311『黒い悪魔の蹂躙』
影が集まった球体が魔獣を包んだ次の瞬間、一瞬で姿を消した魔獣はクリスティアンの支配する影の世界に飲み込まれていった。
「以前よりも範囲が広がっていますのね。
精進なさったのね、クリスティアン様。
でも私も負けませんわよ」
次はジェラルディンが異空間収納に魔獣を収納する番だ。
こちらは一切の前触れもなく、突然魔獣が消え失せて、親衛隊の面々は我が目を疑っている。
「うふふ、これでまた素材を売って丸儲けよ」
2年という年月は、ずいぶんとジェラルディンを庶民的にしたようだ。
「これだからスタンピードは堪らないのよ。
下級魔獣でも数があればそれなりの収入になるし、例えゴブリンでもその皮には需要があるもの」
それからは2人が競い合うように魔獣を収納していく。
「もうすぐ愚か者たちの姿が見えてくるわ。
……あとでその骸を見せつけて、絶望の底に突き落としてやるつもりなら、私の異空間収納の方が良いと思うの。
クリスティアン様の方は取り出せないのでしょう?」
「多国籍軍の奴らに良い“贈り物”になりそうですね。
姉様、お願いします」
「総勢3万くらいかしら?
うふふ、これを片付けたら続けてザラネアの蹂躙といきましょう」
多国籍軍からすれば黒い悪魔だろう2人だが、親衛隊の面々にとっては神の代理にも等しい。
「さて、皆のもの!
討ち漏らしは任せるぞ!!」
今はまだ、巻き込まれるのを避けるために前に出ることはない。
だが最後の残党狩りは親衛隊の仕事である。
「ラドも行ってよいのよ?」
「いえ、俺の持ち場は主人様の傍であるここです」
ラドヤードは片膝をついて顔を伏せた。
ジェラルディンは満足そうに笑う。
多国籍軍にとって、それは悪夢以外の何ものでもなかった。
自分たちの露払いをさせるためのスタンピードがあっという間に消滅させられ、次は魔獣と同じ扱いで兵が消されていって、まもなく後方までそのおぞましい力は届くだろう。
彼らは痛みも息苦しさもなく屍と化すのだ。




