都市伝説<※※※※> 4
2001年5月24日。
長崎県大無羅市。
萱瀬ダム付近の山中。
ヴウウウウ~~。
薄暗い林道をバイクのライトを頼りに駆け抜ける。
「今年の初めに買ったホンダのカブはいい感じだ」
「だな~~」
同居者の青年と笑い合う俺。
「「しかもカッコいいし」」
うんうん。
等と頷く俺ら
バイクのカブ。
良いね。
「見た目も良いが燃費も良い」
「最高だな」
「それな」
「スクーターを愛用してたけど、今の時代じゃガソリン代が高く付くからな~~」
「あ~~」
同居者の青年は遠い目をする。
青年の名前を『北川太郎』と言う。
二十代後半。
高校を卒業と同時に就活。
尽く失敗。
そこで就職は諦めバイトで生計を立て事に。
その時にアウトドアに出会う
以後、ネットや本を参考にライト組として楽しんでいた。
俺とはバイト先で意気投合。
そして俺からアウトドアの真髄を叩き込まれガチ組となった。
「おおっと俺の自己紹介が遅れたな」
「お~~い。誰に言ってるの?」
「俺の名は『山田太郎』ピチピチの三十六歳だ」
「ピチピチって……」
北川はジト目でこちらを見ている。
うん。
うるさい。
「因みに童貞ではな。いここ重要!」
「うるさい。自分もだ」
お互い似た者同士である。
おれらは。
「相手はまあ~~」
ああ。
うん。
目を逸らすのは分かる。
わかるから。
前向け。
事故る。
「カブに買い替えたのは燃費だけ見ても良い判断だったと思う」
「うっかりガス欠なのを忘れていて、スクーターを押して行ったんだよね~~」
「ガソリンスタンドまでな!」
あ~~。
「「あははは~~」」
二人して大笑いした。
ええ。
「片道三時間かかったわ」
「それな」
「まさか二人共とは思わんかった」
「あほやな」
「アホ」
「うん」
「……」
泣きて~~。
「こんな時に山の中に家を建てると苦労するな~~」
「まあ~~それを補って余りある利点が有るんだけどな」
「それな」
とはいえだ。
「それでも不便な所もある」
「確かに」
「旧道とか林道とかが多すぎる」
「そうだな普通に迷うな」
はあ~~とため息が出た。
ええ。
旧道は通りやすいようにしないといけんね。
草とか木とか切らんといけん。
「役所に届け出を出して伐採させて貰おう」
「なんで?」
北川~~。
話の流れで分かるやろ。
「このままでは通勤が不便やろ」
「まあね」
「しかもこの山頂にある紅葉狩りの登山者が居るしね」
「この山、公有地じゃなくて俺の私有地なんだが……」
不満が。
不満が言いたい。
うん。
「登山者にとっては昔からの登山コースだし」
「ここ、俺の山」
そこは主張したい。
というか何で私有地を登山する。
意味分からん。
「不便な所で長期間誰も買わない山だったからな~~」
「俺が買った山」
「今更誰かが買ったと言っても、周知するまで時間がかかると思う」
「うがああっ! 山の彼方此方に何故、私有地なので侵入禁止と看板立てるっ!」
ゑ?
何で哀れんだ目で見る?
「そう言って六年目だが現状は変わらん」
「言うなっ!」
六年経ってるのに~~。
登山者が減らん。
注意したらこちらを見て謝るよ。
うん。
その時はね。
次の年、同じ人が登山してたけど。
無視だよ。
無視。
泣きたい。
「それはそうと」
「何だ。北川」
「話しながらカブに乗ろのはやめて歩こうか?」
「何で?」
「普通に危ない」
「今更か」
うん。
本当に今更。
まあ~~歩くが。
なお後日、伐採許可はあっさり降りた。
普通は伐採許可はおりにくいのだが……。
普通に降りた。
何故か。
いや。
本当に。
「何で伐採許可、普通におりたん?」
しかも広範囲で。
不思議だ。
「流石に通勤で遭難する事態がでてるからだろう」
はい。
俺です。
遭難届けを何回か出されました。
北川に。
いやね。
俺も電波が届く時は電話するよ。
会社とか。
会社とか。
遭難して出社出来ませんて。
最初は心配されたけど最近はね~~。
『またか』
等と心が折れる嫌味を言うのは止めて欲しい。
ガチで。
「それで自宅近くの自分の山で遭難したのは何回目?」
「……」
思わず視線をそらした。
北川。ジト目は止めろ。
ガチで。
「慣れてもここの山は迷路みたいだしね~~普通に迷うと思う」
「自分の山で所有者が遭難してる現場を見れば、許可は降りると思うよ?」
「……」
耳が痛いです。
ああ。
見えてきた。
愛しの我が家だ。
築六年。
コツコツと給料を貯め、建てた家だ。
「平屋だが良い家だと思う」
「まあね」
費用は一千万円。
土地代は別だが良い買い物をしたと思う。
まあ~~山だし安かったから良いけど。
というか山が目的だし。
アウトドアが目的だし。
家はアウトドアを楽しめるように工夫して建てましたけどね。
まあ~~電気のライフラインは普通にあるけど。
「水道とガスが無いのが玉に傷だな」
「北川~~其処が良いんだろうが」
「まあ~~確かに」
「ガスの代わりに薪で火を付け、水道の代わりに井戸水で生活するって良いよな」
「稀に川の水だがな」
「美味いよな! 井戸や川の水」
「そのまま飲んで腹壊したろお前!」
視線を逸らすな。
「濾過して煮沸消毒しないと駄目だけど」
「そこが良いんだろうが」
「まあな」
「風呂は五右衛門風呂っ! こればっかりは譲れません!」
「三日に一度だけどね」
「貯水タンクを空にするからな」
「そこは不便だな」
「アウトドアの基本は不便を楽しむ事」
「まあな」
後で薪を割らないと。
炭の作りおきが少ないから。
「炭を買ってくるか~~」
「やめんか!薪が有るだろうが」
「割るのメンドイ」
「不便を楽しむのは何処行ったっ!」




