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102/103

102 ここにいたのか・・・

 私の目に飛び込んできたのは、衝撃の光景だった。

 目の前で騒いでいるのは、高校生勇者の三人、「勇者」のレン、「剣聖」のサラ、そして「大魔導士」のミスズだった。


「な、何でアンタがいるんだ?」

「どういうことだ?」

「ちょっと、何でオバさんがいるのよ!?」


 それはこっちのセリフだ。何でお前らがここに?


 レオニダスが言う。


「救世主様、お知り合いですか?」


 ミスズが言う。


「知り合いも何も、一緒に勇者として召喚されたオバさんよ。出来損ないだから、勇者をクビになって追放されたんだけどね。それにしても教祖って何よ?分かるように説明してよ」


 この子はあの時のまま、私への当たりは厳しい。

 レオニダスが、説明をする。結構悪意のある説明だったが、8割程は合っている。


「・・・つまり、この女は荒唐無稽な話を馬鹿な民衆に信じ込ませる能力に長けているのです。神の加護で温泉を見つけたり、ドラゴンを討伐したり・・・そんなことを誰が信じるんだという話ですよ」


 ミスズが言う。


「このオバさんは、私たちが苦労しているのも知らないで、勝ち組の人生を歩みやがって!!絶対に許さないわ。天罰が下ればいいのよ。そんな悪い奴は、即刻処刑よ!!」


 まあ、スキルがあるから、アンタらに殺されるなんてことはないんだけどね。


 レオニダスが言う。


「ミスズ様、こんな極悪人でも、まだ利用価値はあります。処刑するにしても、今ではありませんよ」


「分かったわ・・・地下牢にでも放り込んでおきなさい」


 そんな話をしている時だ。爆発音が鳴り響いた。


「な、何だ!?」

「どうしたのよ?」


 レンとミスズが騒ぎ、サラが諫める。


「落ち着け、まずは状況を把握しよう」


 すぐに盗賊の手下が駆け込んで来た。


「た、大変です!!大量の軍隊に包囲されています。それにオーガや強そうな魔族もいっぱい来てます」


 レオニダスが言う。


「なぜだ!?ここがバレるなんてあり得ない。尾行には細心の注意を払っていたはずなのに・・・」


 勇者たちは青ざめている。


「オーガだって!?それに魔族・・・」

「流石に勝てんな・・・」

「どうしてよ!?私が何をしたっていうの?」


 私の尾行はルージュに乗ったミウとダクラが行い、ここが分かったところで、待機していた冒険者や魔族たちをドラゴンが運ぶという作戦だ。人間同士の争いに首を突っ込んではいけないドラゴンたちだけど、このくらいだったらいいそうだ。人を運ぶだけだからね。


 しばらくして、ミウとダクラの声が聞こえてきた。


「アオイ!!どこニャ!?」

「いたら、返事をしろ!!」


 私も大声を上げる。


「ミウ、ダクラ!!ここよ!!」


 すぐに謁見の間になだれ込んできた。ミウとダクラの後ろにはカリエスもいるし、オグレスを筆頭にしたオーガたちもいる。

 レオニダスが言う。


「コイツを人質に交渉しましょう。奴らにとって、この女は重要人物ですからね」


「仕方ない・・・そうするか・・・」


 レンが私の首に剣を突き付けた。


「おい!!この女がどうなってもいいのか?」


 まあ、私が普通の女性なら、それで効果があるのかもしれない。しかし、この作戦の肝は私が囮だということだ。人質にされても、どうということはないからね。


 案の定、レンは問答無用で、ミウを筆頭にした魔法攻撃の集中砲火を浴びた。もちろん、私も多数被弾している。


「そ、そんな・・・」


 レンは吹き飛ばされて、戦闘不能になっているが、私はいつも通り無傷だ。

 ミスズとサラが抵抗を試みるが、精鋭の冒険者やオーガたちには歯が立たず、すぐに拘束された。


 ミスズが言う。


「何で、私はいつもこうなるのよ・・・私が何をしたっていうの?」


 この期に及んで、まだ自分が被害者面なのには、流石の私もキレた。


「何をしたかって?度重なる盗賊行為。それに私を誘拐したこと。日本で同じようなことをすれば、10年は刑務所に入らなくちゃならないわよ!!」


「そ、そんな・・・私たちは、世界平和のために・・・」


「盗賊をすることが、何で世界平和になるのよ!?高校生なんだから、それくらい分かるでしょ!?」


 カリエスが私とミスズの間に入ってきた。


「アオイ殿、その辺にしておいてくれ。後はこちらが取り調べる」


「分かりました。お願いします」


 三人とレオニダスは拘束され、連行されて行く。



 ★★★


 それから3日、事件の全体像が判明した。

 レンたち高校生勇者たちは、ザマーズ王国を出国し、一直線で魔王国に向かったそうだ。途中、グレンザに立ち寄ったらしいが、1泊しかしなかったようだ。そして、オグレスが治めるデモンズタウンに到着する。

 魔族=悪い奴という思い込みから、門番をしていたオーガに問答無用で攻撃を仕掛けたが、酔っ払いと勘違いされ、あえなく返り討ちあった。


 それでその後、どうするかという話になったそうだが、サポートパーティーとして同行していた冒険者たちにこう言われたそうだ。


『いい話があります。直接戦って勝てないなら、頭を使うんです。方法については、俺たちに任せてください』


 因みにこのパーティーは、実力はあるけど、素行不良で有名なパーティーだった。

 言われるがままに盗賊行為を行っていたそうだ。本人たちは、それが世界平和につながると信じていたようだけど。


 そんなところに、私たち「鋼鉄の聖女教団」や国家連合会議を良く思っていない旧レイア教会関係者たちが合流し、勢力が拡大した。高校生三人は救世主として崇められ、これから魔族を滅ぼすため、軍事行動を起こす予定だったという。


 まあ、同情の余地はあるようだけど・・・


 レオニダスを含めた教会関係者や事情が分かっていて盗賊行為をしていた者たちは重罰でもいい。でも高校生たちの処分は、悩むところだ。

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