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鋼鉄の聖女~勇者召喚されたOLですが、不遇なジョブの所為で追放処分を受けました。でも実は、私のジョブは最強のようで、いつの間にか無双しちゃってます。  作者: 楊楊
第一章 冒険者アオイ

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16 新たなスキル

 最近の私の生活について語ることにしよう。


 生活のほうはお金に困ることはなくなった。というか、かなり裕福だ。

 指名依頼の報酬はかなり高い。月に1回でも十分に生活していける。それに指名依頼は、ほとんどが住民の生活に直結する依頼ばかりだ。そのため、漁師のワーフさんや養蜂場のファーラさんをはじめとした多くの住民から、頼んでもいないのに差し入れが届く。実質、食費は掛からない。


 指名依頼も多くて、月に2~3回程度なので、かなり暇だ。


 スローライフだ!!やったあ!!


 と喜んでいたのは、最初の1ヶ月だけだ。ほとんど仕事をしなくなると、社畜生活が長かった私の体は逆に悲鳴を上げる。それで、ジャンヌさんに頼みこんで、ギルドの臨時職員に雇ってもらった。

 これも最初はよかった。だけど、2週間も経つと仕事がどんどんと増えていく。徹夜になることも、しばしばある。お金に余裕があるから、そこまで仕事をする必要はないんだけど、それでもこちらから頼んで、雇ってもらっている手前、断りづらい。


 人生とは、なんと上手くいかないものかと思ってしまう。


 最近は、パーティーメンバーのミウとダクラとは別行動だ。

 朝食前に一緒にトレーニングをして、朝食を食べてからは次の日まで会わないことも、よくある。そもそも、私は何が何でも冒険者をしたいわけではないし、ミウもダクラも他に目的があるようなので、特に気にしていはいない。でも、休みが合えば、一緒に買い物とかには行くけどね。


 今日もいつもどおり、ギルドに出勤する。

 繁忙期は過ぎたようで、最近はギルドの仕事も少し楽になった。なので、休憩を兼ねて、楽な業務を割振ってくれた。訓練所の監視員だ。

 特に何もなければ、本当にすることがない。訓練をしていた冒険者が怪我をすれば、回復術師を呼びに行ったり、喧嘩があれば仲裁に入るくらいだ。

 まあ、それもあまりないんだけどね。


 なので、私は胡坐をかいて、鋼鉄化のスキルを発動させる。

 なんで、こんなことをするかって?


「流石は聖女様だ!!微動だにしない」

「一朝一夕にできものではないな」

「何かオーラを感じるわ」


 だって、凄い人扱いしてくれるからだ。

 立ったまま、訓練中ずっと微動だにしないと不審がられるので、これを思い付いた。実際にやってみると、冒険者から尊敬の眼差しを向けられるので、調子に乗ってずっとやっている。


 そんな時、急に頭にイメージが浮かんだ。


「部分鋼鉄化」


 呟いてみると、具体的なイメージが浮ぶ。それは体の一部を鋼鉄化させるスキルだった。

 試しに右手の拳を鋼鉄化してみた。近くにあった打ち込み台にパンチを撃ち込む。全く痛くない。


 もしかして、これで私は無双できるんじゃ?


 私は最大限力を込めて、パンチを繰り出す。


「聖女パンチ!!」


 必殺技を叫んだのは、単に恰好がいいと思ったからだ。

 私のイメージでは、木製の撃ち込み台が粉々に砕け散ると思っていたが、撃ち込み台は微動だにしない。


 気付いてしまった・・・拳が固くなっても、パンチを生み出す力が弱ければ、威力が出ないことに・・・


 大声で叫び、パンチを繰り出したので、冒険者の視線を独り占めすることになってしまった。

 恥ずかしくなった私は、意味深に言う。


「奥儀の完成には至りませんか・・・まだまだ修行が必要ですね」


 そして、瞑想の態勢に再び戻った。


「もしかしたら、聖女様は物凄い技を習得しようとされてるんじゃないのか?」

「多分そうだろう」

「アレよ。奥儀を出すには精神の集中が大事なのよ」


 何とか誤魔化せたようだ。



 ★★★


 それからは人前で、聖女パンチのトレーニングはせず、朝早く起きて、近くの大木にパンチを繰り出すことにした。痛くないし、思いっきり打てるから、いい運動にはなるんだけど、全く威力が上がらない。朝のトレーニングの時間になり、ダクラとミウがやって来た。

 事情を説明する。


「スキルのことはどうか分からないけど、強いパンチの打ち方は、ダクラに聞けばいいニャ」

「これでも、そこそこ体術は得意だから、基本のパンチくらいなら教えられるぞ」


 最初から二人に相談すればよかったと思う。


 その日から、ダクラに付きっ切りで訓練を見てもらった。どうやら、私に才能はないらしく、ダクラも困っている。


「これではスライムくらいしか倒せんぞ」


 えっ!!スライムは倒せるの?

 だったらそれで充分なんですけど・・・


 私はミウとダクラに提案する。


「折角だから、スライムの駆除依頼を受けてみない?」


「アオイがそう言うなら、受けてもいいニャ」

「久しぶりに三人で、依頼を受けよう」


 そういうことで、私たちはスライムの駆除依頼を受けることにした。


 ★★★


 私は今、非常に後悔している。

 なぜ、気付かなかったのだろうか?スライムの「討伐」ではなく、「駆除」と呼ばれていることに・・・


 私はドブに詰まったスライム目掛けて、一心不乱に聖女パンチを繰り出す。何とかスライムは倒せている。でもなんか想像していたのと違う。

 というのも、スライムが大量にドブに詰まるので、それを駆除するのだが、まったく攻撃してこないし、戦闘と呼べるものではない。


「Fランク冒険者がやる雑用だニャ」

「誰もやりたがらないからな・・・」


 二人には、私が危なくなるまで、手を出すなと言ってあるので、手伝ってもくれない。

 仕方なく、延々と聖女パンチを繰り出している。


 何とか駆除し終えて、ギルドに帰還すると、多くの冒険者から称賛されることになる。


「流石は聖女様ね。誰もやりたがらない依頼を率先してやるなんてね」

「頭が下がる。Bランクの冒険者でも初心を忘れていないな」

「俺たちも、考えなければならんな」


 変に勘違いされてしまった。

 これ以後、スライムの駆除を定期的に行うことになったのは、言うまでもない。

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