290『来客』
オリヴェルの言った通り、降り出した雪はあっという間に積もり、人々は王族、貴族も含めて屋内に閉じこもっていた。
だが、そんな中にも例外はいる。
さすがに馬車は動かせず、ほぼ徒歩になるのだがそんなことに頓着しない猛者もいた。
ジェラルディンの周りにはオリヴェル。
そして意外だったのが薬学部の筆頭教授であり、大陸一の薬師と言われるシルベスターンだ。
「シルベスターン様、このように足元の悪いなか毎日のようにお越しになって、お身体に障りませんか?
私は色々なお話が聞けて嬉しいですが」
何と、この高齢の教授殿は従者を連れて毎回歩いていらっしゃる。
もちろん雪の吹雪いているような時はお休みだが、チラチラと舞っている程度なら耐寒の付与がされたフード付きローブを着込んでやって来るのだ。
そしてジェラルディン邸で昼食を馳走になり、陽が傾いてきた頃に学院にある住処に帰っていく。
そんなある日、天候が急変して突然吹雪いてきたとき、ジェラルディンは教授に泊まって行くように勧めた。
これにはバートリも賛成ですぐにタリアと共に客間を調えはじめてしまった。
「いやぁ、すまんのお」
ジェラルディンとシルベスターンは今、夕食の後サロンで食後のお茶を楽しんでいた。
実はシルベスターン、ジェラルディン邸の居心地の良さに連泊3日目である。
「私どもはよろしいですが教授は大丈夫ですの?
学院側は何も言っていませんの?」
「冬休暇中は基本的に自由じゃからな。
儂はたまたま学院内に住んでおるが、さほど束縛はされんのだよ」
教授たちの中には雪深くない地域に避寒旅行に行くものも少なくないのだ。
「それならよいのですが……」
実はシルベスターンはすっかりバートリと意気投合してしまって、昨夜などは寝酒を共にしたようだ。
そこでジェラルディン抜きで話を纏めてしまっていた。
その話と言うのは……
こうしてシルベスターン教授はジェラルディン邸に滞在することになったのだ。




