表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/47

夢で逢えたら

 大学の新歓コンパで酔ってしまい、気付いたら村の牧場の端で寝ていた事。今お世話になっているロリズリー一家の事。そこの一人息子ヒュージの誘いで、村の若者達と共に新節祭に来た事。そこで皆とはぐれてしまい、偶然セナードと出会った事。


「え? じゃあ、セナード王子とは今日初めて会ったの?」


 燈里ちゃんの声と共に皆さんが一様に驚いた顔をする。それも無理はないと思う。何故なら今もセナードは私を抱きかかえたままで(そして何故かヒュージの名前が出た瞬間苦しいぐらい腕の力が篭った)、初めて会った人とこんなにベタベタしているのだから……。


 けれど完全に初めてかと訊かれたら私達の場合は少し違う。どう説明するか一瞬迷って背中のセナードを振り返る。でも彼はあまりこの話し自体に興味がないのか、目が合うとにこっと微笑んだだけ。

 あぁ…えーっと……、髪は撫でなくても大丈夫だよ、セナード。私が察して欲しかったのはそう言うことじゃないんだけど……。まぁ、ありのままを話すしかないね。


「話しても理解していただけるか分からないんですが……、実際に会うのは今日が初めてです」

「実際に?」

「はい。私は……この世界に来る前から、何度か夢でセナードに会っていました」


 すると皆が一斉に口を閉ざした。あれ? てっきり信じられない!と言葉が返って来るかと思っていたけれど、それぞれに何か考えを巡らせているみたい。


「そう言えば、私も夢を見ていた気がします」


 続いて言葉を発したのは栗色の柔らかそうな髪をした美波さん。夢と言うのは私のようにこの世界の誰かの夢を見ていたってことなのかな?

 私と同じ疑問を持った千紘さんが美波さんに問いかける。


「なら、アーク団長の夢を?」

「はっきりと姿を見たわけじゃないんです。それに私が夢を見たのはこの世界に来た時だけなのですが……、夢の中で泣き声が聞こえたんです。その声の傍に行ってあげたいって思ったら目が覚めて……、アークさんの下に」

「……成る程。私は夢を見た覚えはないのだけれど、燈里ちゃんと風音ちゃんはどう?」


 すると二人共首を横に振った。


「覚えてないなぁ。だって、この世界に来てからしばらくはここにいる事自体が夢だと思ってたし」

「私も」

「……夢は忘れてしまうのが普通ですから」


 思わず口を挟むと、彼女達が不思議そうに私を見た。う……、余計な事言っちゃったかな。

 すると気後れしている私をフォローするように千紘さんが疑問を挟む。


「あぁ、レム睡眠がどうこうってやつ?」

「あ、はい。夢を見るのはレム睡眠時ですが、覚えているのは起きた直前に見ていた夢だけなんです」

「へぇ。直前がノンレム睡眠だったら夢は見てないから、覚えている確率は結構少ないってことなのね」


 頷く千紘さんの横で、話が難しいのか、燈里ちゃんと風音ちゃんは首を傾げている。そして美波さんが話を纏めてくれた。


「そうなりますね。覚えていないだけで誰でも夢は毎日見ていますから。千紘さん達も同じようにこの世界の夢を見ていても不思議ではありません」

「それってもしかしてさぁ、夢の中でこの世界とあたし達の世界が繋がっているって事?」


 燈里ちゃんが漏らしたその問いに、皆が目を丸くした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ