309『影の国の決意』
ジェラルディンの頭の片隅に、チラリとある事がよぎった。
それは今は亡きアルバートが起こしたスタンピード事件のことだ。
あのことについて彼は一切の弁解を行わずに逝ってしまったが、もしもその頃からアルバートを唆す存在がいたとしたら?
今はもう遅きに失していたが、彼の周りにそのような存在がいたとすれば、現在もその存在は影の国にいるのかもしれない。
ジェラルディンはクリスティアンと共に急ぎ影の国の王宮に転移した。
王宮の謁見の間では宰相や各大臣に加え、主だった貴族家が集められ御前会議が行われている最中であった。
そこに急ぎジェラルディンたちが駆け込んでくる。
「2人とも参ったか。
一報は聞いておるか?」
居並ぶ面々の前で国王が直々声をかけた。
黒を纏うものが3人揃った光景は目を奪うものがある。
「はい、スタンピードとそれに続く多国籍軍の進撃、現在はどのあたりでしょうか?」
クリスティアンの質問に王は小さく手を振った。
するとそこに巨大な画面が現れ、ある映像を映し始めた。
「これはある魔導具を使って投影している、今現在のスタンピードの様子だ。
現在地はまだ影の国本領ではなく、属領であるアランテシアまで山ひとつの距離、と言ったところであるか」
まるでドローンで撮影したような画像が目の前を流れていて、続々と続く魔獣の行進を撮影している。
その行列を遡っているのだが、魔獣の列はなかなか途切れない。
「道があまり広くないので、魔法の範囲内でありますね。
これなら問題ないと思います。
陛下、どのあたりで待ち伏せをかけますか?」
もちろんジェラルディンは自信満々だ。
「陛下、これに続く多国籍軍も引き続き処理してしまってもよろしいのでしょうか?」
相手に恐怖を与えるのなら、クリスティアンの方がより効果的であろう。
彼独自の影魔法でもって、味方が目前で呑まれていく様を見続ければ、自身が恐怖と絶望に苛まれ、そして死を迎えることだろう。
「一切の容赦はなしだ。
そして今回の騒動を収めた後、隣国ザラネアに侵攻する。
そしてザラネアの貴族も平民も老若男女問わず、全員消滅させよ。
もう二度と我が国に刃向かう国が出ないように、徹底的に殺せ。
赤子ひとりも残してはならぬ」
その国王の勅語に、その場にいたすべてのものが平伏した。




