妖怪 ※※※※※※※と都市伝説対策課 7
まあ~~。
緊急事態だったから、対策課が後手に回ったのは仕方ないんだけど。
それでも犠牲者が一人出たのは割り切れないわね。
「困ったわね……対策課で今動けそうな他の妖怪は……」
雲外鏡の爺さんの手が空いていれば動けそうね。
確かあの爺さんの勤務予定は……。
あ~~。
「雲外鏡の爺さんは、確か出張って言ってたわね……」
「はい」
ならば……。
「筮竹の妖怪の勤務予定はどうなっているか分かる?」
「確か夕方には出勤してる筈です」
ならここは筮竹でも良いか。
「では、対策課から筮竹に動いて貰うようにお願いして」
「ですが御嬢……」
「煮えきらないけど何か?」
「御嬢も知っての通り、筮竹のサイコメトリー能力はかなり低いのですが……」
「あるだけマシよ」
いや本当に。
「確かに」
「後手に回ってしまった以上、後は早期に元凶を発見出来れば、万々歳って所かしらね」
「はあ」
「対策課に早く連絡をお願い」
「分かりました。では私から連絡します」
天狐は携帯を取り出して電源を入れる。
「私はこの場所を中心に、今回の事件に犯人がいるかどうか探ってみる」
「どうやってです?」
「ガシャドクロの封印が意図的に解かれたとしたら、犯人は高濃度の瘴気を纏っているはず」
「怨霊、若しくは魑魅魍魎の類ですかね?」
「あるいは人の怨念から変異した怪物かもね」
稀にあるのだ。
高濃度の瘴気を纏った怨霊が意図的に封印を解いた事例とか。
また、より上位のを怪物が怨霊を無自覚に引き寄せ、自身が近寄っただけで封印が解けれた事例が。
後者であればかなり高位な怪異だが、最悪私達だけで対峙する可能性を考える。
「考えるだけでゾッとしませんね」
「最悪、私達だけでそんな怪物を抑えられるのか?」
「そんな怪物とは戦いたくないから、怨霊や魑魅魍魎の仕業だったら良いんだけどね」
私の発言に二人共、腕を組んで震える。
二人は戦闘系の式神では無い。
私込みのチームワークで何とかなっているが二人共、単独で見ると火力装甲今ひとつで、前衛は張れないんだよね。
正直、火力か装甲に特化した戦闘系式神がもう一人雇いたい。
贅沢を言えば、火力装甲兼備の信頼出来る仲間が欲しい。
まあ~~伝手が無いから無理だし、あっても信頼出来ない式神は危険。
今のところは……。
最善は危険を避けるのが良いのだが……。
「でも……」
私の脳裏に一人の少年の顔が浮かぶ。
今は不登校となった一人の少年。
例の、通り魔系殺人鬼事件に巻き込まれた、被害者の少年の顔が。
「私達だけでは危険かも知れないけど、人命には変えられないもの」
「御嬢……例のクラスメイトの件は貴女の責任では無いのですよ」
「そうね。確かに貴方の言う通りね」
「そうですとも」
「でもね。理屈じゃなく心が割り切れないの……」
「……」
「私があの殺人鬼を一日でも早く発見して、封印出来ていたらと思うの」
夕暮れ時に現れる殺人鬼。
アレさえいなければ、あの人は不登校には……。
「御嬢……惚れてましたからね」
天狐は私をからかうようにニヤリと笑いながら、特大級の爆弾を放り込んできた!
「ふあっ!?」
この天狐のいきなりの爆弾発言に私は対処が出来ない。
「お嬢が惚れていた、例の事件に巻き込まれたクラスメイトの男子が不登校。そりゃ割り切れませんよね」
「ち……違うんだからっ! 唯の憧れなんだから! 私とあの御方との間に何も!」
ワタワタと慌てる私は、要領を得ない回答しか出来ない。
「おや、あの殿方とは誰の事で?」
「あ……」
はめられた。
「私はてっきり仲のいい友人なだけかなと思っておりましたが?」
「ああああああああああっ!」
私は羞恥に耐えられずただ悶えるだけ。
「まあそれはともかく、今からこの周辺を探りますか」
「く……まあ良いわ~~どうせダメ元なんだから瘴気から探ってみるわ」
手を周囲にかざし私は目をつぶる。
「では貴方は連絡をお願いします」
天狐がスマホを取り出す。
流れるように履歴から都市伝説対策課に電話をする。
単独行動は裁量の範囲だが、相手によっては対策課を通した増援がやはり必要かも。
「あ~~都市伝説対策課ですか? こちら……」
その瞬間だった。
「え?」
私が異変に気がついたのは。
悪寒が酷い。
風邪?
いや……違う。
これは……。
いや……。
待て。
待て。
待て待て。
アレは何?
何なの?
「どうしたのです。御嬢?」
「あれ……」
私が無意識に指さした先には人影らしきモノがあった。
そしてそこからは危険な何かが溢れていた。
おそらくは。
小さな点。
視界では見えるギリギリの範囲。
何かが見えた。
非日常の何かが。
そこだけ明らかに雲の色が違う。
暗雲。
そこに暗雲が立ち込めていた。
だがそれは暗雲で済ませられる生易しいものではない。
瘴気。
それもチョトやソットの濃度ではない。
無数の怨念が圧縮されて凝り固まっている感じだ。
妖気が実体化した煙のように一部から立ち昇っている。
公園の中心からだ。
「御嬢」
「どう考えてもアレがガシャドクロの封印を解いた犯人ね」
「あの煙は怨念でしようか?」
「恐らくはね……」
「不味いですね」
「怨念が集結し何かに集っているわ」
本当に不味い。
「魑魅魍魎か」
魑魅魍魎。
魑魅。
山林の異気(瘴気)から生ずるという怪物。
顔は人間、体は獣の姿をしていて、人を迷わせる存在。
魍魎。
魍魎は川や木石の精霊とされる存在。
山・水・木・石などあらゆる自然物の精気から生じ、人を化かすという奴だ。
死者を食べるとも言われ、姿形は幼児に似ていてる。
だが赤黒色の皮膚をし、目は赤く、耳は長く、美しい髪と人に似た声をしている。
これらは妖怪としては比較的に弱い部類だ。
だが一般人には驚異と言ってもいい。
恐らく魑魅魍魎が、活性化して公園の中央に集結している。
邪法か、人ならざる怪異を目指し集結している。
魑魅魍魎は弱い。
妖怪の中では。
相対的にではあるが。
通常なら半端な術者でも対応できるレベル。
だが問題はその数。
魑魅魍魎が湧き出す時必ず因果がある。
複数で現れ、集結するのは強力な術者の力か、存在自体が魑魅魍魎を活性化させる怪物。
正直その何方が相手でも、術者なら私、怪異なら私達の手には余る。
数にして十数匹。
これは不味い。怨霊系を活性化させているとしたら私の除霊とは真逆で力量が読めない。
「天狐。直ぐ都市伝説対策課に連絡を……は?」
思わず目を疑った。
「御嬢。どうしました?」
「あれ」
指を指した先に。
やはり人影が有った。
人。
人間。
いや。
瘴気を操るのではなく、纏う存在を人間と言って良いのか分からない。
それは突然私達に向かって手を振った。
前触れもなく。
その途端。
ただそれだけで魑魅魍魎が全て消滅させらていた。
たった一人の何気ないその所作で……。
「あれは鬼?」
「何の鬼か分かりませんが間違いないでしょう、マズいですよアレは」
鬼。
突然現れた鬼。
悍ましい怨念を身に宿した異形。
鬼自体は魑魅魍魎を使役する立場であるが、個体としての格はピンからキリまであり、真名が分からないと危険度のランク付けがが難しいとされるている。
しかしアレは一目見ただけで明らかにマズいと分かる。
それぐらいの圧倒的な格。
先程のガシャドクロさえ小物に見えるレベルだ。
だけど……。
「二人共、私達はアレを封印する」
「「御嬢!」」
「見たでしょう?アノ鬼は尋常じゃない」
「「……」」
「私は、浅井家当主としてアレを見逃がす訳にはいかない」
我ながらその言葉には二人には絶望と悲壮感しか感じられらないだろう。
「私は少しでも時間を稼ぐから、二人はココから逃げて増員の手配を宜しく」
「何を言ってるんですかっ! 今更水臭いですぜ!」
「そこは私と一緒に死んでと言ってほしいな~~」
「二人共……」
その言葉を最後に三人は鬼のいる方に走り始めた。
悲壮な覚悟を決めて。




