【エピローグ】 翠の地竜と天竜の娘(1)
エピローグは物語の時系列順に掲載します。
読みにくかったらすいません。
(なんだかあっと言う間だったなぁ……)
春節祭の前夜。私はいつものように翠の国王城に与えられた寝室にいた。これから眠る所だけれど、いつもと違うことが一つだけある。それは寝巻きではなく、私がこの世界に来た時に来ていた高校の制服を着ているということだ。
眠っている間にこの世界に来たのに何故制服なのかと言うと、学校へ帰るなり自室に篭った私は早く大好きなライトのベルの新刊の続きを読みたくて、制服のままベッドの上に寝転んだから。そして読んでいる途中で転寝してしまい、そのままこちらの世界に来てしまったんだ。
そして今私が制服を着ているのは、今夜が元の世界に帰る日だから。緊張を誤魔化すように、私はベッドに座ったままのリアス君に話しかけた。
「なんだかドキドキするね」
「…………」
「リアス君?」
黙ったまま下を見ている様子に不安になって名前を呼べば、リアス君は立ち上がって私の腰にぎゅっと抱きついてきた。
「……本当に行くのか?」
「うん。帰って、どうしても話したいことがあるの」
「…………。分かった」
しばらく私のお腹の辺りに顔を埋めたままだったリアス君は、そっと顔を上げてそう呟いた。そして私の手を引き、共にベッドに入る。
本当はリアス君が行って欲しくないと思っている事は知ってる。いつもだったらもっとだだをこねる彼だけど、今夜ばかりは違った。私の事を考えてくれているんだよね。不安にさせてごめんねリアス君。
「ごめんね」
「いいんだ。……カノンが望むなら」
「ありがとう」
横になったまま、今度は私からリアス君を抱きしめる。自分よりも小さな体のこの男の子が、この世界に私の居場所を作ってくれた。いつだって私の手を引いてくれた。
「絶対俺の所に帰ってきて」
背中に回ったリアス君の手が、私を抱きしめ返してくれた。
ねぇ、リアス君。君がこの世界にいてくれるから、私は迷わずあちらの世界に帰ることが出来るんだよ。
「うん。大丈夫。絶対帰ってくるよ」
この世界で出来た新しい家族、同じ境遇になって出会った友人達、そして私を想ってくれる愛しい男の子。
(大好きだよ、リアス君――)
緊張で眠れないかと心配していたけれど、互いの温もりを感じているうちに、いつの間にか私は眠りに落ちていた。
そして翌朝目が覚めた時、そこはもう私の良く知る実家の自室のベッドの上だった。




