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 282『孤児院の悪魔』

 教室内が静まりかえった。

 そこに何かを落とした音が響き渡る。


「あの、ジェラルディン様?

 もう一度仰ってくださる?」


「ええ、でもまずはレポートを読んでいただけませんか?」


 ようやく我に返った生徒たちから騒めく声が上がってきた。


「皆さま、煩いですわね」


 いや、自分が担当していた孤児院を焼くなど、信じられない。

 さすがにオリヴェルも平静ではいられない。


「ジェラルディン様っ?

 どういうことですか?」


「仕方ないわね。

 先生もどうやら読み進めているようだし、教えて差し上げましょう」


「ジェラルディン様!

 このお話、間違いございませんのね?」


「もちろんですわ。

 課題が出されて半年。

 私の手のものが調査しておりました。

 先日は私自ら鑑定して確かめましたのよ?」


 レポートを読んでいた教師は、側で見ていてもわかるほど震えだし、そして脱兎の如く走りだした。


「まあ、普通の反応ですわね」


 今も続く騒めきの中、ジェラルディンは自分の席に着いた。

 しばらくすると教師が主任教師を連れて戻って来て、一から説明するように言う。


「説明も何もその通りですわ。

 孤児院で伝染病が発生しましたの。

 なので焼きましたのよ?」


「だからと言ってすべて焼いてしまうのはやり過ぎではございませんの?」


 オリヴェルの家とは違う派閥の伯爵令嬢が、声を震わせて言った。


「これは異なことを仰いますのね。

 私は“伝染病”と申しましたのよ?

 放っておけば最悪王都に蔓延する、恐ろしい病ですの」


「では、これは真実なのだね?」


 呼ばれてやってきた主任教師が落ち着いた声で尋ねてくる。


「ええ、真実です。

 私は以前他の国で“テュバキュローシス”の感染を封鎖するのに協力した事があったのですが、その時も感染源は焼却するしかありませんでした。

 今回も、遅かったかもしれませんがこれしかなかったと思います」


 主任教師は話の途中、何度も頷いていた。


「今回は延焼を防ぐため、敷地を地下に至るまで覆って焼きましたが、今までにどれだけ広がっているか、はっきり言って想像がつきませんわ」


「ジェラルディン様、それはどういう事だね?」


「おそらく最初の感染はネズミに付いたノミからでしょう。

 私の鑑定では【ペスト】と出ました。

 幸い平民の孤児院です、とりあえず焼却してあの場から広がるのは食い止めましたが……」


「それでも生きたまま焼くなんて!」


 伯爵令嬢が金切り声をあげている。

 そんななか真っ青になった主任教師は、ジェラルディンにすぐに学院長室に同行する様に言った。

 そしてあろうことかオリヴェルにジェラルディンを運ぶように言ったのだ。


「な、何を仰いますの?

 私ひとりでも走れますのよ!」


 聞く耳を持たないオリヴェルに横抱きされて強制連行されるジェラルディン。

 そのまま彼女は抱えられたまま、学院長室に飛び込んだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] ペストだと!? やばすぎるな、、、孤児院のみで終わる話じゃない。
[良い点] 作品としてすごく好きです 情け容赦無いところとか 身内は大事にしてるとことか スカッとして次をもっと読みたくなる作品で好きです [気になる点] テュバキュローシスが 今話だと ツバルクロー…
[気になる点] 「もちろんですわ。  課題が出されて半年。 ※半年? 半日か半月では? 期間からして半日だと思うが
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