310『ジェラルディンとクリスティアンの出陣』
まずは国内から粛清が始まった。
この度、影の国に侵略しようとしている多国籍軍に参加している国の、王都を始め各都市、町、村に滞在していた商人とその一行が捕縛され、即日処刑が行われた。
仕事や商売のために影の国に住んでいた平民はおろか、貴族まで同じように逮捕されていく。
もちろん逆らったものは皆殺しで、後日根切り(一族郎党皆殺し)となった。
特に貴族はわざと逆らわせ、処分していく。
この苛烈さは多国籍軍に参加していた小国を震え上がらせ、この時点で投降してくる国もあったほどだ。
スタンピードを壊滅させるため、クリスティアン王太子とジェラルディンが出陣していく。
彼らに従うのは少数精鋭の親衛隊とジェラルディンの従者としてラドヤード、バートリ、タリアのみだ。
「本当は2人だけでも良かったのに」
「ジェラルディン姉様、それではまるで蜜月旅行のようです」
「まあ、クリスティアン様。
でもそれもよろしいですわね」
馬上でジェラルディンがコロコロと笑う。
上位竜の皮革を使ったローブが光を弾いて美しい。
そしてそれ以上に黒髪が艶めいていた。
「そのようなことよりも、そろそろですわよ。
皆様も気を引き締めて下さいませ」
まだそのおぞましい姿は見えないが、その異様な雰囲気は漂ってくる。
そして間もなく、風下であるこちら側に異臭が漂ってきた。
「今のうちにこちらの高台に上がりましょう。
見晴らしの良いところから殲滅します」
今回同行している親衛隊は、ジェラルディンの広範囲殲滅魔法を見るのは初めてだ。
そして彼らは王太子とジェラルディンの並外れた能力に度肝を抜かれることになる。
「ではまずは私から」
馬に乗ったまま彼方を望むクリスティアンとジェラルディン。
蠢く大蛇のような魔獣の進軍が、こちらに向かってくる様を愉しげに見つめるのはクリスティアンだ。
魔獣の群れの先端に巨大な黒色の球形が現れ、そして……




