307『さらば……』
後始末のためにリカルドとオリヴェル、その騎士団を残して、ジェラルディンはラドヤードとタリアを連れてひと足早く王都に戻って来た。
そしてバートリとラドヤードにアルバートの遺体を清めさせ、自身も身なりを改めて伯父である国王の元に転移した。
時は深夜……
この時刻ならまだ休んでいない事を知っているジェラルディンは、いきなり居間に現れた。
「突然、申し訳ございません」
そのジェラルディンの装いを見た王はすぐにピンときたのだろう。
薄いグレーのドレスに小さなベールの付いた同色のヘッドドレスなど、表しているのはひとつしかない。
王は従者にクリスティアンを呼んでくるように言うと、その後は何人も中に入らないよう申し付けた。
そしてしばらく沈黙が続く。
扉がノックされ、クリスティアンの入室の許可を求める声がして、王が直接それに応える。
扉の向こうで多少戸惑った様子を見せたクリスティアンだが、自ら扉を開けて入ってきた。
そしてジェラルディンの姿を見て足が止まる。
彼も状況を察したようだが、今は何も聞かず、そのまま王に挨拶した。
「ではジェラルディン、始めてくれるか」
いつもより低い声で促してきた国王。
彼は今、国王というより父親、そして伯父という家族の顔をしていた。
「はい、先日お伝えしたゴセック子爵領を襲撃した盗賊団の件、本日解決して参りました。
そして……」
「ジェラルディン姉様、みなまで仰らなくてもよいです。
陛下も僕もわかっていますから」
「では……詳細は後ほど宰相殿たちを同席してお話ししましょう。
……伯父上、ここで対面なさいますか?」
誰と、とは言わない。
だが王は自らの寝室での再会を望み、それにジェラルディンは従った。
「急な事であったので、相応しいものが用意出来ず申し訳ございません」
そう頭を下げるジェラルディンだったが、元王子の最期の設えとしては十分なものであった。
その棺はクリスティアンが隣の部屋から運んできたローテーブルの上に置かれ、家族との最後の対面となった。
「私は今回、どうしてもアルバート様をこれ以上貶めたくなくて、かなり強引な手法を使って彼を連れ帰って参りました。
他国での事件絡みですので、こののちのことは宰相殿らにお任せしたいと思います」
暫しの別れの時のあと扉の前に自ら姿を現した国王は、宰相をはじめ外相などを呼び出すように申し渡した。




