101 いつもの作戦
いつもの作戦を決行するに当たって、まずはグレンザの町に噂を流した。
その噂とは、こんな感じだ。
「鋼鉄の聖女教団」の聖女がお忍びでグレンザから魔王国に向かう。精鋭の護衛は別任務でいない。聖女はこの辺で盗賊が出没することを知らないようだ。その他にも・・・
これは私たちと同行したカリエスが考えた作戦だ。
盗賊団の関係者は、必ずグレンザで情報収集していると睨んだからだ。過去の襲撃状況から見て間違いないだろう。
ここまで来ると分かると思うが、いつもの作戦というのは、私を使った囮作戦だ。
思い返せば、大量のフォレストウルフに齧られたり、キラーピラルクに食べられたり、ボンバーロックの群れに突っ込んだり・・・今更盗賊ごとき、怖くも何ともない。
★★★
私は馬車に乗り、グレンザの町を出発した。
報告によると、馬車をつけてくる不審な集団がいるらしい。まあ、それが狙いだからね。今回、周りには、ミウもダクラもいない。彼女たちは私の追跡任務があるからだ。
グレンザを出て半日程経ったところで、爆発音が鳴り響いた。
襲撃が始まったのだ。私と同行しているのは精鋭の冒険者たちだが、打ち合わせどおり、ある程度戦闘をしたら、私を置き去りにして逃げていった。しばらくして、私の馬車の中に盗賊がなだれ込んで来た。
「私は聖女アオイです!!こんなことをして、ただで済みませんよ。すぐに解放しなさい」
「従者に見捨てられた聖女様は偉そうだな。ここで殺してもいんだぜ」
「そ、そんな・・・天罰が下りますよ!!」
「俺たちは知ってるんだぜ。新月の夜の前後3日は、神の加護が効かないってな」
そんなことはないし、そもそも神の加護ではなくスキルだ。
これも噂として流していた。今しかないと思ったら、多少強引でも襲撃してくると思ったからだ。私も、それっぽい演技をする。
「な、何でそれを知っているんですか!?」
「どうやら噂は本当のようだな。おい!!この女を拘束しろ」
私はロープで後ろ手に縛られた。
私は盗賊たちに馬車ごと拉致された。そしてまず、盗賊たちのを指揮していた親玉に会わされた。
「久しぶりだな、聖女殿」
「えっと・・・」
「レオニダスだ!!まさか、貴様・・覚えてないのか?」
それが覚えてないんだよ・・・
結構、微妙な雰囲気になったところで、レオニダスが言う。
「異端審査で会っただろ?その時、仕切っていたのが俺だ」
「あっ!!はい・・・何となくは・・・」
「どうして、俺がここにいるか驚いただろう?」
「そ、そうですね・・・はい」
別に驚くも何も、今の今まで記憶に無かったんだけどね。
そんなレオニダスだが、聞いてもいないのに色々と話をしてくれた。
何でもレオニダスを含めた旧レイア教会の関係者の多くは、投獄されていたらしいが、脱獄をしたり、賄賂を渡して釈放されたりしたそうだ。
そして、そんな彼らが寄り集まって盗賊団を結成したようだった。
「脱獄して盗賊団を結成するなんて、滅茶苦茶悪い人じゃないですか?」
「盗賊団ではない。レジスタンスだ。まあ・・・メインの活動は盗賊行為だが・・・」
じゃあ、盗賊じゃん!!
というツッコミは入れなかった。ここでレオニダスを怒らせても、何の得にもならないからね。
「これから私はどうなるのでしょうか?」
「個人的には、八つ裂きにしてやりたいが、まずは救世主様と協議をする。それなりに利用価値がありそうだしな。交渉にも使える」
救世主?
私はレオニダスに話を合わせることにした。
「ではどうか、レオニダス様から救世主様に取り次いでいただけませんか?これでも教祖っぽいことをしていましたから、役に立つかと・・・」
「ふむ・・・」
レオニダスは少し考え込む。
「分かった。では大人しくしていろ。そのうち会わせてやる」
「お願いします」
私は救世主がいるアジトに連れて行かれることになった。
ここからは目隠しをされて、運ばれるようだったので、トイレだけさせてほしいとお願いした。ふと空を見上げると、不自然に私たちの上を飛んでいるものを見つけた。パッと見は鳥にしか見えないが、実はルージュだ。その上にはミウとダクラが乗っていると思う。
まあ、これでアジトが分かるから、作戦はほぼ成功と言っていい。
それから3日、私は廃城のような所に連れて来られていた。
どうやらここが盗賊団のアジトらしい。
レオニダスに連れられて、城に中に入った。
謁見の間でレオニダスが救世主に説明をする。
「この女は、「鋼鉄の聖女教団」の代表で、国家連合会議の議長でもあります。利用すれば、我らの野望も叶います」
どうやらレオニダスは、救世主に自分の有能さをアピールしているようだった。
「おい、女。面を上げよ」
私は顔を上げた。
驚きの光景が飛び込んできた。
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