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既知との遭遇?

「うわーっ! 懐かしい!!」


 久しぶりに訪れた白の国王都の光景に私のテンションは上がりっぱなしだ。馴染みの八百屋、人気のパン屋、歩きなれた石畳の道、そして人々の笑顔。何もかもが懐かしい。


「あれからもう一年も経ったんだよねぇ……」


 丁度一年前、新節祭の初日に私はここでリアス君と出会った。それからは色んな事がありすぎて、月日なんてあっと言う間に過ぎてしまった。


「リアス君?」


 それまでずっと街並みを眺めていた私は、隣を歩いている筈のリアス君を見る。何を言っても返事がない事に気付いたからだ。


「どうしたの? 疲れちゃった?」

「…………」


 顔を覗きこんでみるけどやっぱり返事は無い。

 実は今朝、私のベッドに潜り込んでいた時からこんな調子で元気が無かった。理由は多分、その時リアス君が話してくれた内容のせいなんだろう。

 新節祭に参加する為に白の国へ行ったリアス君が突然戻ってきた訳を聞いた後、竜化したリアス君の背に乗って一緒に白の国に来た。そして今、私は人の姿に戻ったリアス君と王城に向かって歩いている所だ。

 でも折角の新節祭だし、二人で一緒に楽しみたい。


「ね! リアス君。折角此処まで来たんだし、色々見て回ろうよ!」

「……でも」

「去年は二人でゆっくりお祭りを楽しむ時間はなかったじゃない? ……だめ、かな?」


 硬い表情のリアス君の反応に、最後は弱気になって問う。けれどリアス君は少し考えた後、首を縦に振ってくれた。


「よし! じゃあ、まずは美味しいもの食べよう!」


 リアス君と繋いだ手を引いて再び歩き出す。ブラブラ歩いて見つけた屋台で軽食やお菓子を食べて、工芸品やアクセサリーのお店をひやかして、そうしている内に段々とリアス君の表情にも柔らかさが戻ってきた。


 その後中央通りより西側の広場まで来た私達は噴水近くで大道芸を見物。大玉の上でバランスを取りながら行っているジャグリングだ。

 一通り見物して、次へと移動しようとした時だった。私の視界に気になる人が飛び込んできたのは。

 広場の奥、木々の多い場所に座っているその人は真っ直ぐの長い黒髪を右耳の辺りでひと纏めにして前に垂らしていた。大人しそうな印象の女の人。肌は白の国の人とは違い、黄色味を帯びた象牙色。


(あれ? あれってもしかして……いやいや、そんな分けないよね? でも黒髪はともかくあの肌の色……めっちゃ日本人っぽいんですけど……)


 しばらく眺めていたら、そこでやっと彼女が後ろから男性に抱きしめられている事に気付いた。恋人同士なんだろう。男性側が動いたかと思ったら、二人の顔が重なって……


(キ、キスしてる!!)


 このままじゃただの覗きだと思い、慌てて顔を逸らす。けれど、そんな私に気付いたリアス君がこちらを見上げて首を傾げた。


「どうした? カノン」

「あ、いやいや! 違うよ! 決して覗きなんて趣味は無くてだね!!」

「覗き?」


 あ~~~!! 弁解しようとしたのに見事墓穴。けど、リアス君は予想外の反応を示した。


「セナード殿下?」

「え?」


 その声に顔をこちらに向ける木陰のカップル。そして、女性の方が私を見て目を丸くした。


「え? 日本人?」

「あ、やっぱり貴方も日本人ですか!?」


 うわ~!! びっくり。こんな状況でまさかの日本人との遭遇です。

 


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