ゲドー大陸
「ゲドー様」
「何用だ」
謁見の間にマホが入室してきた。
俺は玉座でふんぞり返っている。
「いい知らせなのです」
「聞いてやる」
「最後まで抵抗を続けていた一国が堕ちたのです」
「ほう、つまり」
俺はますますふんぞり返る。
「この大陸の全ての国は、ゲドー王国の支配下に入ったのです」
「ふははははは!」
俺は立ち上がった。
「ゲドー様、おめでとうなのです」
「ふはははははははは! 当然の結果だな」
「さすがなのです、ゲドー様」
「ふははははははははははは! よい、もっと讃えろ」
「ゲドー様こそ真の支配者なのです」
「ふはははははは! はーっはっはっはっはっは!」
このゲドー様にかかれば、大陸の支配など容易いことだ。
何と言ってもこの俺は最強の存在だからな。
「この俺は支配者だ」
「その通りなのです」
「では本日より、この大陸をゲドー大陸と名付ける」
「全国にそう通達するのです」
うむ。
うむうむ。
「ちなみに最後の一国を堕としたのは、キシリーさん率いる騎士団の成果が大きいのです」
「ほう、奴も我がしもべとして貢献しているようだな」
「がんばってくれたのです」
騎士団は役に立たんと思っていたが、率いる人間が変われば違うものだな。
「キシリーさんには何かご褒美をあげてほしいのです」
「よかろう。考えておいてやる」
俺は鷹揚に頷く。
しもべが貢献したならば、相応の見返りを与えてやるのが主の務めだからな。
「ゲドー様、パレードを執り行うのです」
「俺の大陸統一を祝ってか?」
「はいです」
「よい案だ、マホ。褒めてつかわす」
「恐縮なのです」
マホは微笑んで頭を下げる。
「では早速、オッヒー内務大臣に準備をお願いしてくるのです」
「オッヒーが内務大臣だと?」
「私は外務で忙しいので、手伝ってもらっているのです。オッヒー様は元王族なので、王制に詳しいのです」
なるほどな。
まあマホが抜擢したのなら間違いはあるまい。
こいつは魔法使いとしてそれなりだが、政治能力も優秀だからな。
何より俺が政治という下らん雑務に煩わされないで済むのが大きい。
「エルルも何か役職についているのか?」
「エルルはシーリィの薬屋さんを手伝っているのです。店舗拡大で忙しいと聞いているのです」
「ほう」
まあ奴の薬屋は、この俺が直々にコンサルティングをしてやった店だからな。
繁盛するのは当然といえよう。
「ではパレードの準備を急がせよ」
「はいです」
◆ ◆ ◆
パレード当日。
「ゲドー様ーっ!」
「ゲドー様、万歳!」
「ゲドー様、万歳!!」
大通りは民衆で溢れ返っていた。
人の波をかき分けるように、豪華な馬車がゆっくりと進んでいく。
その馬車の一際高いところで、俺は仁王立ちになっていた。
周囲を睥睨する。
「ゲドー様、万歳!」
「ゲドー様、万歳!!」
「ゲドー様、万歳!!!」
民衆が俺の名前を連呼している。
よい。
大層よい気分だ。
「愚民どもは、すっかり俺の支配を受け入れたようだな」
俺は隣にいるマホに話しかける。
「民というのは基本的に、自分たちの暮らしに利益があれば、国の頭は誰でもいいのです」
「ふん。ゲドー王国が大陸の支配者になったことで、こいつらも大いに恩恵を受けているからな」
「はいです。ここが本国なので、経済は右肩上がりなのです」
愚かな民どもだ。
だが大陸全土がこの俺を頂点と認めている。
つまり、この上ない最強の証明ということだ。
俺は大いに満足だ。
あらゆる生物の中で、自分が最強であることを証明できたのだからな。
「愚民ども」
俺はよく響く声で、民衆に語りかける。
民衆は一気に静まり返った。
「前にも言った通りだ。大陸全土をこのゲドー様が支配してやる。俺が気に入らん者、俺に逆らう者は容赦せん」
俺は大きく腕を振るう。
「だが俺の支配が続く限り、貴様ら愚民どもにはいい目を見させてやる。それを望むならば俺についてこい」
俺の宣言に、一拍置いて。
「おおおおおおお!」
「うおおおおおおおお!!」
民衆が歓声を上げた。
「ゲドー様!」
「ゲドー様!!」
「ゲドー様!!!」
先ほどよりも一際大きい喝采だ。
これでよい。
俺は命ある限り畏怖され続け、同時に崇め奉られる。
ここはゲドー大陸だ。
そしてこの俺は全人類の支配者だ。
「ふはははははは! はあーっはっはっはっはっは!」
俺は高笑いを上げる。
ゲドー大陸は永遠だ。




