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268『冬にむけて』

 季節は晩秋から初冬に移り変わる11月の末。

 このオストネフ皇国の王都でも冬籠りの準備が急ピッチで行われていた。


「今年は冬将軍の訪れが早いようです。

 王都の郊外、山地に近いところではすでに雪が降ったようです」


 王都での生活を始めるため色々と忙しく動き回っているバートリが外出から戻ってきた時、フロントにいた支配人が声を掛けてきた。

 実は彼ら、これからの打ち合わせなど話し合うなか、意外な事に意気投合して、就寝前に寝酒を共にする仲になっていた。


「本格的に冬ですか。

 我々の祖国よりは少し遅いようですね」


「では、影の国は……」


「今頃はもう冬の真っ只中、膝のあたりまでの積雪はあるでしょう」


 昨日侯爵邸に戻って見てきたのだ。

 確かな情報である。


「こちらでの冬籠りはさほど厳しいものでは無さそうですが、どうなのです?」


「まず、商業活動が縮小されます。

 そろそろ屋台売りは終わりになるでしょう。

 もちろん真冬の間でも店舗売りはありますので問題ありません。

 お嬢様が必要とされる本屋などは開店しています」


 どうやらこの王都は雪に閉ざされるというわけではないらしい。


「冬期の間、冒険者はどうしているのですか?」


「稼ぎを求めるものたちは南部の冬でも活動出来る地域へ、秋のうちに移っていますよ。

 金銭的に余裕のあるものはこの王都で冬を越します。

 冬期でも護衛などの依頼はありますからね」


 なるほど、とバートリは頷く。


「そちらの護衛の冒険者殿は依頼などは受けられないのでしょう?」


「……困った事にお嬢様も冒険者活動をなさるのです。

 国を出てから2年、自然とそうなったのでしょうね」


 バートリが遠い目をしている。



 今回、ジェラルディンとバートリが話し合って、冬の間はこの【黄金の林檎】に滞在する事に決めた。

 これから物件を探すのも大変であるし、冬籠りの準備も中途半端になりそうだった。

 何よりも学院に入学した場合、寮生活を送らなければならなくなるようなのだ。

 そのこともあって安易に家を用意することが出来なかった。

 なのでこの冬は【黄金の林檎】で暮らす事になる。

 それには莫大な金子が必要になるのだが、そのことを気にするものは誰もいなかった。


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