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妖怪 ※※※※※※※と都市伝説対策課   6











 ゴオオオオオオオオオッ!





 ガシャドクロの腕が唸りを上げる。

 それを迎え撃つ三人。


「お嬢を頼むぞ。猫魈」

「はいはい」



 天狐の言葉に猫魈は適当な返事をする。

 

「あのう~~自分の身は自分で守れますから貴女も迎......」


 猫魈は無言で手を引き、お嬢と呼ばれた女学生の手を自身に繰り寄せる。

 その瞬間、砲弾のように飛んできた瓦礫が、お嬢と呼ばれていた女子中学生の足元に衝突し弾けとんだ。

 

「……」


 顔を引きつらせ固まる女子中学生。

 手を引かれなかったら良くても大惨事だった。


「では御嬢。封印を頼みます」

「あ、はい」


 猫魈は御嬢と呼んだ人物を紙一重で救った技量をおくびにも出さず泰然としている。

 どうもこの冷淡とも剛毅とも取れる態度が猫魈の平常運転らしい。

 

「あいよ。時間稼ぎは俺に任せな」


 猫魈の守備能力が、まだ単独でお嬢の身を守るに十分と踏んでから、天狐は印を組んだ。

 天狐の周辺から瞬時に煙幕のような白煙が上がる。

 煙が晴れるとそこには複数の天狐がいた。


「最も俺は幻術はこれしか出来んが」

「頑張れ囮役」

「囮って酷くない」

「酷くない。ソイツを仕留めれる程の術じゃないだろう?」

「しくしく……」



 緊張とは無縁の二人の式神のやり取りを無視し、御嬢は真言を唱える。






「オン キリキリ バザラ ウン ハッタ」


Oṃ khili khili vajra hūṃ phaṭ


オーン 笑声金剛よ。祓いたまえ、浄めたまえ




 ガシャドクロの周囲を天狐が作り上げた幻が走る。

 いきなり複数に増えた天狐に苛立つガシャドクロ。

 足を上げ天狐を踏み潰そうとする。

 

 幻の天狐が横から無防備な軸足を蹴る。

 同時に本物の天狐もガシャドクロの至近距離から右手を横に振りかぶった。


幻打げんだ


 ドコンッ!


 幻の天狐に合わせた打撃。

 暗示による触覚に対する干渉。

 いわば精神的な偽打を事前に分身は敵に与えてるのだ。

 本物の天狐の攻撃位置を悟らせない形で。

 


「いけええええっ!」


 無数の幻の天狐がガシャドクロに打撃を与える。

 ガンガンと。

 無尽蔵にガシャドクロの周囲を包囲した分身達は攻撃を展開する。

 各自、ガシャドクロの巨体に飛びかかり打撃を与える。


 分身によるダメージは無い。



 だがダメージを与えてるという暗示による精神攻撃を敵に与えている。

 そんな分身達の攻撃群がガシャドクロに一斉に浴びせられる。


 ガンガン、ガンガンと途絶える事なく。


 ガシャドクロはその攻撃に抗おうと暴れる。

 その巨体から当然、ガシャドクロによる攻撃は周囲を巻き込み限定的な天災と化す。


 そのうちいくつかの攻撃が、御嬢と猫魈に叩きつけられた。

 だが御譲と猫魈は白煙を上げ消える。

 幻だ。



「残念。それは俺が作った幻だ」



 天狐は皮肉を込めガシャドクロに言う。






「そして本物の私は今ここだ」


 

 猫魈と呼ばれた妖怪は、いつの間にか御嬢の側から離れ、ガシャドクロの真上に滞空していた。


「影針」



 猫魈の言葉と共に虚空から顕現する無数の針。



 ヒュンヒュン。



 その無数の針は、ガシャドクロをハリネズミにするかのように、上空より全弾射出される。

 

 キンキン。


 しかし軽い音を立て、全弾弾かれる影針。



「全然、効かないな~~」

「大丈夫。俺たちが稼いだ時間でお嬢の準備は整った」


 無数の呪符がガシャドクロの周囲に撒かれる。

 戸惑うガシャドクロ。


 当然だ。

 先程の猫魈の針攻撃もそうだったが、いきなり空間から呪符が現れれば、瞬間移動してきたようにしか見えない。

 だがこの猫魈の能力は、瞬間移動とは違う。

 それはこの猫魈と呼ばれる妖怪の、時間ではなく空間に対する異能に由来する。

 まず、自身が接触した物体を空間の光の屈折率を操り、周囲の風景に同化させ、擬態や隠蔽する能力。

 そしてこの能力は、一定の距離なら空間という概念で繋ぐ事で、自身を瞬時にどこでも移動出来る。

 この二つの能力の同時使用。つまり事前に針と呪符を『空間隠蔽』し自身を『空間移動』した後に、上空から針影でガシャドクロを牽制し、注意を引いた後に本命の呪符で包囲したのだ。

 【空間干渉】それが猫魈の持つ能力だ。

 


 


 パラパラ。


 パラパラ。




 沢山の呪符が舞う。


 ガシャドクロの周囲を。






「オン キリキリ バザラ ウン ハッタ」


Oṃ khili khili vajra hūṃ phaṭ


オーン 笑声金剛よ。祓いたまえ、浄めたまえ





 御嬢と呼ばれた女子中学生が真言を唱える。

 その瞬間、閃光が走る。

 

 虚空から。


 虚空より溢れる光の罅。



 光溢れる虚空から、二本の手がその光が切り裂いた隙間を広げ、顕在しようとしている。

 何かが砕ける音がした。

 


 そこに現れたのは、戸愚呂を巻いた巨大な蛇を絡ませた、異形の巨人。



 一面八臂(顔1つで腕8本)。

 

 顔の目は3つ。


 三番目の目は「第三の目」


 それは神通力を持つ者の証。


 憤怒の表情。


 その異形の巨人は、自身の胸の前で「軍荼利印」を結んでいる。


 この蛇を巻いた巨大な異形は、仏法守護の武器として、金剛杵、金剛鈎、三叉戟、輪、羂索などを持つ。



 踏割蓮華ふみわりれんげという二つの蓮華座に足を乗せて立つ。

 焔髻(えんけい)と呼ばれる炎のように逆立った髪の毛に。

 火焔光背(かえんこうはい)を後ろに背負っていた。


 青や緑の体の色を持つ明王。



 【軍荼利明王】だ。


 軍荼利明王は五大明王の一人である。

 大日如来の名代として仏法に逆らう衆生を調伏するのが本来の仕事だ。

 正覚という悟りに至る修行中に、時に必要なエネルギーを分け与えるような役割も果たすと言われる。


 また、穢れを祓い、周囲を清める力を持つ。


 



 その軍荼利明王の8本の手がガシャドクロの体を抑える。

 その光溢れる体で。


 


 ガチガチ。



 ガチガチ。




 何かが砕け粉砕そして握るような音がする。



 延々と。



 更に音がする。



 何かが握られ、潰され続ける音が。



 延々と、握り潰す音が消えるまで……。




 

 最後にピンポン玉程の丸い玉を残し、軍荼利明王の姿は消える。




 いつの間にか。




 その残された丸い玉を手に取ったのは、御嬢と呼ばれていた二人の妖怪の主人である少女だった。



「「御嬢」」

「封印は成功したけど、ガシャドクロが発生した原因は分かる?」


 御譲と呼ばれた女子中学生である主人は二人に尋ねる。


「調査専門の妖怪が今いないので、詳しい事は分からないと連絡がきました」

「サイコメトラー系の?」

「はい」



 『いや、普通は原因とか因果とを調べてから、こちらに仕事を振るのが道理じゃない?』女子中学生の若き呪者は、そう心中で嘆息した。






 

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