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お披露目パーティー ⑤


「ウルリカ!!」



 ……なんで此処にザガラがいるんだろう? 僕は甚だ疑問である。

 だってさ、招待されていないのにこういう場所に来ちゃうのって中々大問題だよ? 仮にも他国の王太子がさ、聖女のお披露目パーティーに勝手に来るなんて外交問題とか勘挙げてないのかな。



「なんでいるの?」



 熱っぽい目を向けられて、思わずうんざりしてしまう。


 だってさ、僕は同性にそういう目を向けられて喜ぶ性格はしてないもん。可愛いって言われるのは好きだけど、僕にとっては不必要な愛情は要らないかなって思う。

 うん、特にザガラみたいにさ、思い込みが激しいと本当に困って仕方ないからね。



「なんでも何も、ウルリカを迎えに来たんだ!! 俺と一緒に帰ろう、ウルリカ。そして俺と結婚してくれ!!」



 どこからか取り出した花束を手に、ザガラはそんなこという。

 ……こんな大多数の人々がいるパーティーでさ、そんなことしないでほしいよね。僕は男に求婚されて喜ぶ趣味はない。しかもなんていうか、目がさ、僕に断られることはないと信じ切っている感じがなんだかなと思う。



「断るよ? 僕はこの帝国で暮らしていくって決めたもん」



 真っすぐにザガラの目を見て告げる。僕にとってそれ以外の答えはないのだけど、何だかショックを受けた表情をされる。



「ルズノビア王国の王太子よ、何処から忍び込んだ? 我はおぬしを招待しておらぬ。それにウルリカが嫌がっておるだろう」



 サシャはそう言って庇うように僕の前に立つ。


 かっこいいー! 僕はサシャがとてもかっこよくて思わず興奮してしまった。いや、まぁ、女の子に庇われるなんてかっこ悪いのかもしれないけれど、サシャの素敵な所だなって思ったんだよね。




「ヴァリマリラ帝国の女帝! ウルリカを返してくれ。ウルリカはただ素直になれていないだけなんだ」

「いや、そんなことはない」

「俺はずっとウルリカのことが好きだったんだ。ウルリカが同性であったことに驚き、酷い真似をしてしまった。しかし、俺はやっぱりウルリカのことが好きなんだ。ウルリカが男でも構わない! 父上から許可はもらっている。だから何も先輩せずに俺の手の中に戻ってきてくれ!」

「何、気持ち悪いこと言っているの? 僕は一度も君の物になった気はないけど」

「ウルリカ!! 愛してるんだ!」

「うわぁ……」



 話を聞いていない。

 何だろう、自分に酔ってる? 僕のことを好きだっていうのならば僕の話を聞いてほしいなと思う。



 あとさ、パーティー会場の中には色んな人がいるからだろうけれど……、ザガラの言葉を素敵みたいに言っている人たちはさ、僕は要らないから君たちが答えてあげれば? って思う。

 折角この帝国で楽しく暮らしていくためにお披露目パーティー頑張ろうって思っていたのに台無しだよ。そんな気持ちで面白くない。



「ザガラ、僕は君のことなんてこれっぽっちも特別な感情は抱いてないし、僕の恋愛感情は女の子にしか今の所向かないし、嬉しくもないし、このまま帰って?」



 本当にかえってほしいなぁと思う。


 いや、まぁ、今の段階でも十分騒ぎを起こしているから、帝国側の怒りを買ってもおかしくないんだけど? そういうことちゃんと考えてるのかな。それとも何も考えてない?



「どうしてそんなことを!? はっ、もしかして女帝に脅されているのか!?」

「馬鹿言わないで!! サシャがそんなことするわけないでしょ!!」



 もう、本当にいい加減にしてほしい。

 なんて思っていたら、サシャが思わずと言ったように噴き出す。



「ふははっ、かみ合わない会話というのはお主たちのことを言うのであろうな。ルズノビア王国の王太子よ、今すぐ引くのならばまだ手加減してやろう」



 サシャはそう言いながら、射抜くようにザガラを見る。

 ……そこで引けば手加減するなどというあたり、サシャって優しいなって思う。だけどザガラは引かなかった。



「何を言う! 権力に任せてウルリカを縛り付けるな! ウルリカは――」



 僕に対して好意を抱いているからだろうけれど、本当に思い込みが激しすぎる。

 互いに同じ熱量があるなら問題ないかもしれないけれど、そうじゃないなら大惨事だよね、こういうの。



「ウルリカのことをお主が決めつけるでない! ウルリカを大切に思うのならば、その話を聞かずにどうするのだ!」



 魔力を放出して、サシャがそう言えばザガラはへたり込んでしまった。

 そのまま騎士達に引きずられていく。僕の名を呼んでいるけれど、本当にやめてほしいな……ってそう思った。



「あやつ、本当に話しを聞く気がなかったのぉ」

「うん。ちゃんと話は聞いてほしいよね……」



 僕はサシャの言葉に、何とも言えない表情で頷くのであった。




 本当にパーティーが変な雰囲気になってしまったから、元の雰囲気に戻さないと。



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