夢から覚める時
今、私の目の前には信じられない光景が広がっている。
右隣には私と手を繋いだままのリアス君。左隣には先程広場で初めて会ったばかりの橋口ひなたさん。(何故かひなたさんの彼氏さん?はずっと彼女を後ろから抱っこしている。ラブラブだから??)
そして何より圧巻なのが私達を囲んでいる人達。年齢も性別もバラバラな彼らのほとんどが王族を含む各国の要人で、三人いる女性の全員がなんと日本人!!
今朝リアス君から私の他にも異世界人がいると聞いてはいたけど、聞くのと見るのは大違い。私は此処で度肝を抜かれるという言葉を初めて実感した気がする。
現在私達がどこに居るのかと言うと、実はここ白の王城の中。私にとっては二度目の訪問だ。リアス君に連れられて案内されたのは、三十人程が会議出来そうな大きな部屋。そこで待っていたのが彼らだった。そして聞かされたのは彼らの名前と、境千紘さんと津島燈里ちゃんの二人が、元の世界に帰ろうとしていること。
中心になってこれまでの説明をしてくれた千紘さんの話は、最初驚くと同時に私を興奮させてくれた。だって季節祭と共に異世界から女性が現れるなんて運命的! これぞファンタジー!!と内心叫んでいたくらい。それに一人じゃない、という事実が私を浮かれさせていたと思う。でもその後、その気持ちがまるで冷水をかけられたみたいに一気に冷めた。彼女達が目指している元の世界への帰還。それはこれまでずっと私が深く考える事から逃げていたことそのものだったから。
隣でひなたさんの彼氏さんが彼女を抱きしめる腕に力を篭めたのが視界の端に映った。そっか。彼は白の国の第二王子。ならばリアス君と同じく竜の血を濃く受け継いでいる筈。ひなたさんはセナード王子の番なんだ。それを認識すると同時に、私とずっと手を繋いでいるリアス君の手にも力が篭った。
「カノン?」
「リアスくん……」
「カノンは帰ったりしないよな?」
「…………」
その問いに、私は即答することが出来なかった。だって、まだ私はその答えを持っていない。それに何より、リアス君の声が泣きそうに震えていて……。そんな彼を前にその場しのぎの嘘なんてつける訳が無い。
気付けばリアス君を抱きしめていた。彼の背に回した手首には銀色の腕輪。それはリアス君の綺麗な翠色の鱗で模様が作られた、婚約の証。
私、やっぱりリアス君に嘘はつきたくない。
「私ね、リアスくん。もし、もう一度日本に戻れるのなら、……戻りたい」
「カノン……?」
「戻って家族と話をしたいの」
「俺はヤダ!!!」
「リアスくん……」
「だって、戻れたとして……、もう一度こっちに来れるかどうかなんて分からないじゃないか。そんなのはヤダ! 絶対ヤダ!!」
懇願するように私よりも小さな体一杯で抱きしめてくるリアス君。
ねぇ、リアス君。それは、その気持ちは私も一緒なんだ。最初は戸惑いが大きかったけれど、今はもうリアスの存在がなくなることなんて考えられなくなっている。
だから――




