264『王都サンドリアン』
冒険者、商業、薬種の3つのギルドに所属する事を表すギルドカードと提示すると、王都に入る事を簡単に許された。
同時に審査を受けていた乗合馬車の同乗者の中に、審査が通らないものがいたため、ジェラルディンたちは徒歩で中央門をくぐる事になった。
御者や馬丁とはここでお別れだ。
ジェラルディンは餞別として侯爵家の料理長特製干し肉をプレゼントした。
護衛を務めてくれた冒険者たちとはまた会う事もあるだろう。
「まずは、やはり宿よね」
中央門にある衛兵の詰所で、この王都一番の宿を聞く。
「【黄金の林檎】という宿がご希望に添えると思うんだが、この高級宿は貴族街にあってここからは少し距離がある。
馬車に乗って行った方がいいと思うんだが、貸し馬車はあそこだ」
親切な衛兵が貸し馬車の場所まで教えてくれた。
その【黄金の林檎】はまるで貴族の邸宅のような佇まいだった。
「何だか落ち着くわね」
ジェラルディンにとってはそうなのだろうが、ラドヤードは違う。
この2年近くジェラルディンに付き従って、富裕層の生活にそれなりに慣れたが、今回のこの高級宿には圧倒されてしまう。
「うふふ、大丈夫よ」
本来なら従者が先立ってフロントに向かうものだが、ジェラルディンが直接話しかけた。
「私、影の国から参りました、ジェラルディン・バラデュールと申します」
フロントのカウンター内に緊張が走った。
「おそらく長期になると思いますが、護衛や従者も同室できるタイプのお部屋をお願いしたいです」
「ご希望のお部屋はインペリアルスイートになります。
護衛、従者用に付属室が2つ付いておりますがこちらでいかがでしょう」
「ここの前に滞在していたところでの後始末のため、従者の到着が遅れているのです」
よくわからないわ、と困った様子を見せるジェラルディンに、ラドヤードが話しかけた。
「主人様、そちらで良いと思われます」
気圧されていたラドヤードがようやく馴染んできて、さりげなくフォローしてきた。
宿側も慣れたもので幾つかの部屋を紹介するため、支配人、副支配人、メイド長、数人のメイドが付き従い階段を上がっていく。
「私たち、今日この王都に着いたばかりなの。
わからない事も多いでしょうから、その時は色々教えて頂きたいわ」
この高級宿【黄金の林檎】で一番高価な部屋に落ち着いたジェラルディンはメイドの淹れた紅茶でひと息ついた。




