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 259『商業都市での最後の日』

 レストランの案内係を突き飛ばして突進してくるストーカー女が、もう少しでレストランに突入するところ、気配なく現れた男たちに遮られた。

 ラドヤードもかくやという体格の男たちはこの高級宿の警備員である。


「お嬢さん、ここから先はあんたには入ることのできない場所だ」


 金切り声をあげようとするストーカー女の横っ面を張り倒し、意識のない女を担いで自分たちが現れた従業員用の通路へ向かった。

 その間、約45秒。

 ジェラルディンたちは気配察知に長けているので遣り取りを注視していたが、その他の客たちは気づいていないものの方が多かった。

 自分たちのせいではないが、ジェラルディンはホッとして騒動の中心人物の退場を見送った。


「まあ、余興のひとつだと思っていればよいのかしら。

 でも、こんなところで暴れるなんて……

 そう言えば以前にもこんなことがあったわね」


 あの時もラドヤードに絡んできたのだった。

 ラドヤードは幾分きまり悪そうにしている。


「どちらにせよ、もうひと騒ぎあるかもしれないわね。

 でも……」


 含みのある言い方をしたジェラルディンはこの話題を打ち切り、ちょうど運ばれてきたデザートに手をつけた。




 翌日、冒険者ギルドを訪れたジェラルディンたちは、あのストーカー女の所属しているパーティーに声をかけられた。


「ちょっといいだろうか?」


 ラドヤードは顔見知りだが、いきなりなのでびっくりする。


「まずは昨日の無礼をお詫び申し上げます。

 うちのパーティーはあの後、あの女を追放しました。

 これから後は一切関わりがありませんのでご了承下さい」


 パーティーのリーダーが頭を下げる。

 一瞬遅れてあとの4人が一斉に頭を下げた。

 そう、彼らは巻き込まれては堪らないと、トラブルの素であるストーカー女を見捨てたのだ。


「賢明だと思います」


 ジェラルディンは鷹揚に頷いた。



 冒険者ギルドで最後の取り引きを行い、薬種ギルドを経て商業ギルドに向かった。

 そこで翌朝一番の、王都行き乗合い馬車を予約し、明日の出発を待つことになった。



「主人様、またずいぶん買い込みましたね」


 書店の棚ひとつが空になる勢いで本を買い、ジェラルディンは上機嫌だ。

 他に今まで魔導具屋も巡ってきていて、珍しい魔導具を幾つか手に入れていた。


「さすが商業都市。規模が違ったわね」


「王都はもっと大きいそうですよ」


「首尾良く入学できたなら、それなりに腰を据える予定よ。楽しみだわ」


 ようやく、目指していた目的地にあと少し。



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― 新着の感想 ―
[一言] ま、まさか・・学園に教師として・・・ さ、さすがにそれはな・・無いよな?(フラグ
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