよ・・・」

「構いませんよ」

「では、契約書を持ってきますね」


 契約に際して、ギルマスから簡単な依頼ばかりを大量にこなさないようにと言われた。


「簡単な依頼だけで、食いつないでいる者もいますので・・・」

「だったら、長期未処理になっている依頼を中心に受けますよ」

「それは助かるのですが、依頼自体が・・・」


 依頼自体もいい物がないらしい。

 他の3ギルドが受けてくれない依頼をこっちに持ってくることが多いそうだ。苦労する割に報酬が安かったり、そもそも冒険者の仕事か?というような仕事まであった。


「これは酷いニャ・・・」

「うむ・・・」


 ミウとダクラも渋い顔をしている。


「では最初の依頼は、こちらを受けます」

「ほ、本当にいいのですか?スライムの駆除ですが・・・」

「慣れていますからね」


 スライムの駆除は、カナリマでも定期的にやっていた。

 報酬が安い割に苦労する。でも、依頼者は本当に喜んでくれる。それにごく稀にだが、大きな魔石が採取できることもある。そして、一番の理由は・・・


「ダブル聖女パンチ!!」


 一心不乱に左右交互にパンチを繰り出す。

 努力の甲斐があり、「部分鋼鉄化」のスキルがレベルアップして、体の2箇所を鋼鉄化できるようになった。なので、両拳を鋼鉄化してパンチを繰り出していく。慣れもあり、どんどんとスライムを駆除して行った。単純に新たなスキルを使ってみたかったんだよね・・・


 作業中、他の冒険者から罵倒されることが度々あった。


「最底辺のパーティーなんだろうな・・・」

「ああなったら終わりだな」

「汚いわね・・・同じ冒険者として恥ずかしいわ」


 ダクラなんか弓を引き絞り、暗殺しようとしていたからね・・・

 ミウが必死で止めていたけど。


「私たちが頑張れば、北ギルドへの依頼も増える。そうなれば、ギルド員も潤うからね」


「なんかアオイが聖女っぽいことを言っているニャ」

「そうだな」


 これでも私は「聖女」で登録している。

 回復魔法は使えないけどね・・・

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