103 エピローグ
結論を言うと、高校生たちは旅立つことになった。
順を追って話すと、高校生たちに同情の声も多く上がった。
カリエスやチャールズ、クルミが中心となって、減刑を申し出た。まあ、勝手に勇者召喚された被害者だし、それに、情報統制された状況で魔王討伐に向かわされたんだからね。
高校生たちの被害者はというと、ゴブリンたち弱い魔族、護衛に就いていた冒険者、そして誘拐された私ということになる。魔族たちには、治療費を私たち国家連合会議から支払っているし、冒険者はそもそもがそういう仕事だから、治療費が貰えてラッキーくらいにしか思っていない。
そして、私もいつも通り無傷だ。
よって、被害者が重い処罰を望まないという建て前で、高校生勇者たちは、かなり軽い刑罰で済むことになった。日本風に言えば、保護観察という感じだ。
そして、今日彼らは出発の日を迎えることになった。
彼らには、研修や訓練を受けてもらい、Cランク冒険者になってもらった。旅立つ理由は、未開の東大陸の調査任務のためだ。彼らにはカリエスとクルミが同行する。
「我がしっかりと最後まで、指導していれば彼らの未来も変わっていたかもしれないから、せめてもの罪滅ぼしだ」
「あの時、教会に逃げ込んでなければ、レンたちと同じ運命を歩んでいたと思います。何だかんだ言っても、レンたちとは友達でしたし・・・困っている時は支えてあげたいし・・・」
相変わらず、カリエスは責任感が強いし、クルミも優しい。
見送りは、ひっそりとして寂しいものだった。
勇者パーティーが魔王を討伐しに旅立つわけでもないし、ただの冒険者パーティーが依頼に出発するだけだからね。
別れ際、私にいつも辛く当たっていたミスズが声を掛けてきた。
「本当にごめんなさい・・・貴方が嫌いってわけじゃなくて、年齢の離れた姉と同じ感じがして・・・」
ミスズが言うには、ミスズの姉は真面目で何でも結果を出してきたそうだ。それで、両親に姉と比べられて育ったミスズは、いつしか姉を嫌いになっていったという。
「八つ当たりしていたんだと思うわ・・・本当はお姉ちゃんに甘えたかっただけかも・・・もう会えないけど」
こんな時、どう答えていいかなんて、分からない。だから、いつもの癖で言った。
「それは分からないわよ。貴方にも神の加護がありますように」
「お姉ちゃんも、私が我儘言っても優しかったな・・・ありがとう」
ミスズは笑顔だった。
高校生勇者たちを見送った後、私はミウたちに言った。
「それじゃあ、私たちも行きましょうか?」
「そうだニャ」
「うむ」
「ルージュ、西大陸でよかったのよね?」
「そうじゃ。母上が言うには、多分困っておるとのことじゃ。連絡も取れんらしいからな」
私たちは、竜王から直々に依頼を受けていた。
依頼内容はドラゴンの探索と保護だ。そのドラゴンというのは、雷竜と呼ばれる種族で、常時体に電気を帯びているようだ。なので、人間でそのドラゴンの相手をできるのは、私しかいない。
まあ、そうなるよね・・・
私とミウとダクラはルージュに乗って、空に舞い上がった。
「果たして、西大陸に旨い物はあるのじゃろうか・・・」
またそれか・・・
まあ、それが私たちっぽいけどね。
これでこの物語は終了となります。
この物語を作成するきっかけは、単純な思いつきです。某大人気RPGドラ〇エの全く使えない呪文、「アスト〇ン」しか使えなかったらどうなるだろうと思って、執筆を始めました。当初は短編で終わる予定だったのですが、思いのほか長い話となりました。これも皆様のお蔭です。
さて、話は変わりますが、新作を執筆しましたので、読んでいただけると幸いです。こちらも少し、変わった設定の主人公となっております。
「異世界のんびり刑務官~異世界で無双?そんなの俺は求めてない。ただ安定した生活がしたいだけなんだ!」
https://book1.adouzi.eu.org/n4150lk/




